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更新日:2020年11月9日

阪神・淡路大震災 消防職員手記(西消防署)

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阪神大震災に遭遇して(1995年3月号掲載・藤岡 昭浩)

神戸市立西市民病院1月17日午前5時46分「ドドーン」と体を突き上げる振動と音で目を醒ました。私は、この日たまたま公休だったので自宅で睡眠をとっていた。「地震」だと思い、とっさに立ち上がり、傍らに立つ家具が倒れないよう両手で必死に支えた。真っ暗で何も見えない。手の中でガラスが割れ、落下する様を感じた。必死に立っている私の体は、15センチ位撥ね上げられ、小さな部屋に置いていた電化製品や家具を始め、あるもの全てがかつて経験したことのない音をたてて倒れていく。まるで真っ暗闇の中で、自分一人だけが夢を見ているように感じた。

長く感じた揺れが終わり、大声を出し、家族が大丈夫であるか確認をとった。かなり脅えているが、どうやら無事なようだ。いつも部屋の隅においていた懐中電灯を探そうとするが真っ暗なことで、倒れてきた家具などが散乱していたため、とうとう探し出すことはできなかった。やはり、柱などの動かない場所に固定しておかないといけないと反省した。だが、このまま家の中にいれば、もう一度大きな揺れがくる可能性があり危険なこと、停電のため全く回りの状況がつかめないので、一旦自分の車に避難し、暖をとりながら情報を得ようと思った。明かりがないので、私一人だけが壁際を伝いながら外へ出、100メートル程離れた所に駐車している車を取りに走った。エンジンをかける。いつもと何一つ変わることなく、調子良く始動した。

余震が何度も続く。自宅前の道路の中央に車を止め、家の中で待つ家族を避難させた。ラジオをつけ、情報を聞く。だがその時、神戸市内ではそれほど大きな被害がまだ発生していないような情報が入っていた。どのように考えても、今まで経験したことのない激しい揺れであり、震度5は十分あったと感じたので、早く消防署へ向かわないといけないと思った。自宅へ戻り、西消防署へ電話をする。話中だ。何度もする。やはり、話中だ。

私は、神戸市内で最も被害の少なかった西区に住んでいたため、その付近の状況を見る限り、後に明らかになる大規模な被害を及ぼす災害になることを想像することはできなかった。周りでは普段と何一つ変わることなく、牛乳配達も新聞配達もしている。遠くには、路線バスが走っている姿も見えた。しばらくすると、自宅の電話が鳴った。「非常招集かな」と思い受話器をとる。やはりそうだった。早く消防署へ向かわなければならないと思うが、残される家族のことが気にかかる。妻にこれから後どのように対処したらよいかを告げ、消防署へ向かうことにした。

このような状況においては単車が一番機動性があることが分かっていたので、単車で行くこととした。信号は機能を失っている。早く消防署へ到着する必要があるのだが、管内の被害状況を少しでも把握するためスピードを緩め、普段通勤に使っていない住宅の多い道路を選び、走ることとした。瓦が一部落下し、壁に亀裂が入っている。私の家と同程度だ。ブロック塀が崩れている所もある。だが、誰一人助けを求める者はいない。道行く人に、普段と変わるところはないようだった。

空を見上げる、小雪がちらついている。けれども、何かおかしい。西の空を見ると雲がなく、明るく晴れようとしているが、東の空を見ると黒くなんとなく異様だった。何度も見比べるが、やはりおかしい。「黒いのは煙だろうか」と思い走る。しばらくすると、鼻に臭いを感じた。火災特有の臭いだ。西区より東の地区で大変なことが起こっているのかも知れないと思い、消防署へ向かった。

到着すると消防車両は全て出払っており、やや緊張感が漂ってきた。同僚へ状況を尋ねると、倒壊した建物による生き埋めや火災が多数発生していることを知らされ、一層緊張感が漂ってきた。

早速情報収集に当たるが、本部からの情報が殆ど入ってこない。また、現場出動している隊員からの無線による情報も入れようとするが、各消防隊の無線が交錯し、正確な情報が入らない。仕方なく、各テレビ局からの映像による情報に頼ることにした。暫くすると、神戸市内上空を飛んでいるヘリコプターからの映像が入ってきた。長田区や東灘区の多数の箇所で火災が発生している。しかも、既にかなり広範囲に延焼している模様だった。何とか早く応援に駆けつけたいと思うが、西区内で新たな災害情報が入ってくることが考えられるので、署内で待機するように指示された。

その後、西消防署から長田区内へ応援出動している隊員から20名以上の人が倒壊家屋の下敷きになり、助けを求めているので至急応援に来てほしいと、私宛に電話が入ってきた。応援に駆けつけたいと思う気持ちは、益々高まるがもう暫く待機するように指示された。時間が経つにつれ、神戸市内の至るところで新たな災害情報が次々に入ってくる。消防署内で待機している隊員から早く応援出動したいとの意見が飛び交う。

西区内での新たな大きな災害はないと判断され、応援出動するよう指示された。私の属する第4方面専任救助隊は、かなりの被害が出ている長田消防署へ応援出動することに決定した。通常の災害出動と違い、長時間の救助活動になることを予想した。できるだけ多くの救助資材を積み込み、一旦長田消防署へ向かった。道路は東へ進むにつれ、渋滞が激しくなる。気持ちは焦るのだが、思うように進まない。消防車両から街の様子を見るが、須磨区名谷地区を過ぎても、外見上あまり家屋に被害が出ていない様に感じた。だが、須磨消防署手前に差しかかった時、我々救助隊員はあまりの酷さにど肝を抜かれた。家屋が倒壊し、道路まで押し迫っている。住民が大きな荷物を持ち、避難しようとしている。火災も発生していた。気持ちを落ち着かせ、目的地へ向かう。以前テレビの映像や写真で見たことのある北海道南西沖地震より、規模の大きい災害が現実に迫っていたのだ。

やっとのことで、目的地の長田消防署へ到着することができた。早速指示を貰う。神戸市立西市民病院で多数の人が救助を求めているので、向かうよう命じられた。病院へ到着し、北面路上から建物の外見を見た。5階部分が完全に押し潰されていた。人命救助活動には正確な情報が必要なため、病院関係者と接触し状況を聞き取る。建物の構造や病室の構造、間取り、入院患者の人数など詳しく聞き取った。その結果、第4方面専任救助隊は2班に別れ、それぞれ救助活動することにした。

私の担当する班は、通常なら3メートル位高さがある筈なのに約50センチにまで押しつぶされた廊下から進入し、病室に取り残されている患者の救出に当たることにした。内部に入る隊員は、床を這うように一歩一歩確実に進入した。押しつぶされたコンクリートと、鉄筋が行く手を阻む。状況が悪いため、大型の救助器具を内部に持ち込む事が出来ない。必要最低限の救助器具を使い、何とか取り残されている患者の所へ近付こうとする。奥へ進入するにつれ、益々狭くなる。しかも、救出活動を行っている間にも余震が続き、建物が揺れる。もう一度大きな揺れが発生すれば、危険なことは分かっているが、一歩一歩確実に進入した。救助活動を始めて30分程度で、目指していた病室に近付くことが出来た。隊員が声をかけると落ち着いた声で応答があった。その病室には5名の患者がいたのだが、「全員元気にしている。動くことが出来ない。早く助けてほしい」と。倒壊していない別棟の病室で、待機中の看護婦に5名全員元気にしていることを知らせると、歓声が沸き起こった。だが、その一方救出活動は思うように進まない。コンクリートの塊を砕いては、鉄筋を切断する。この活動を繰り返し繰り返し、やっと取り残されている患者を救出することが出来る50センチ程度の開口部を作ることが出来た。救出活動を始めてから1時間余りで、一人目の患者の救出に成功した。身内の方、知人、病院関係者が拍手、涙の迎え様だった。その後も余震は続いたが、活動は順調に進むようになり、2時間程度で5名全員を無事元気に救出する事に成功した。1名ずつ救出するたびに病院内に歓声が沸き起こり、私達救助隊員も興奮を押さえ切れない有り様だった。また、同時に別の方面から救出活動に当たっている班もかなり難航した様だが、3名全員を無事元気に救出することに成功した。

その後、続々と到着する他都市消防本部の救助隊員に、まだ30名近い患者の取り残されている救出活動に当たることを任せ、第4方面専任救助隊は長田区内の一般住宅における救出活動に当たった。至るところで救助を求められ、1月18日午前6時で一旦救助活動を打ち切り、西消防署へ引き揚げた。その後、数日間このような救出活動を繰り返した。

終わりに、この度の大震災への神戸消防の対応だが、決して良くはなかったと思う。災害の規模が我々の予想を大きく上回り、僅か1,300余名の消防職員で対応できなかったことはわかる。かといって、何時発生するかわからないこの度のような災害のために人員を大幅に増やすことはできないだろう。これは私の考えであるが、先ず、消防の応援体制を見直せばどうか。大規模災害が発生した場合、県下消防職員に全員非常招集をかけ、各消防本部にはその地域を守るための必要最低限の職員を残す。それ以外の職員を災害の発生した地域に分散させ、活動をしてもらうのだ。更に災害の規模が大きい場合は、隣接府県にも同じように対応してもらう。このようにその災害の規模に合わせ、順次拡大し対応してはどうか。「人命救助の原則72時間」。この時間以内には、北海道から沖縄までの消防職員が被災地に参集することは十分できると思う。

また、消防職員だけでなく、消防団員にもっと期待してはどうか。この度の大震災の場合、北区や西区では人命に係わる災害は殆どなかった。災害の無かった地域の消防団員をできるだけ早く被災地に派遣するのだ。

消防職員や消防団員のこと以外にも色々な面で問題点が出てきた。消火栓や、防火水槽、消防車両、無線、道路、街づくりのありかたなど。問題は山積しているが、我々消防職員が「安全都市神戸」を日本中だけでなく、世界中にアピールできるように努力して行かなければならないだろう。

消火奮闘記(1995年4月号掲載・橋本 健)

はじめに

火災発生想像を絶する炎の大きさ、また延焼の速さで街区全体を猛炎に巻きこんだ地震による火災に、西消防団員150名が長田区の現場に出動、8時間におよぶ懸命の消火活動を実施したが、その奮闘ぶりについてご紹介したい。

緊急支団長会議

大地震が発生した後すぐに各支団長は、分団詰所の開設と管轄区域内のパトロールを指示した。各分団長等はパトロール後詰所で警戒に入った。木村団長から三宅署長に電話が入り、支団長会議を開催し、各支団の被害状況の把握と今後の対応について協議したいとの事で、支団長会議を開催、その結果、西管内の被害が少ないことが分かり、団長から西消防団として火災現場へ応援出動したいとの発言があり、各支団長も了解し、この旨を署長から警防部長へ伝え、長田の火災現場へ応援出動することが決定した。

活動概要

  • (1)部署位置等
    各支団長等は出動する班・団員を決定し西消防署に集結、木村団長以下51名が第一陣として出発、長田消防署に到着した。現場指揮本部から西代プールに部署し、戸崎通・西代通の防ぎょを命令され現場に向かったが、主要地方道神戸・明石線西行きは阪神高速道路及び国号2号線の不通による車両等大渋滞であり、前進することが困難な状態であった。サイレン・マイク等を使用しても道を開けてくれる車は少なく、かなりの時間を要してやっと西代プールに部署することができた。
  • (2)消火活動等
    1. 西消防団各支団の小型動力ポンプ7台を使用し、ホース120本を延長、戸崎通3丁目の火災現場北側及び東側に2線延長し、防ぎょにあたったものであるが、道路は多数陥没し、歩行するのも困難な状況下であり、各支団連携のもと中継送水体制が完了するにはかなりの時間を費やした。
    2. 当時の火災の様相は、夜空に阿修羅のごとく炎が高くうずまき、西側及び南側へ我々が今までに経験したことがない速さで延焼している現場であった。民家の隣にあるペンシルビル(5階建)に炎が入ると内部が激しく炎上し、わずかな時間のあいだに窓からその数倍の炎になって、周囲の民家に次々に延焼していく姿であった。その炎の勢いはまさに我々消防隊を嘲笑うがごとき速さで西へ西へと延焼していった。
      あとで分かったことであるが、神戸大学工学部の室崎教授の調査によると、低層の住宅・高層地などに4・5階建のビルがぽつんと建っている場合、周囲の空気を取り入れてカマドのように内部が激しく炎上、丈夫の窓から10メートル近くも飛び火するもので、この現象は長田・兵庫管内で数多く発生し、大火構造の中層ビルが逆に火煙を拡大する「カマド現象」であった。
    3. このような困難な状況下であったが、なんとか北側及び東側への延焼阻止をしなければと各団員達は必死で頑張ったが、たびたび水圧が低下し放水が中断した。これはホースが車に轢かれ破裂し、そのたびに各団員はホースを交換するのに貴重な時間をとられ、口惜しい思いをさせられた。このような状況下にあっても団員の志気は高く、8時間にも及ぶ懸命な消火作業が夜を徹して行われた。そして、さすがの猛火も1月18日未明には終息の方向に至った。
別表1 長田管内応援出動支団別一覧表
支団名
第1出動
第2出動
車両
人員
車両
人員
玉津支団
今津班
支団長以下6名
吉田班
副支団長以下7名
伊川谷支団
脇班
支団長以下7名
前開上班
池上班
副支団長以下17名
 
櫨谷支団
管野班
長谷班
支団長以下7名
寺谷班
池谷班
副支団長以下11名
押部谷支団
木見班
支団長以下7名
細田班
木幡班
副支団長以下15名
平野支団
下福班
西戸田班
支団長以下8名
芝崎班
副支団長以下12名
神出支団
神納班
支団長以下9名
田井班
山西班
広谷班
副支団長以下19名
岩岡支団
秋田班
支団長以下7名
赤坂班
上新地班
副支団長以下18名
合計
9台
51名
13台
99名
総計
22台150名
  • 出動時間帯
    • 第1出動 1月17日16時30分-1月18日1時00分
    • 第2出動 1月17日22時00分-1月18日3時00分

西消防団防御図

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