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未公開写真編 〜秘蔵ネガフイルムから

昭和36年1月17日(火)

3. 須磨浦公園・須磨浦観光リフト

須磨の浦を望む(撮影:2011/8/25)

 この日3番目に訪れた場所が、須磨浦公園です。新しいものが好きな川西 英さんは、この公園内にある須磨浦山上遊園でスケッチを行いました。未収録作品として描かれた昭和27年頃から、この日のスケッチまでの間に、この遊園地には須磨浦ロープウェイ(1957(昭和32)年開通)、回転展望閣(1958(昭和33)年開館)、観光リフト(1959(昭和34)年開通)と、立て続けに新しい観光施設がオープンしました。川西 英さんもここに目をつけたようです。わたしが気に入っている「カーレーター」は、1966(昭和41)年開通のため、スケッチのときには無かったようです。カーレーターも描いてほしかったですね。川西 英さんは、須磨の山に登場した真新しい乗り物に興味津々で乗ったに違いありません。

【須磨観光ハウス 花月】

須磨観光ハウス 花月 (左)花月にて休憩をとる川西 英さん(1961年)(右)2011年

 須磨寺でのスケッチを終え、須磨浦公園を訪れた一行は、まず、観光ハウス花月で休憩をとったようです。ネガから写真をおこした際、この場所はどこであるのか全く分かりませんでした。唯一の手がかりと言えば、須磨寺から公園のロープウェイに乗るまでの間ということだけです。写真をじっと見ながら、あの辺りでモダンな雰囲気のある店内はどこであるのか考え、もしや花月ではと気がつきました。それを調べるべく、さっそく花月を訪ねてみました。この日はご主人が留守のため写真をお預けし、後日に頂けるという電話を待ちました。そして、待つこと3日。かかってきた電話は吉報でした。写真は、正真正銘、花月の店内ですとのお返事をいただきました。店内は改装されているため、写真の面影は残っていないそうです。それでも構わないのでと取材の申し込みをしました。取材当日、花月内へ一歩踏みいれば、店の趣は写真当時のままでした。川西英さんが座ったであろう場所を中心に撮影させて頂きました。対応してくださったのは、ここの三代目に当たるマネージャーさんでした。写真は1階にあったバーラウンジではないか、とくに写真中央、カウンター背後にある食器棚に見覚えがあるともおっしゃっていました。その後、店内は改装されていますので、写真にあるような内装ではなくなっています。それでも、天井の梁はそのまま、格子のデザインを継承したり、内装も含めて昔の雰囲気を大切にされています。

須磨観光ハウス 花月 (左)1961年(右)2011年

【須磨浦ロープウェイ】

須磨浦ロープウェイから、神戸三宮方面を望む(左)1961年(右)2011年

 上の写真はロープウェイからの眺望、須磨海岸の海岸線が続いていますね。この50年で、須磨が市街地化されたことがよく分かります。海岸線から内陸まで、今はびっしりと家々が並んでいます。川西 英さんがスケッチされた頃は、まだまだ須磨は保養地として、そして観光地として存在していたのではないでしょうか。

須磨浦ロープウェイから、眼下を見る(左)1961年(右)2010年

 この写真は、ロープウェイから須磨浦公園駅方向を見たものです。今のほうが公園内の木々は生い茂っているように見えます。また、海に目を向ければ、海づり公園が出来ていますね。この眺めは、50年前とさほど変わりがないように思います。

【回転展望閣】

(左)回転展望閣内で見学中の一行(1961年)(右)回転展望閣(2011年)

 上の写真は、回転展望閣での様子です。大阪湾が一望できるこの展望台で、興味津々、話を聞いている川西 英さんの姿が見えます。展望閣内は改装こそされていますが、レトロな雰囲気の残る数少ない観光施設ではないでしょうか。

(左)展望フロアにてスケッチする川西 英さん(1961年)(右)回転展望閣(2011年)

 現在の写真を見ても、目の前の椅子にちょこんと座っている川西 英さんを想像してしまいます。展望閣の3階部分は、およそ45分かけてひと回りするそうです。いつ行っても雰囲気のある場所です。

回転展望閣 展望台より高取山方面を望む(左)1961年(右)2011年
回転展望閣 展望台より垂水方面を望む(左)1961年(右)2011年

 展望台からの景色で、変ぼう著しいのが垂水方面の眺望ではないでしょうか。50年前、ジェームス山こそ当時から有名ですが、塩屋から垂水にかけての丘陵地帯は、森林と田畑くらいしか見当たりません。高度経済成長時代の都市開発は、ここからの眺望まで一変させました。また、海側に目を向ければ、なんと言っても明石海峡大橋でしょう。穏やかな海峡の景色が、この橋の登場でがらっと変わったように思えます。

【観光リフト せっつ駅〜はりま駅】

(左)リフトではりま駅に向かう川西 英さん(右)はりま駅でスケッチ中の川西 英さん

 ネガの中には、川西 英さんがリフトに乗っている姿もありました。カメラを向けられて、すこし笑っているように見えます。

観光リフトはりま駅から回転展望閣を望む(左)1961年(右)2010年

 ネガには、百景を描く川西 英さんの姿がとらえられています。ベンチに腰掛け、スケッチしている姿、画になりますね。この場所は、吹きさらしで1月のスケッチは寒かったと思います。
 そして、実際に描かれたのが、作品『93.須磨観光リフト』です。

(左)スケッチ中の川西英さん(右)神戸百景93.須磨観光リフト
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