更新日:2020年11月4日

2階8畳 東の部屋

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2階8畳 東の部屋

『細雪』より引用

「こいさん、頼むわ。――」
鏡の中で、廊下からうしろにはいって来た妙子を見ると、自分で襟を塗りかけていた刷毛を渡して、そちらは見ずに、眼の前に映っている長襦袢姿の、抜き衣紋の顔を他人の顔のように見据えながら、
「雪子ちゃん下で何してる」と幸子は聞いた。
「悦ちゃんのピアノ見たげてるらしい」
(中略)
「なあ、こいさん、雪子ちゃんの話、また一つあるねんで」
「そう、――」

解説

この有名な冒頭では、悠長な会話がやがて雪子の見合い相手の批評につながり、その会話に挿入されたエピソードによって、四姉妹と家族の関係が紐解かれて行く。物語時間は鏡の前の一瞬に過ぎないながら、読者は過去の様々な事件が今につながっていることを知らされるのだ。

やがて五章になると雪子も加わって音楽会に着て行く着物や帯に話題が移り、おかしなことを見つけた姉妹がひっくりかえって笑うシーンが描かれる。

「細雪」が発表された「中央公論」での1回目は昭和18年1月号で一章から八章まで、2回目は3月号に九章から十三章までが発表されたが、陸軍報道部の干渉から3回目6月号は発表されなかった。その時の編集部からのコメントは「決戦段階たる現下の諸要請よりみて、或いは好ましからざる影響あるやを省み」というものだった。

幸子・貞之助夫婦の寝室であり幸子の居室であるこの8畳は、東に一間、南に一間半の窓があり、欄干がある。さんさんと陽光がさしこみ、家中で一番明るく広い。

山村流の舞のおさらい会の時、この部屋は楽屋に使われ、妙子が装いをこらす。
いわば、生活感のある1階とは対照的に、2階は生活から遊離した場所でもある。

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