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最終更新日:2023年5月21日
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1.「新型コロナウイルス」とは
2.感染経路
3.感染した人から感染する可能性
4.感染した人が他の人にうつす可能性
5.感染者が外出を控える期間
6.り患後の徒労感、息苦しさなどの症状
7.「濃厚接触者」の取扱い
8.家族が新型コロナウイルス感染症にかかった場合
1.マスクの効果
2.マスクを着用する場面
3.感染予防のための手洗い
4.感染予防のための換気
1.新型コロナウイルス感染症を診断するための検査
2.感染した場合の抗体・免疫
3.重症化率
4.治療薬の実用化に向けた取組み
5.経口薬(ゲブリオカプセル、パキロビッドパック、ゾコーバ錠)の投薬
「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」はコロナウイルスのひとつです。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれます。ウイルスにはいくつか種類があり、コロナウイルスは遺伝情報としてRNAをもつRNAウイルスの一種(一本鎖RNAウイルス)で、粒子の一番外側に「エンベロープ」という脂質からできた二重の膜を持っています。自分自身で増えることはできませんが、粘膜などの細胞に付着して入り込んで増えることができます。ウイルスは粘膜に入り込むことはできますが、健康な皮膚には入り込むことができず表面に付着するだけと言われています。物の表面についたウイルスは時間がたてば壊れてしまいます。ただし、物の種類によっては24時間~72時間くらい感染する力をもつと言われています。手洗いは、たとえ流水だけであったとしても、ウイルスを流すことができるため有効ですし、石けんを使った手洗いはコロナウイルスの膜を壊すことができるので、更に有効です。手洗いの際は、指先、指の間、手首、手のしわ等に汚れが残りやすいといわれていますので、これらの部位は特に念入りに洗うことが重要です。また、流水と石けんでの手洗いができない時は、手指消毒用アルコールも同様に脂肪の膜を壊すことによって感染力を失わせることができます。
感染者の口や鼻から、咳、くしゃみ、会話等のときに排出される、ウイルスを含む飛沫又はエアロゾルと呼ばれる更に小さな水分を含んだ状態の粒子を吸うか、感染者の目や鼻、口に直接的に接触することにより感染します。一般的には1メートル以内の近接した環境において感染しますが、エアロゾルは1メートルを超えて空気中にとどまりうることから、換気が不十分であったり、混雑した室内では、感染が拡大するリスクがあることが知られています。また、ウイルスが付いたものに触った後、手を洗わずに、目や鼻、口を触ることにより感染することもあります。WHOは、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するなどとしています。
新型コロナウイルスは、発症の2日前から発症後10日間程度まで他の人に感染させる可能性があるとされています。特に、発症の直前・直後でウイルス排出量が多くなります。また、無症状病原体保有者(症状はないが検査が陽性だった者)からも、感染する可能性があります。SARS-CoV-2オミクロン株感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査によると、オミクロン株症例の呼吸器検体における感染性ウイルス検出率は、有症状者の場合、発症後5日目からウイルス分離効率が低下し、発症後10日目から14日目までに採取された検体におけるウイルス分離効率は4.1%で、発症後15日目以降に採取された検体からはウイルスが分離されず、無症状者の場合、診断後8日目以降に採取された検体からはウイルスが分離されなかったと報告されています。新型コロナウイルスに感染した方が、他の人に感染させる事例は、全体の2割以下と考えられますが、マスク無しの会話や3密(密閉・密集・密接)が感染拡大リスクとなっています。体調が悪いときは不要・不急の外出を控えることや、人と接するときには不織布マスクを着用すること、新型コロナウイルスに感染していた場合に多くの人に感染させることのないように行動することが大切です。
※マスクの着用により、感染者と接する人のウイルス吸入量が減少することがわかっています。
新型コロナウイルス感染症では、鼻やのどからウイルスの排出期間の長さに個人差がありますが、発症2日前から発症後10日間程度までは感染性のウイルスを排出していると言われています(※1)。
発症後3日間は、感染性のウイルスの平均的な排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少することから、特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いことに注意してください(※2)。
また、排出されるウイルス量は発熱やせきなどの症状が軽快するとともに減少しますが、症状軽快後も一定期間ウイルスを排出すると言われています。
(※1)国立感染症研究所のデータによれば感染力のあるウイルスを排出する患者の割合は、症状が続いている患者も含め、発症日を0日目として8日目(7日間経過後)で15%程度、11日目(10日間経過後)では4%程度となります。
(※2)国立感染症研究所のデータによれば、感染力のあるウイルスを排出する患者について、発症日を0日目として3日間程度は平均的に高いウイルス量となっていますが、4日目(3日間経過後)から6日目(5日間経過後)にかけて大きく減少し、ウイルスの検出限界に近づきます(6日目(5日間経過後)前後のウイルス排出量は発症日の20分の1~50分の1)。一般にウイルス排出量が下がると、他の人にうつしにくくなると言われています。
令和5年5月8日以降、新型コロナ患者は法律に基づく外出自粛を求められません。外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます。その際、以下の情報を参考にしてください。
周囲の方や事業者におかれても、個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いします。各医療機関や高齢者施設等においては、新型コロナウイルスにり患した従事者の就業制限を考慮してください。
発症後10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクを着用したり、高齢者等ハイリスク者と接触は控たりする等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。
発症後10日を過ぎてもせきやくしゃみ等の症状が続いている場合は、不織布マスクの着用などせきエチケットを心がけましょう。
「新型コロナウイルス感染症り患後も続く症状について」をご確認ください。
保健所から新型コロナ患者の「濃厚接触者」として特定されることはありません。また、「濃厚接触者」として法律に基づく外出自粛は求められません。
ご家族、同居されている方が新型コロナウイルス感染症にかかったら、可能であれば部屋を分け、感染されたご家族のお世話はできるだけ限られた方で行うなど注意してください。外出する場合は、新型コロナにかかった方の発症日を0日として、特に5日間はご自身の体調に注意してください。7日目までは発症する可能性があります。こうした間は、手洗いなどの手指衛生や換気などの基本的感染対策のほか、不織布マスクの着用や高齢者等ハイリスク者と接触を控える等の配慮をしましょう。もし症状が見られた場合には、「5.感染者が外出を控える期間」をご確認ください。
変異とは、生物やウイルスの遺伝子情報が変化することです。ウイルスが増殖する際、ウイルスの遺伝情報(新型コロナウイルスの場合はRNA)が書き換わることがあり、これをウイルスの変異といいます。一般的に、ウイルスは流行していく中で少しずつ変異をおこしていきます。この変異したウイルスが変異株です。ウイルスを構成するタンパク質の遺伝情報の変異が起こるとウイルスの性質が変化することがあります。感染の広がりやすさ(伝播性)や、引き起こされる病気の重さ(病毒性)が変わることもあれば、ワクチンや薬が効きにくくなる(免疫逃避や耐性獲得)こともあります。新型コロナウイルスについても、約2週間に1箇所程度の速度で変異していると考えられています。
一般的にウイルスは増殖・流行を繰り返す中で少しずつ変異していくものであり、新型コロナウイルスも約2週間で一か所程度の速度で変異していると考えられています。厚生労働省及び国立感染症研究所では、ゲノムサーベイランスで変異株の発生動向を監視しています。国立感染症研究所では、変異株のリスク分析・評価を行い、その評価に応じて、変異株を「懸念される変異株(VariantofConcern:VOC)」、「注目すべき変異株(VariantofInterest:VOI)」、「監視下の変異株(VariantsunderMonitoring:VUM)」に分類しています。変異株の発生動向、リスク評価、及び分類については、国立感染症研究所から随時情報提供しております。詳細は、国立感染症研究所のホームページからご確認下さい。また、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいても、変異株について情報提供しています。神戸市内の変異株の確認状況は「変異株の確認状況」をご確認ください。
2023年2月8日の第116回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて提出された資料において、以下の内容が示されています。
マスク着用に関する研究を解析した結果では、マスクを着用している人の週あたり感染リスクが着用していない人の0.84倍に低下することが知られている。観察期間を2週にすると、マスクを着用している人の感染リスクはマスクを着用していない人の0.76倍に低下すると推定される。これはマスクを着用することによって自分が感染しないための効果に相当する。
米国における研究では、マスクを着用している人が10%増加するにより、そうでない場合と比較して流行を3.53倍制御しやすくなる(マスク着用率が10%上昇することによって、実効再生産数が1未満に落ちて流行が制御下に置かれるという度合いが3.53倍だけ増す)と推定されており、流行対策の一部としてマスク着用が有効であることが示唆されている。
本知見は、新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードにおいて、専門家が示された知見に基づき記載しています。今後の研究の進展により更新される可能性があります。
(参考)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(第116回(2023年2月8日)資料3-3-②)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001055263.pdf
新型コロナウイルス感染症対策としてのマスク着用については、行政が一律にルールとして求めるのではなく、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断に委ねられます。本人の意思の反して、マスクの着脱を強いることがないよう、配慮をお願いします。ただし、感染防止対策としてマスクの着用が効果的な場面等や症状がある場合等においては、不織布マスクの着用を推奨しています。こうした場面では、重症化リスクの高い方を守るためにもご協力をお願いします。なお、新型コロナウイルス感染症の感染が大きく拡大しているような場合には、一時的に屋内においても原則としてマスクの着用をお願いする等、強い感染対策をお願いする場合があります。
<マスク着用が効果的な場面>飛沫に含まれる新型コロナウイルスや、手や身の回りのものに付着した新型コロナウイルスが、人の口や鼻、眼などから入って感染します。したがって、感染を予防するためには、手洗いや身の回りのものに付着したウイルスの数を減らすことが有効です。まず、ウイルスは水で洗い流すことでかなり数を減らすことができます。帰宅後の手洗いやシャワーをお勧めしているのはそのためです。石けんと流水による手洗いを行うことが最も重要です。手指に付着しているウイルス量は、流水による15秒の手洗いだけで1/100に、石けんで10秒もみ洗いし流水で15秒すすぐと1万分の1に減らすことができます。手洗いがすぐに出来ない状況では、アルコール消毒液(濃度70%~95%のエタノール)(※)も有効です。一方で、次亜塩素酸ナトリウム(いわゆる塩素系漂白剤)は、危険ですので、手指には用いないでください。また、亜塩素酸水も、目に入ったり、皮膚についたりしないよう注意してください。
(※)60%台のエタノールによる消毒でも一定の有効性があると考えられる報告があり、70%以上のエタノールが入手困難な場合には、60%台のエタノールを使用した消毒も差し支えありません。
検査種類 | 抗原検査(定性) | 抗原検査(定量) | PCR検査 |
---|---|---|---|
調べるもの | ウイルスを特徴づけるたんぱく質(抗原) | ウイルスを特徴づけるたんぱく質(抗原) | ウイルスを特徴づける遺伝子配列 |
精度 | 検出には、一定以上のウイルス量が必要 | 抗原検査(定性)より少ない量のウイルスを検出できる | 抗原検査(定性)より少ない量のウイルスを検出できる |
検査実施場所 | 検体採取場所で実施 | 検査機器等を要する | 検査機器等を要する |
判定時間 | 5~30分 | 30分~40分 | 1時間~3時間 |
新型コロナウイルスに感染した人の体内では、新型コロナウイルスに対する抗体が作られることが知られていますが、どのくらいの割合の人で抗体が作られるのか、その抗体が感染後どのくらいの時期から作られ、その後どのくらい持続するのか、それにより新型コロナウイルスに対する免疫が獲得できるのかは、現時点では明らかになっていません。従って、一度新型コロナウイルスに感染した方であっても、再度感染する可能性は否定できませんので、引き続き適切な行動をとっていただくようお願いします。また、上記のことから、新型コロナウイルスへの抗体を持っていないことが分かっても、そこから現在新型コロナウイルスに感染していない、あるいは過去に感染したことがないと判断することはできません。なお、現在、イムノクロマト法と呼ばれる迅速簡易検出法をはじめとして、国内で様々な抗体検査キットが市場に流通していますが、期待されるような精度が発揮できない検査法による検査が行われている可能性もあり、注意が必要です。現在、日本国内で診断薬として薬事承認を得た抗体検査はなく、世界保健機関(WHO)は抗体検査について、診断を目的として単独で用いることは推奨せず、疫学調査等で活用できる可能性を示唆しています。
重症化する割合や死亡する割合は以前と比べ低下しており、オミクロン株が流行の主体である2022年3月から4月に診断された人の中では、重症化した人の割合は50歳代以下で0.03%、60歳代以上で1.50%、死亡した人の割合は50歳代以下で0.01%、60歳代以上で1.13%となっております。
(参考)第98回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード新型コロナウイルスは、以下を繰り返すことで、私たちの体の中で広がっていきます。
重症化すると、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応を起こしたり、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という重度の呼吸不全を起こしたりすることが知られています。抗ウイルス薬の多くは、このウイルスの1.侵入、2.複製、3.増殖、4.拡散の過程をターゲットとします。既存の治療薬で、それぞれの過程をターゲットとした薬や、新型コロナウイルス感染症の症状(サイトカインストーム等)への効果が期待できる薬を新型コロナウイルスの治療薬として実用化するため、その治療効果や安全性を検証するための治験や臨床研究が進んでおり、一部には承認されたものもあります。承認済の新型コロナウイルス治療薬及び現在開発中の主な新型コロナウイルス治療薬については、以下のページをご覧ください。
承認済の新型コロナウイルス治療薬及び現在開発中の主な新型コロナウイルス治療薬(2022年9月28日現在)現在、新型コロナウイルス感染症の治療薬のうち、軽症者向けの経口薬としては、ラゲブリオカプセル(有効成分:モルヌピラビル)、パキロビッドパック(有効成分:ニルマトレルビル/リトナビル)及びゾコーバ錠(有効成分:エンシトレルビルフマル酸)が承認されています。ラゲブリオカプセル及びパキロビッドパックの投与対象者は、日本感染症学会のガイドライン「COVID-19に対する薬物治療の考え方第15版」(2022年11月22日)において、高齢者、肥満、基礎疾患のある方など、重症化リスク因子を有する方が対象とされています。また、ゾコーバ錠の投与対象者については、これらとは異なり、同ガイドラインにおいて、重症化リスク因子を有しない方が対象とされていますが、本剤についてCOVID-19の5つの症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、倦怠感(疲労感))への効果が検討された臨床試験における成績等を踏まえ、高熱・強い咳症状・強い咽頭痛などの臨床症状がある者に処方を検討することとされています。加えて、ラゲブリオカプセル及びゾコーバ錠は、動物実験で催奇形性が認められており、妊婦又は妊娠している可能性のある女性は投与禁忌とされています。また、パキロビッドパック及びゾコーバ錠は、複数の薬剤が併用禁忌とされており、服薬中のすべての薬剤を確認する必要があります。さらに、ラゲブリオカプセル及びパキロビッドパックは発症から5日以内に、ゾコーバ錠は発症から3日以内に服用する必要があります。このため、新型コロナウイルスに感染したら、誰でも経口薬の投与を受けられるものではありませんが、投与の要否については、医師の診断に従ってください。