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人権について考える

最終更新日:2025年6月10日

ページID:74136

ここから本文です。

私たち一人ひとりは、自分の人権だけでなく、まわりの人達の人権も正しく理解し、尊重しあうことが大切です。

私たちの身近にある「さまざまな人権課題」について考えてみましょう。

人権って何だろう

人権とは

21世紀は「人権の世紀」といわれています。この言葉には、過去を反省し、人権を尊重して平和で幸せな世紀にしようという全世界の願いが込められています。

しかし、「人権とは何か」と問われると、少し考えてしまう人も多いのではないでしょうか。

人権とは、一般的に「人間が人間らしく幸せに生きていくための権利」といわれています。

また、人権は、人種、国籍、宗教、性別、年齢、社会的地位などにかかわらず、すべての人が生まれながらに持っていて、誰からも侵されたり、奪われたりしない権利です。

この人権という考え方は、17世紀から18世紀ごろのヨーロッパで芽生えましたが、しばらくは各国の国内問題にとどまっていました。

その後、20世紀の2度にわたる世界大戦、特に第二次世界大戦の惨劇の反省から「世界人権宣言」が生まれ、国際社会における各国共通の問題として捉えられるようになりました。

世界人権宣言

第二次世界大戦では、優生思想による人種差別や人命を軽視した大量虐殺など深刻な人権侵害が横行しました。

この過ちを二度と繰り返さないという反省から世界各国が協力して1945年10月に国際連合を設立し、1948年12月10日の総会で世界人権宣言を採択しました。

世界人権宣言は、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」を示したものであり、それ自体が法的拘束力を持つものではありませんが、人間の普遍的な原理として人権の保障を初めて国際的にうたった画期的なものです。

国連では、宣言を記念し、毎年12月10日を「世界人権デー」と定め、世界中の人々に人権思想が普及・定着するよう、世界中で記念行事を催すことが決議されました。

また、日本では12月4日から10日を「人権週間」として、全国各地で様々な取り組みが展開されています。

国際人権条約

国連では、世界人権宣言に法的拘束力を持たせるために、宣言からすぐ条約化に動き出しました。

そして議論を幾度も重ねた結果、1966年の総会において国際人権規約が採択され、1976年に発効しました。

この国際人権規約には、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約(A規約))と、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約(B規約))の二つがあります。

国際人権規約の締約国は、2025年2月時点でA規約が173ヵ国、B規約が174ヵ国となっています。日本は1979年に両規約とも批准しましたが、一部(死刑制度など)を保留しています。

また、国連では、個別の人権分野についても国際条約を採択しています。

例えば、難民条約(1951年)、人種差別撤廃条約(1965年)、女性差別撤廃条約(1979年)、子どもの権利条約(1989年)、障害者権利条約(2006年)などがあり、日本も多くの条約に参加しています。

そのほか、武力紛争時の法規範として国際人道法(ハーグ法、ジュネーブ法)があり、国連では、これら国際人道法と国際人権法を相互補完的に適用し、武力紛争時における人権保護に努めています。

日本国憲法と基本的人権

わが国の最高法規である日本国憲法は、第二次世界大戦後の1946年11月3日に公布され、1947年5月3日から施行されました。

わが国の憲法も第二次世界大戦が招いた悲惨な体験への反省から「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を基本原理として制定しています。

憲法では、国民の基本的人権が人間に由来する普遍の権利であることを明確にしたうえで、基本的人権の内容として、個人の尊重、幸福追求権、差別されない権利(法の下の平等)、思想及び良心の自由、信教の自由、学問の自由、生存権、教育を受ける権利、労働者の権利などを規定しています。

なお、プライバシー権など憲法に列挙されていない権利(新しい人権)についても、判例などで幸福追求権等に包含されるものと解釈されています。

また、憲法は、国民の基本的人権について、国民相互の絶え間ない努力と責任によって保障され、一人一人の基本的人権は公共の福祉に反しない限りにおいて最大限尊重されるものとしています。

持続可能な開発目標(SDGs)

また、人権に関する世界的な動きをみると、2015年9月の国連サミットにおいて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。

そこには人権思想をベースとした「誰一人取り残さない」の理念のもと、より良い世界の実現のための持続可能な開発目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」が掲げられています。

「SDGs」は、2030年のあるべき姿として「貧困をなくそう」「ジェンダー平等を実現しよう」「人や国の不平等をなくそう」「平和と公正をすべてのひとに」などの17のゴールと、その実現に向けた具体的目標である169のターゲットから構成されています。

「SDGs」は発展途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的な目標であり、日本としても積極的に取り組んでいます。

多様化する人権課題

女性

人権課題_女性

女性の人権と男女共同参画

ジェンダー平等_イメージ

わが国では、日本国憲法に男女平等の理念を取り入れ、男女雇用機会均等法、男女共同参画社会基本法、女性活躍推進法などの法律を制定し、性別による差別的な取り扱いを排除し、個人として能力を発揮する機会の均等が確保されるよう様々な取り組みが進められてきました。

しかし、今なお、男性に向いている役割や責任、女性に向いている役割や責任などといった意識が社会に残り、個人の希望や能力ではなく「性別」によって生き方や働き方の選択肢や機会が決められてしまうことがあります。

さらには、セクシュアル・ハラスメントや配偶者等からの暴力(DV)、特に女性に関しては、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いなどの問題が近年でも多く発生しています。

わが国だけでなく、様々な形態の暴力により人権が侵害されたり、性別による無意識な思い込みにより未来が狭められてしまったりしている女性が世界には大勢存在します。

2015年9月に開催された国連サミットではSDGs(持続可能な開発目標)として17の目標を採択し、そのうちのひとつに「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられました。「ジェンダー平等」は、ひとりひとりの人間が、性別にかかわらず、平等に責任や権利、機会を分かちあい、あらゆる物事を一緒に決めることができることを意味しています。

神戸市では、男女共同参画社会、ジェンダー平等の実現に向けて、「神戸市男女共同参画の推進に関する条例」に基づき計画を定め、市政全般への男女共同参画・女性活躍の視点の反映のほか、地域団体、経済団体など多様な主体と連携し、男女共同参画に関する理解の促進、男女の人権の尊重、固定的役割分担意識や性差に関する偏見の解消等につながる広報・啓発など、様々な取り組みを進めています。

セクシュアル・ハラスメント

セクハラ_イメージ

セクシュアル・ハラスメントとは、相手の意に反する「性的な言動」等によって、活動するうえで不利益を被ったり、活動環境が悪化したりすることを言い、相手の性別等は関係ありません。

性的な内容の言動とは、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布すること、性的な冗談やからかい、相手の性別にかかわらず、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなどであり、性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触するなどの行動も当然にセクシュアル・ハラスメントに該当します。

職場においては、「職場の力関係」を背景にして行われることが多く、新入社員や契約更新の不安を抱える非正規雇用がターゲットになるケースが多いとされています。男女雇用機会均等法は、事業主に対し、職場におけるセクシュアル・ハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけています。

また「性的な言動」として、「ホモ」「レズ」「オカマ」などの言葉が侮蔑的、差別的に使われたりすることがあります。女性や男性という性別だけでなく、性的指向、性表現なども含めて性に関わる言葉を使って他人を揶揄することは差別につながること、さらには相手の人だけでなく、周囲にいる人たちも傷つける場合があることを十分に認識する必要があります。

配偶者等からの暴力(Domestic Violence)

DV_イメージ

「Domestic Violence(ドメスティック・バイオレンス)」、略して「DV」には、明確な定義はありませんが、一般的に「配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から振るわれる暴力」という意味で用いられます。

配偶者等による暴力では、多くの場合、女性が被害者となっています。その背景には、今でも男性が主で、女性が従といった観念が残っていることや、男女間の社会的地位や経済力の格差といった構造的問題が大きく関係しているといわれています。

言うまでもありませんが、女性、男性を問わず、暴力は犯罪にもなり得る行為であり、重大な人権への侵害であって、絶対にあってはならないことです。

DV被害に対しては、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(DV防止法)において、配偶者暴力相談支援センターへの相談や緊急時の一時保護、加害者を遠ざけるための裁判所の保護命令などを定めています。

神戸市でもDV防止法に基づき計画を定め、市民へのDVに関する理解促進や予防啓発、被害者等の相談支援などの様々な取り組みを行っています。

こども

人権課題_こども_2

こどもの権利条約とこども基本法

1989年11月20日の国連総会において、こどもの権利条約(児童の権利に関する条約)が採択されました。この条約は、こどもも一人の人間として権利をもつ主体であることを明確にし、すべてのこどもに対する基本的人権及びこども独自の権利(成長の過程で必要な配慮や保護等)の保障を定めています。

締約国は日本を含む196の国と地域(2024年11月現在)、世界で最も広く受け入れられている人権条約となっています。

また、我が国では、少子化が加速している一方で、児童虐待の相談件数や不登校の児童生徒数の増加が続いています。

このような状況を踏まえ、2023年4月、日本国憲法やこどもの権利条約の精神にのっとり、こどもが健やかに成長し、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現をめざして「こども基本法」が施行されました。

同法は、こども施策を社会全体で強力に推進していくための包括的な基本法として、こどもの基本的人権の保障や、こどもの最善の利益を優先して考慮することなど、こども施策の基本理念のほか、こども大綱の策定やこども等の意見の反映などについて定めています。
 

児童虐待

こどもに対する重大な人権侵害として児童虐待があります。

神戸市では、児童虐待のない子育てに優しい街をめざすため「神戸市こどもを虐待から守る条例」を2019年4月1日より施行しました。

この条例により、市、市民、保護者、近親者、関係機関等の責務を明らかにし、虐待の予防及び早期発見並びにこどもの保護など施策の基本的事項を定め、こどもを虐待から守るための施策を総合的に推進することとしています。

なお、児童虐待に関する通報・相談は、区役所・支所または、神戸市こども家庭センター(児童相談所)にて対応しています。休日・夜間の場合は、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いち・はや・く)」(全国共通)で対応しています。

家族以外の方でも、虐待かなと思われたときは、すぐにお知らせください。
 

児童虐待にあたる行為

身体的虐待

殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる 等

性的虐待 こどもへの性的行為、性的行為を見せる、性的な被写体にすること 等
ネグレクト 家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、車に放置する 等
心理的虐待 こどもの心を傷つけることを繰り返し言う
他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする
こどもの前で、配偶者やその他家族などに対し暴力をふるう 等

いじめ

いじめは、その被害を受ける児童生徒の教育を受ける権利を奪い、健全な心身の成長や人格形成を阻害するだけでなく、ときには生命をも奪ってしまう恐れのある重大な人権侵害です。

2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」では、いじめ問題の克服に向けて、国、地方公共団体、学校設置者、学校及び教職員、保護者の責務等を明らかにするとともに、いじめの防止等(いじめの防止、早期発見、重大事案等いじめへの対処)の対策について定めています。

神戸市でも「いじめ防止対策推進法」に基づき、「神戸市いじめ防止等のための基本的な方針」を策定し、神戸市・学校・地域住民・家庭その他の関係者が連携し、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することとしています。
 

高齢者

人権課題_高齢者

超高齢社会

我が国は、本格的な人口減少、超高齢社会に突入しています。

内閣府が出している2024年版高齢社会白書によると、2023年10月現在で65 歳以上人口が総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%となっており、2050年には37.1%になると見込まれています。

神戸市においても同様に、総人口の減少とともに、今後も高齢化率の上昇が続くものと見られています。

また、家族のあり方や生活様式の変化は、高齢者のみの世帯の増加をもたらしました。

とりわけ高齢者の一人暮らしは、人間関係が希薄になる中で近隣や地域とのつながりが保てずに孤立している場合、セルフネグレクトや孤独死を招く恐れがあります。

このような状況の中、神戸市では、地域のボランティアグループや民生委員・児童委員による友愛訪問、宅配や新聞配達等の民間事業者が通常業務内で行う見守り活動など、市、地域、事業者が連携し、一人暮らしの高齢者の孤立を防ぐための取り組みを行っています。

また、超高齢社会の中で、高齢者が社会や地域の中で生きがいや役割を持って生活できる環境づくりを進めるため、仲間をつくって地域貢献活動などを行う老人クラブやシルバーカレッジへの支援、各区ボランティアセンターによるボランティア活動の支援、ハローワークやシルバー人材センター等と連携した就労支援を行っています。
 

高齢者虐待

前述のような高齢者を取り巻く状況の変化とともに、家族などの養護者や施設職員による高齢者虐待の事案が増加し、深刻な社会問題となっています。

このような状況を受けて2006年4月に高齢者の尊厳や権利を守ることを目的に高齢者虐待防止法が施行されました。

この法律では、養介護施設、病院、保健所その他高齢者の福祉に業務上関係のある団体及び養介護施設従事者等、医師、保健師、弁護士その他高齢者の福祉に職務上関係のある者は、高齢者虐待の早期発見に努めることとしています。

神戸市では、区役所や市内76箇所のあんしんすこやかセンターで高齢者に関わる様々なご相談をお受けしているほか、施設等での高齢者虐待に関する専用の通報窓口を設けて、高齢者虐待の早期発見や未然防止に努めています。

また、法務省人権擁護機関である法務局では、高齢者等の人権相談活動を行っているほか、高齢者と身近に接する機会の多い社会福祉事業従事者等に対して、人権相談活動について周知・説明し、人権侵害事案を認知した場合の情報提供を呼び掛けるなど連携を図っています。

なお、高齢者虐待とは、養護者や養介護施設・養介護事業等の従事者などにより、高齢者に対し、次に掲げるような行為をすることです。気になることがありましたら、ぜひ相談窓口にご連絡ください。
 

高齢者への虐待行為の例

身体的虐待

殴る、つねる、蹴る、無理やり食事を口に入れる、ベッド等での拘束、等

ネグレクト 食事や水を充分に与えない、必要な介護・医療サービスを受けさせない、入浴させない、他者による虐待行為を放置している 等
心理的虐待 激しい叱責や暴言、返事や顔をみることをしないなどの無視 等

性的虐待

わいせつな行為をすること又はさせること、懲罰的な下半身の露出 等

経済的虐待 生活に必要な金銭を渡さない、本人の意に反して財産を使用・処分する 等

障害者

人権課題_障害者

障害者権利条約等

障害者権利条約

障害者権利条約は、障害者の固有の尊厳、個人の自律及び自立、差別されないこと、社会への参加等を一般原則として、障害者に保障されるべき人権及び基本的自由について規定し、これら障害者の権利自由を保障するために締約国がとるべき措置について定めています。

2006年12月13日に国連総会において採択され、日本を含む192国と地域(2025年4月現在)が締約国となっています。

障害者差別解消法

我が国では、障害者権利条約を実行するための法制度整備の一環として、2013年6月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が制定され、2016年4月1日から施行されました。

この法律では、障害を理由とする差別の解消を推進するため、行政機関や事業者に対して、障害のある人への不当な差別的取扱いを禁止するとともに、障害のある人の求めに応じて合理的な配慮を行うことを義務として定めています。

不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供

障害者差別解消法が行政機関や事業者に対して禁止する不当な差別的取扱いとは、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービスの提供を拒否することや、サービスの提供にあたって場所や時間帯などを制限すること、障害のない人にはつけない条件をつけることなどになります。

正当な理由があってサービスの提供が難しい場合は、その理由を障害のある人に説明して理解を求めることが大切です。

また、合理的配慮は、障害のある人から配慮を求められたときに、負担が重すぎない範囲で対応することです。

重すぎる負担があるときでも、障害のある人に、なぜ負担が重すぎるのか理由を説明し、別のやり方を提案することも含め、対話を重ね、共に解決策を検討していくこと(建設的対話)が大切です。

神戸市では、不当な差別的取扱いを受けた、合理的配慮を提供してもらえなかったなど、障害を理由とする差別に関する相談を受け付けています。

相談窓口では、相談を聞くだけではなく、必要に応じて、相手方や現場の状況確認を行い、提供可能な代替案がないかなど、建設的な対話が行われるよう促すとともに、相談内容によっては、適切な機関をつなぐなど、橋渡しとしての役割を果たしています。

同和問題

人権課題タイトル画像_同和問題

同和問題とは

今だに残る差別_イメージ

同和問題(部落差別)とは、日本の歴史の中でつくられた身分差別により、日本国民の一部の人々が、長い間、経済的・社会的・文化的に低い状態に置かれることを強いられ、同和地区や被差別部落と呼ばれる地域の出身であることや、そこに住んでいることなどを理由に、日常生活のうえで今もなお差別を受けるなどしている、我が国固有の人権問題です。

部落差別の歴史的な背景は、近年の研究で地域ごとに多様性があることがわかってきていますが、封建社会が確立されていく過程の中で、為政者が支配体制を維持・強化するために、当時の社会にあった偏見を利用して人為的に作った身分制度に由来しているとされています。

為政者が民衆を支配して統治するためには、例えば皮革品の武具や馬具の製造、犯罪人の取締りや刑の執行、まちの清掃などの役目を担う人員が必要です。為政者は、これら役目を担う人々を一般社会の外に低い身分として固定化することで確保し支配体制を固めていったとされています。

この身分制度は江戸時代に法制化され、被差別身分の人々は、住む場所を限定されたり、服装や結婚相手を制限されたりして、部落差別が強化されていきました。

明治維新により新政府が誕生し、1871年には賎民廃止令(解放令)が出されて法制上の身分制度は無くなりました。しかし、その後も実質的な部落差別は続き、差別を受けていた人々は、新政府が進める近代化により元の職を失ったうえ就職もできず、生活は困窮を極めていきました。

このような状況から脱却するため、部落差別を受けていた人々は1922年に全国水平社を設立して部落解放運動を展開した時期もありましたが、第2次世界大戦で活動休止を余儀なくされました。そして、国が本格的な同和対策事業に動き出したのは、戦後の高度経済成長が終盤を迎える時期になりました。

同和対策事業

戦後、1946年に現在の日本国憲法が公布されましたが、同和問題の解決に向けた国の同和対策審議会の答申が出されたのは1965年でした。

その中で、同和問題は、日本国憲法にうたわれている基本的人権にかかわる問題であり、その解決は「国の責務」で、「国民的課題」であるとされました。この答申を受け、政府は1969年に「同和対策事業特別措置法」を制定し、生活環境の改善や社会福祉の増進、産業の振興、教育の充実、人権擁護活動の強化に係る様々な施策を行うことになりました。

法律の制定を受け、神戸市においても、1972年に「神戸市同和対策協議会」を設置、1973年には「神戸市同和対策事業長期計画」を策定し、地域住民とともに住宅や道路の改良、福祉施設の整備などに取り組みました。

その結果、地域の物的な生活環境は大きく改善され、2002年3月末に同和対策事業は終了しました。

生活環境の改善_イメージ

今も残る差別や偏見

しかしながら、依然として部落差別が解消されたとは言えないような状況が続いています。

国から2020年に公表された「部落差別の実態に係る調査」では、「現在でも部落差別があると思うか」の問いに対して、回答者の73.4%が「いまだにある」を選択しています。

さらに兵庫県が2023年度に行った「人権に関する県民意識調査」(5年ごと実施)でも、「同和問題(部落差別)に関して、今、特にどのような人権問題が起きていると思うか」(選択は3つまで)の問いに対する回答は、「結婚の際の周囲の反対」が22.4%、「居住の敬遠」が18.9%となっており、2013年度、2018年度の調査結果と比較すると減少傾向にあるものの依然として上位となっています。

また、近年は、インターネットの匿名性を悪用し、掲示板サイトなどに特定の地域やその住民・出身者への誹謗中傷や誤った情報が書き込まれたり、地域や個人が特定できる情報が書き込まれたりしています。

こうした行為は、書き込まれた相手を傷つけるとともに、これらの書き込みを見た人たちが誤った情報を鵜呑みにして拡散すれば、さらに差別意識を助長・拡大していくことになります。

インターネット上の誤った書き込み_イメージ

部落差別をなくしていくために

21世紀を迎えた現代において、多くの人は、部落差別がいわれのない不合理なものであると理解されていると思いますが、前述したように今なお差別事象は続いています。

国では2016年12月に「部落差別の解消の推進に関する法律」を施行しました。この法律では、全ての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないという認識の下に、これを解消することが重要な課題であることが明記されています。

私たちは、同和問題(部落差別)を正しく理解して「部落差別は許されない」という認識を持ち、自分のこととして考え、行動していくことが大切です。

えせ同和行為を排除するために

「えせ同和行為」とは、例えば、同和問題に対する理解不足などの理由で高額の書籍を売りつけるなど、同和問題を口実にし、企業や個人、団体、官公署などに不当に利益供与等を求める行為を指します。えせ同和行為は、国民に同和問題に関する誤った意識を植えつける大きな原因となっています。

また、えせ同和行為の横行は、国や地方の行政機関の差別解消の推進に対する大きな障害になるという認識に立ち、行政機関等が一体となってえせ同和行為の排除に努めています。

「えせ同和行為」に対しては、き然たる態度で断固拒否するとともに、具体的な要求を受けたときは警察(全国暴力追放運動推進センター)、弁護士会、法務局へ相談しましょう。

NO!えせ同和行為_イメージ

外国人

人権課題_外国人

外国人をめぐる問題 ~ヘイトスピーチ解消法~

我が国の在留外国人は、コロナ禍等の一時期を除いて年々増え続け、2024年末では377万人となり、過去最高を更新しました。

そのような中、言語や文化、習慣などの違いを背景として、外国人であることを理由にアパートへの入居を拒否されたり、サービスの提供を拒否されたりするなど、差別的な取り扱いによる様々な人権問題が発生しています。

また、特定の国籍の外国人に対して排斥や誹謗中傷する趣旨の言動を街頭等デモで公然と行ったり、同趣旨の内容をインターネット上に書き込んだりして、差別や偏見を煽動する行為が問題となり、マスコミ等によってヘイトスピーチとして取り上げられています。

例えば、「○○人は出て行け」、「祖国へ帰れ」や、侮蔑的に「〇〇人は〇〇だ」と昆虫や動物に例えるなどです。

ヘイトスピーチについて、マスコミの報道などにより社会的関心が高まっていたことを受け、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」が2016年に施行されました。

同法では「本邦外出身者」に対する「不当な差別的言動は許されない」と宣言するとともに、更なる人権教育と人権啓発などを通じて、国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進することとしています。

神戸市外国人に対する不当な差別の解消と多文化共生社会の実現に関する条例

神戸市でも、「外国人に対する不当な差別の解消と多文化共生社会の実現に関する条例」が2020年4月から施行されました。

この条例は、外国人に対する不当な差別を解消するとともに、それぞれの文化を尊重し合い共に生きる多文化共生社会を構築するため、その取組について、基本的施策を定め、これを推進することを目的としています。

外国人に対する不当な差別をなくすためには、それが許されるものではないという認識が広く深く社会の間に浸透することが重要であり、本市でもホームページや講演会などによる広報啓発に取り組んでいます。

また、外国人からの人権に関する相談窓口を設け、国や関係機関とも連携しながら対応しています。

また、本市では、日本人も外国人も住みやすい地域共生のまちづくりを進めるため、神戸国際コミュニティセンターや在住外国人支援団体など多様な主体と協働しながら、様々な取り組みを行っています。

インターネット

人権課題_インターネット_2

インターネット上の人権侵害

総務省の「情報通信白書 令和6年版」によると、インターネットのSNSや動画共有サイト等のソーシャルメディアの利用者数は、2023年に全世界で49億人、日本では1億580万人に達し、今後も増加していくことが予測されています。

インターネットのソーシャルメディアは、欲しい情報が比較的簡単に得られたり、多くの人とコミュニケーションの輪を広げられたりするといった利点があります。

その一方で、自分の名前を表示しないで利用できる匿名性を悪用した書き込みが横行し、人権に関わる問題が発生しています。

例えば、本人の承諾なく個人情報を掲載するプライバシー侵害、個人・団体に対する誹謗・中傷、外国人等へのヘイトスピーチ、同和問題をはじめとする偏見や差別の助長などがあげられます。

また、子ども同士のいじめや、出会い系アプリにより知り合った相手から性的被害や暴力を受けるなど犯罪に繋がる事件なども起こっており、深刻な社会問題となっています。

割れるスマホ_イメージ

被害者にも加害者にもならないために

インターネット上の人権侵害を防ぐには

インターネットのソーシャルメディアを利用するときには、お互いの顔は見えなくても、直接、人と接するときと同様にルールやモラルを守ることが必要です。

インターネットでつながった相手も実際に存在する生身の人間であることを忘れず、相手の気持ちや立場を考えてコミュニケーションをとることが大切です。

インターネットでは、一旦、掲示板などに書き込みを行うと、その内容がすぐに広まってしまいます。「デジタルタトゥー」と呼ばれたりしますが、その書き込みをネット上から完全に消すことは容易ではありません。

匿名だからといって軽い気持ちで他人を貶める情報を書き込むことや、自ら書き込まなくとも、そのような情報を安易に拡散することが、思いもよらぬ深刻な事態を招き、その責任を問われることは現実に起こり得ます。

被害者にも加害者にもならないために_イメージ

書き込む前のチェックポイント

チェックボックス_イメージ

  • 他人を誹謗中傷する内容を書き込まない

  • 差別的な発言を書き込まない

  • 安易に不確かな情報を書き込まない

  • 他人のプライバシーに関わる情報を書き込まない

  • 書き込みが不特定多数の人に見られる可能性があるということを意識する

  • 相手への配慮とセキュリティ対策

インターネット上の人権侵害を受けたときは

インターネット上に名誉を毀損したり、プライバシーを侵害したりする情報が掲載された場合、その被害者は、掲示板やSNSの運営者(管理人)に削除を求めることができます。

さらに「プロバイダ責任制限法」などにより、被害者は、プロバイダやサーバの管理・運営者などに対し、人権侵害情報の発信者(掲示板やSNSなどに書き込んだ人)の情報の開示を請求したり、人権侵害情報の削除を依頼したりすることができるようになっています。

また、プロバイダでは、法務省の人権擁護機関から削除要請を受けた場合にも対応しています。

もしも、インターネット上で人権侵害の被害を受けたときは、一人で悩まず、下記を参考に相談してください。

性的マイノリティ

人権課題タイトル画像_性的マイノリティ

性はグラデーション

人間の性のあり方(セクシャリティ)は、大きく分けて、

  1. 身体の性
  2. ジェンダーアイデンティティ(心の性)
  3. 性的指向
  4. 性(別)表現

の4つの要素があるとされており、その組み合わせによって人それぞれのセクシャリティが形作られています。

  • 身体の性/出生時に医師等が生物学的特徴によって割り当てる性(別)のこと。戸籍上の性(別)となる。

  • ジェンダーアイデンティティ【Gender Identity】(心の性)/自分の性(別)をどのように認識しているかを示す概念。「心の性」とも言われ、「身体の性」と必ずしも同じではない。

  • 性的指向【Sexual Orientation】/自分の恋愛感情や性愛の対象がどのような性別に向かっているのかを示す概念。

  • 性(別)表現/服装や言葉遣い、振る舞い方など、周囲の人から見た性別の特徴

性の要素の組み合わせは多様であり、一人ひとり少しずつ異なっていることから「性はグラデーション」と言われることもあります。

「身体の性」と「心の性」が同じ人もいれば、例えば「身体の性」は女性で「心の性」は男性というように違う人もいます。

また、性的指向が異性に向く人もいれば、男性を好きになる男性、女性を好きになる女性など同性に向く人もいます。服装や振る舞いなど「表現する性」も人それぞれ違います。

人間のセクシャリティは自分の意思で決められるものではありません。

個人のセクシャリティは、「正しい」「間違い」ではなく、一人ひとりが違うもの、すなわちその人らしさを表していて、互いに認め合い、尊重すべき大切なことなのです。

性はグラデーション_イメージ

 

SOGIとLGBTQ

「SOGIハラ」という言葉がありますが、この「SOGI」とは、性を構成する要素の性的指向(Sexual Orientation)とジェンダーアイデンティティ(Gender Identity)の頭文字をとったもので、すべての人が持ち得る性の構成要素を包括して表す概念です。

そして「SOGIハラ」は、性的指向やジェンダーアイデンティティに関する言動で人を傷つける行為のことです。

一方、マスメディアなどでよく耳にする「LGBTQ」は、(L)レズビアン、(G)ゲイ、(B)バイセクシュアル、(T)トランスジェンダー、(Q)クエスチョニングの英語標記の頭文字をとったもので、性的マイノリティの総称の一つとして使われています。
 

  • レズビアン【Lesbian】/性的指向が女性に向く女性。いわゆる女性同性愛者。
  • ゲイ【Gay】/性的指向が男性に向く男性。いわゆる男性同性愛者。
  • バイセクシュアル【Bisexual】/性的指向が男性にも女性にも向く人。いわゆる両性愛者。
  • トランスジェンダー【Transgender】/身体の性とジェンダーアイデンティティが一致せず違和感を持つ人。
  • クエスチョニング【Questioning】/ジェンダーアイデンティティや性的指向が定まっていない人、定めていない人など。

性的マイノリティの置かれている状況

現在は、性の多様性についての理解が少しずつ進んできていますが、今でも多くの人は、自分の周りには性的マイノリティは「いない」「会ったことがない」と思っているのではないでしょうか。

民間の調査等によると、日本における性的マイノリティの人数は、平均すると全人口の約5%から8%程度という結果が出ており、少なくとも20人に1人という割合になります。これは、血液型がAB型の人や左利きの人と近い割合になり、実は身近な存在なのです。

にもかかわらず、性的マイノリティが周りの人から「いない」と思われているのは、残念ながら我が国では性の多様性への理解が十分ではなく、当事者が偏見や差別を恐れて周囲に伝えることができずにいるのではないでしょうか。

カミングアウトとアウティング

自身のセクシャリティを他人に打ち明けるときに「カミングアウト」という言葉がよく用いられます。カミングアウトは、当事者本人が決めることであり、周囲の人がカミングアウトを強要してはいけません。

また、カミングアウトを受けたときは、当事者本人は勇気を出して打ち明けていますから、その気持ちに寄り添いながら話を聴くことが大切です。そして、本人の了解なしに他の人に話すことは絶対にしてはいけません。

カミングアウトを受けた人が、本人の了解なく他の人に暴露することを「アウティング」といいます。

本人によかれと思って他の人に話してしまう場合もありますが、アウティングは、打ち明けた本人をひどく傷つけ、ときには命さえ奪ってしまうような、重大な人権侵害となります。

アウティング_イメージ

性の多様性への理解増進の取り組み

国では、性の多様性への国民全体の理解を進めていくために、2023年6月に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」を施行しました。

神戸市では、これまでもホームページへの記事掲載、講演会等の開催、イベント時の小冊子の配布などによる啓発、学校教育では子どもたちの年齢に応じた学習機会の提供に取り組んでおり、引き続き国等とも連携しながら進めていきます。

また、神戸市では、性的マイノリティやその家族等への支援として、専門の相談員による電話相談を行っています。「自分の性別に違和感がある」「同性を好きになった」「友達から『トランスジェンダー』と打ち明けられたがどのように接したらいいか分からない」など、秘密厳守でお名前を名乗らなくても相談に応じていますので、一人で悩まずにご相談ください。

アライ(Ally)

アライ_イメージ

「アライ」は、英語の「同盟、支援」を意味する「ally」を語源とし、性的マイノリティの理解者、支援者の呼称として使われています。

例えば、性的マイノリティ当事者が普段生活している学校や職場などで当事者のことを理解して支えてくれる友人や仲間、あるいは性的マイノリティへの理解促進や当事者等のサポートのために積極的に行動する人たち(団体)など、当事者を支援する人は様々に存在し、その総称がアライということです。

また、近年では、企業がアライを表明し、性的マイノリティへの支援活動を展開する事例も増えてきています。

最近は性の多様性への理解が進んできていますが、性的マイノリティー当事者は、今もまだ偏見や差別を恐れて声を上げづらい状況にあります。アライはこのような当事者の声を代弁し、または寄り添うことで、誰もが生きやすい社会を作ることに貢献しています。

アライとは「こうあるべきだ」というものはなく、性的マイノリティー当事者に寄り添って、その声に耳を傾けることが理解への第一歩ではないでしょうか。

災害など

人権課題_災害など

阪神淡路大震災から

1995年1月17日未明(5時46分)に淡路島北部を震源として発生した「兵庫県南部地震」は、戦後初めての大都市直下型地震であり、地震の規模を示すマグニチュードは7.3で、最大震度7を記録しました。

この地震の大きな破壊力は阪神淡路大震災を引き起こし、神戸市でも多数の死傷者と建物やインフラ等に甚大な被害をもたらしました。

そして、この震災では、多くの被災者が長期間にわたって避難所や仮設住宅での生活を余儀なくされ、避難所では女性特有の困難や家族・個人のプライバシー確保の問題、また、仮設住宅では単身高齢者の孤独死など、さまざまな課題が浮き彫りになりました。

一方で、この震災を通じて、私たちは、命や生きることの大切さを痛感しました。

また、延べ二百万人を超えるボランティアが被災地で様々な活動を展開したことは、行政の活動を補完して復旧・復興活動に対する強力な支援となるとともに、「人と人のつながり」や「他者への思いやり」を再認識させられました。

このときのボランティア活動が、その後の東日本大震災をはじめとしたさまざまな災害にも引き継がれており、このことから1995年は「ボランティア元年」と呼ばれています。

自然災害は、今後も確実に発生しますが、それを予測することはできません。

私たちは、震災の経験と教訓を継承していくことで一人ひとりの防災意識を高め、災害による被害をできるだけ軽減できるよう備えることが大切です。

その他さまざまな人権課題

人権課題_さまざまな人権課題

アイヌの人々

日本列島北部周辺に先住する民族のアイヌの人々は、固有の言語とともに独自の生活習慣や豊かな文化を持っていますが、明治以降のいわゆる和人(アイヌ以外の日本人)との同化政策によりアイヌ独自の文化や生活が禁止され、生活の基盤を失って貧困に苦しむとともに、日常生活において様々な偏見や差別を受けてきました。

その後、この問題を解決するため、1997年の「アイヌ文化振興法」をはじめ、国による様々な取り組みが進められました。

2019年に施行された「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」では、アイヌの人々への差別の禁止に関する基本理念や、アイヌ政策を総合的かつ継続的に実施するための支援措置などが定められています。

私たち一人ひとりが、アイヌの歴史や伝統、文化などについて正しく理解することが、差別や偏見をなくすことにつながります。

感染症

感染症に対する知識や理解の不足から、社会生活の様々な場面で、差別やプライバシー侵害などの人権問題が発生しています。

例えば、新型コロナウイルス感染症では、2020年3月に世界保健機構(WHO)がパンデミックを発表し、その後、我が国でも緊急事態宣言が発出される中、強い感染力と重症化リスクが社会不安を増大させ、感染者、医療従事者、エッセンシャルワーカーだけでなく、その家族に対しても不当な差別や誹謗中傷、ハラスメントなどが行われました。

例えば、感染者の行動履歴など個人情報がSNS上に書き込まれたことや、医療従事者が飲食店などの利用を拒否されたり、その子どもが保育園で預かりを拒否されたりするなど、いわれなき偏見や差別の事象が見られました。

また、HIVの感染によって発症するAIDS(エイズ)は、医学の進歩により様々な治療薬が開発され不治の病ではなくなり、適切な治療を継続することで普通に日常生活を送ることができるようになりました。

しかし感染症に対する知識や理解の不足から、エイズは怖い病気というような偏見が残っています。

これら以外にも感染症全般に関して、不正確な情報から生じる過度の危機意識により、人権上の問題は常に起こりえます。

一人一人が感染症に対する正しい知識を持ち、この問題についての関心と理解を深めていくことが必要です。

ハンセン病

ハンセン病は、ノルウェーのハンセン医師が1873年に発見した「らい菌」による感染症であり、遺伝する病気ではありません。

発病すると、手足などの末梢神経が麻ひし、発汗や感覚が無くなったり、体の一部が変形したりして障害が残ることがありました。

しかし、感染力は弱く発病はまれであり、万一発病しても、現代では薬で完治し、早期に治療すれば障害も残りません。

ハンセン病は、かつては「らい(病)」と呼ばれ、患者は、人目につかない場所に隠れてひっそりと暮らしたりしていました。

明治になって、国の法律や各県の「無らい県運動」で療養所への強制隔離政策が進められたことで感染への恐れが増大し、人々の患者に対する偏見や差別を助長したといわれています。

さらに1953年の「らい予防法」でも隔離政策は継続され、患者はもとより家族も結婚や就職を拒まれるなど厳しい差別を受けました。

その後、ようやく1996年の「らい予防法」の廃止により隔離政策は終了し、「らい」の悪いイメージを払拭するために病名も「ハンセン病」と改められました。

療養所入所者らによる国家賠償請求訴訟を経て、患者や家族への差別的扱いに対する補償金の支払いに関する法律が制定され、患者等の名誉回復のための施策が進められました。

しかし、2023年12月の厚生労働省による一般の方への意識調査では、今も偏見・差別が残っていることを示す結果になっています。

私たちが過去と同じあやまちを繰り返さないために、ハンセン病に限らず、病気や障害の症状については正しい情報の選択と理解を心がけていくことが大切です。

犯罪被害者

犯罪の被害に遭遇するとはどういう事でしょう。

普通に生活している人たちが、ある日突然「犯罪被害者」になって自身や家族の日常が断ち切られてしまうことが現実に起こっています。

犯罪被害者になると、身体や財産などに対する直接の被害だけでなく、その後の二次的な被害によって苦しめられることが少なくありません。

二次的な被害としては、犯罪にあったショックによる心身の不調や、失職・転職・転居・医療負担等に伴う経済的困窮、さらに捜査や裁判に伴う時間的負担と精神的負担、報道等によるプライバシー侵害や真実でない情報の流布とそれに係わる誹謗中傷などがあります。

もしも身近な人がこのような犯罪の被害を受けた場合、私たちはどのように向き合えばよいのでしょうか。

犯罪被害者には、例えば、「がんばって」「忘れた方がいいよ」などの言葉によって、励まされる人もいる一方で、逆に傷ついてしまう人もいます。

言葉で励ますよりも、普段どおりに接することが、犯罪被害者が少しずつ平穏な日常生活を取り戻す手助けになることもあります。

センシティブな問題ではありますが、犯罪被害者が置かれている状況を自分に置き換えて考えてみるなど、何よりも被害者の気持ちに寄り添って接していくことを大切にしましょう。

なお、神戸市では、「神戸市犯罪被害者等支援条例」に基づき、犯罪被害者等の支援に関する相談を総合的に行う窓口を設置し、犯罪被害者・ご家族の方が再び平穏な「安全で安心した生活」を営むことができるよう、国や県、関係機関と連携し、犯罪被害者への支援に取り組んでいます。

刑期満了者等への支援

刑を終えて出所等した人は、偏見や差別のために就職や住居の確保が困難になったり、社会の中で孤立したりするなど、極めて厳しい状況に置かれることが少なくありません。

この人たちが、社会に復帰し、地域住民として生活していくためには、本人の強い更生意欲と併せて、家族はもとより、職場、地域社会の理解と協力が必要です。

国では、「再犯の防止等の推進に関する法律」に基づき計画を策定し、刑を終えて出所等した人が、責任ある社会の構成員として受け入れられるよう、広報・啓発活動を始めとする再犯防止のための様々な施策を推進しています。

また、神戸市でも誰もが安全で安心して暮らすことのできるまちの実現をめざして再犯防止の取り組みを進めています。

その一つとして、2023年6月から再犯防止コーディネーターを配置し、刑務所等の刑事収容施設、保護観察所や保護司、検察庁、弁護士会等と連携しながら、出所等した人が社会復帰のために適切な支援を受けられるように、住居確保や福祉サービスの調整、区役所等地域の相談窓口へのつなぎといったコーディネートを行っています。

ホームレス

勤務先の倒産や就職難、病気や怪我、障害などにより働くことができず経済的に困窮したため、あるいは債権者の取り立てやDV・ストーカーなどの被害から逃れるためなど、さまざまな理由から路上や公園等での生活を余儀なくされた人たち、いわゆるホームレスとなった人たちがいます。

ホームレスとなった人たちは、十分な食事ができず、不衛生な生活環境もあって健康面での問題を抱えています。

また、地域住民から怖がられたり、嫌悪されたりするほか、心無い人から嫌がらせや暴行を加えられる事案が発生するなど、地域社会の中で問題となることも少なくありません。

神戸市では、国の関係法令等を踏まえて「神戸市ホームレス自立支援実施方針」を策定し、住居確保や医療的な支援、就労への支援などホームレスの人々が地域において健康で文化的な生活を送るための自立支援を行うことにより、新たにホームレスとなることを防止し、地域社会におけるホームレスに関する問題の解決をめざすことしています。

また、この方針の実施にあたっては、ホームレスの人々への人権に配慮し、地域社会の理解と協力を得つつ、国、兵庫県、本市の関係機関及び民間団体等と連携を図りながら総合的かつ計画的に施策を推進していきます。

人身取引

「人身取引」とは、暴力、脅迫、誘拐、詐欺などの手段によって、支配下に置かれたり、引き渡されたりして、売春や性的サービス、労働などを強要される犯罪であり、重大な人権侵害です。

実際に日本でも起こっており、被害者の多くは弱い立場にある女性や子どもたちで、特に18歳未満の者を搾取目的で支配化に置いた場合は、暴力や脅迫等の手段を用いなくても犯罪になります。

また、近年は、SNSで高額報酬を謳うなどして勧誘したうえで、本人又は家族の個人情報をもとに脅迫して犯罪に加担させる事件が頻発しています。

特に若者を中心に被害を受けている状況で、中には外国の犯罪組織に引き渡されるケースも発生しています。

これらの犯罪について皆さん一人ひとりが関心を持っていただくとともに、もし、身近で被害者らしい人を見聞きしたり、被害者が助けを求めてきたりしたら、最寄りの警察署等又は警察庁等の相談窓口(下記リンク参照)に連絡するよう助言してください。

 

動画で紹介!さまざまな人権課題

 

さまざまな人権課題について、中学生向け人権啓発冊子「あすへの飛翔」から、動画付きで紹介します。

じんけんクエスト

じんけんクエスト_2025

「人権」とは人が幸せに生きるための権利で、生まれながらに全ての人が持っているものです。

みんなの人権を守るには、どんなことが人権の侵害になるのかを知ることが大切です。

人権を脅かすハラスメントモンスター「ハラモン」をたおす「じんけんクエスト」に挑戦して、人権について理解を深めよう!

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