有機フッ素化合物(PFAS・PFOA・PFOS)とは
性状
- 炭素とフッ素の結合をもつ有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称で、10,000種以上存在するとされています。
- 撥水・撥油性、熱・化学的安定性等の物性を示すものがあり、中でも特に、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は金属メッキや泡消火薬剤、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は界面活性剤などに使用されてきました。
- しかし、体内に蓄積しやすく、自然界で分解しないことが知られています。
- 現在では製造・輸入が禁止されているため、PFOS・PFOAを含む製品が新たに流通することは想定されません。
人の健康への影響
- 動物実験では、PFOS・PFOAは、肝臓の機能や仔動物の体重減少等に影響を及ぼすことが指摘されています。
- 人においてはコレステロール値の上昇、発がん性、免疫系等の関連が報告されています。
- しかしながら、どの程度の量が身体に入ると影響が出るのか、いまだ確定的な知見はなく、現在も国際的に検討が進められています。
- 国内ではPFOS、PFOAの摂取が主たる要因と見られる健康被害が発生したという事例は確認されていません。
- 食品の安全性を科学的に評価する国の機関である食品安全委員会では、「現時点での情報は不足しているものの、通常の一般的な国民の食生活(飲水を含む)から食品を通じて摂取される程度のPFOS及びPFOAによっては、著しい健康影響を生じる状況にないと考えられる。(2024年6月)」と評価しています。
暫定目標値(暫定指針値)の考え方
- 2024年6月、「有機フッ素化合物(PFAS)の食品健康影響評価」において、耐容一日摂取量(TDI:ヒトが一生涯にわたって食品から取り続けても健康に影響が出ないとされる体重1kgあたりの1日分の摂取量)として、PFOS20ng/kg/日、PFOA20ng/kg/日とすることが妥当であると報告されました。
- この値を用いて、体重50kgの人が水を一生涯にわたって毎日2L飲用する条件において、飲料水からのPFOS等の摂取量がTDIの10%以下となるよう、安全側に立って計算すると、PFOS・PFOAそれぞれで暫定目標値の50ng/Lとなります。これをさらに安全側の観点から、PFOS・PFOAの合計値として50ng/Lを水道水の暫定目標値(河川等の場合、暫定指針値)としています。

- 現在、水道水については、この暫定目標値を「水質基準値」とする方向で検討が進められています。
神戸市の取り組み
水道水の水質管理
- 神戸市では、2020年度以降、既に水質基準項目に準じて、浄水場系統ごとにPFOS及びPFOAの水質検査を年4回実施しています。
- PFOS及びPFOAの合算で50ng/Lを大きく下回っており、安心して水道水をご利用いただけます。
- 検査結果はホームページにて公表しています。
神戸市水道局ホームページ(水道水の安全性について)
阪神水道企業団ホームページ(水質情報)
明石川における水質調査
- 現在、河川については環境基準が設定されておらず、暫定的な目標値(暫定指針値:PFOS及びPFOAの合計値として50ng/L以下)が設定されています。
- 明石川では、暫定指針値を超えるPFOS・PFOAが確認されて以降、国の「PFOS及びPFOAに関する対応の手引き(2020年6月)」に従い、河川の水質調査を行っています。
- 水質調査の結果、暫定指針値を超過した場合には、その上流部や明石川に流れ込んでいる支流を調査するなど、詳細な状況把握を行っています。
- 2020年度から2024年度(2025年2月)までに計37地点、のべ205回水質調査を行いました。
調査結果
最新の測定結果
2023年度以降の測定結果
追加調査
- 特に高い測定結果であった地点では、より詳細に調査地点を設定(可動堰や川幅を考慮した地点設定)し、水質調査を行っています。
- あわせて、河川の状況(河床の状況、不法投棄物の有無、湧水等の発生状況)、周囲の状況を現地踏査により確認しています。
その他の河川・湖沼・海域
公共用水域(河川・湖沼・海域)常時監視結果
地下水の水質調査
- 地下水については、市域の全体的な状況を把握するため、2021年度より、市内各地で水質調査を行っています。(年1回)
- 暫定目標値を超過した地点では、次年度も継続して水質調査を行っています。
- なお、神戸市では、地下水(井戸水)は水質の安全性が確認されていないことが多いため、飲用には水道水を利用していただくようお願いしています。
2024年度測定結果(PDF:174KB)
2023年度測定結果(PDF:157KB)
2022年度測定結果(PDF:158KB)
2021年度測定結果(PDF:153KB)
本市独自の取り組み
周辺事業者への協力要請
- 工場や事業場から排出される排水については、法令等で定める排水基準がなく、立入調査、水質検査の実施を命ずるなどの法的権限がありませんが、明石川流域の事業場に対して、自主的な検査・報告と対策を要請しています。
水質調査実施事業場 |
取り組み内容 |
産業廃棄物最終処分場 |
- 排水中のPFOS・PFOA濃度の測定
- 削減に向けた対策要請
|
水質汚濁防止法特定事業場 |
- 排水中のPFOS・PFOA濃度の測定
- 漏水の有無等の確認、PFOS・PFOAが含まれる薬剤等の保有・使用状況の確認依頼
|
下水処理場・農業集落排水施設 |
- 排水中のPFOS・PFOA濃度の測定
|
その他の工場・事業場 |
- 事業活動に関するアンケート調査
- 製造業を営む事業場の現地確認
|
一般廃棄物最終処分場における取り組み
明石川水系(伊川)に位置する布施畑環境センター(最終処分場)では、従来より有機物や濁りの除去を目的として活性炭による排水処理を行っています。この活性炭処理は、PFOS・PFOAの処理にも有効であることから、活性炭を適正に管理することにより、処理水中のPFOS・PFOAの低減を図っています。
国への要望
- 国内各地に共通する課題については、国に対して課題解決に向けて、必要な要望を行っています。
■令和7年度国家予算編成に対する重点要望(一部抜粋)
有機フッ素化合物(PFOS・PFOA等)に対する総合的取組みの推進
- 有機フッ素化合物(PFOS、PFOA、PFHxS)について、ヒトに対する毒性評価や農作物による吸収等についての調査研究を早急に進め、その発生メカニズムを解明し、環境基準、排水基準、水道水質基準など、全国一律の基準値を設定すること
- PFOS、PFOA、PFHxS以外の有機フッ素化合物についても、ヒトに対する毒性評価等を進め、規制対象にすべき物質を早急に選定するとともに、適切な分析方法を提示すること
- 公共用水域等のモニタリングに対する財政支援を行うとともに、除去技術を確立すること
|
明石市との連携
- 明石川は、神戸市と明石市の両市をまたいで流れているため、これまでから定期的に連絡会議(年2回)を開催し、河川の水質の状況やPFOS・PFOAの水質測定結果について、情報共有・意見交換を行っています。
神戸市・明石市による共同要望
- 2025年2月10日に両市共同で、国に対して規制基準の決定をはじめとした要望を行いました。
■共同要望の内容
汚染源の特定、排出抑制に向けた国内外の化学的知見の集積、人に対する毒性評価に係る調査研究等の推進、規制基準の早期設定など、実効性のある対策を示すこと
PFASの環境中の挙動の解明、排水中のPFOA・PFOSの除去技術の確立、水質調査・除去技術の導入に必要な費用に対する支援
国の専門家会議、食品安全委員会等の検討結果、評価に関する分かりやすい情報発信、リスクコミュニケーションの促進など、国民の安全・安心に資する対策を明らかにすること |
要望書の写し
国の検討状況
PFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議(目標値会議)
人の健康の保護に関する環境基準等の設定や、それに付随する事項が検討されています。
2023年1月以降5回開催されており、2024年12月開催の第5回会議では、PFOS及びPFOAを「水質基準項目」とし、水質基準値は(安全側をみて)PFOS、PFOAの合算値として「50ng/L」とする方針が固められました。(施行時期:2026年4月1日)
この方針を受けて、国の中央環境審議会で現在、水質基準の見直しに向けた検討が進められています。
PFASに対する総合戦略検討専門家会議(専門家会議)
PFASに関する国内外の最新の科学的知見及び国内での検出状況の収集・評価及びこれらを踏まえた科学的根拠に基づく総合的な対応を検討が行われています。
2023年1月以降5回開催されており、「国民への情報発信のためのQ&A集」「PFASに関する今後の対応の方向性について」がとりまとめられました。
食品安全委員会有機フッ素化合物(PFAS)ワーキンググループ
PFASのうちPFOS,PFOA,PFHxSについて、食品健康影響評価の対象として、約3,000の文献から科学的知見の収集・整理を行い、2024年6月に評価書が取りまとめられました。
- 疫学研究からはPFOS、PFOAと健康影響との関連が「ある」という報告と「ない」という報告があり、PFOS・PFOAとの関連については確かなものとは言えない。
- 現時点で得ることのできたデータ、科学的知見から、一日耐容摂取量(TDI)はPFOS、PFOAとも20ng/kg/日とすることが適当である。
- 現時点での情報は不足しているものの、通常の一般的な国民の食生活(飲水を含む)から食品を通じて摂取される程度のPFOS及びPFOAによっては、著しい健康影響を生じる状況にないと考えられる」
PFASに関するQ&A
PFOS、PFOAに関するQ&A集