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最終更新日:2025年11月21日
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登壇者:神戸市建設局下水道部計画課 清水さん

みなさん、こんにちは。神戸市建設局下水道部の清水と申します。本日みなさんにお伝えしたいことは、下水に含まれる資源を活用し、日本の食料安全保障につなげていく「神戸再生リン」の取り組みです。
まず背景からご説明します。日本の農業の課題として、食料自給率が低いことはよく知られていますが、実は肥料の自給ができていないことはあまり知られていません。肥料の三大要素のひとつであるリンは、日本には埋蔵がなく、すべてを海外からの輸入に頼っています。そのため国際情勢の影響を大きく受け、近年価格が高騰し、従来の農業経営を圧迫する深刻な状況が生じています。これはまさに国全体の食料安全保障上の課題です。
この課題にいち早く取り組んだのが神戸市です。江戸時代には、し尿が肥料として循環利用されていましたが、現代の下水にもリンが多く含まれていることに着目し、2011年から最新技術を用いて下水から安全にリンを回収し、肥料化する取り組みを進めてきました。回収したリンは「こうべ再生リン」と名付け、市内の農地で米や野菜の栽培に活用しています。
すでに成果が現れており、10種類以上の作物に利用され、学校給食にも使われています。子どもたちの食育の場ともなり、さらには再生リンで育った酒米を使って日本酒もつくられるなど、単なる資源循環にとどまらず、市民の食卓や教育現場にも広がりを見せています。こうした取り組みが、全国から資源循環のモデルとして注目を集めています。
今後の展開としては、回収設備を新たに建設し、神戸市内のみならず全国の農業にも再生リンを供給していきたいと考えています。また、「神戸モデル」としてノウハウを全国に提供することも進めてまいります。さらに、再生リンを使った新商品の開発や、より効率的な回収技術の研究にも挑戦します。そのためには、企業版ふるさと納税やクラウドファンディングなどによる支援も必要です。目標金額は1000万円で、協力いただいた方には設備の見学や試供品の提供も行っています。
神戸市の挑戦が全国に広がり、食料安全保障の確保に貢献できるよう、皆さまと一緒に取り組みを進めていきたいと考えています。
『資源循環「こうべ再生リン」プロジェクト』の紹介ページもご覧ください。
登壇者:神戸市教育委員会事務局学びの推進課 奥井さん

皆様、初めまして。神戸市教育委員会事務局の奥井と申します。現在、総合的な学習の時間の指導主事をしております。これまで赴任した小学校で出合った総合的な学習の時間の面白さが、今の仕事につながっています。本日は「子どもたちの“やりたい”学びを叶える」取り組みについてご紹介いたします。
子どもたちの「やりたい学び」とはどのようなものか。アンケートを取ったところ、「体験活動をもっと充実してほしい」「好きなことをとことん学びたい」といった声が多く寄せられました。これは、子どもたちからの大事なメッセージだと受け止めています。
そんな子どもたちの声を実現させるために、企業の皆様に「教育への参画」と「ふるさと納税などによる支援」をお願いします。現在、「教育への参画」として、29団体、38プログラムが登録されていますが、まだ十分とは言えません。子どもたちの学びの場をさらに充実させるには、皆様のご協力が必要です。この取り組みは、子どもたちだけでなく、企業にとっても社会貢献や社員のコミュニケーション力向上につながるものだと考えています。
神戸市では、今「社会とつながる探究的な学びの充実」を進めています。「探求」とは、予測困難な時代において、多様な他者と協働し、新たな考えをつくり出す学びであり、きっと、ビジネスの現場にも通じるのではないでしょうか。
例えば、芸術分野では兵庫県立美術館と連携し、子どもたちが「自分も作品を作ってみたい」と目を輝かせました。食の分野ではNPO法人神戸・田んぼ応援団と協力し、田植えを通じて「米作りの大変さ」や「食への感謝」に気づきました。地域経済では六甲山観光株式会社とともにイベントに参画し、「地域の人が喜んでくれて誇らしかった」と振り返る子どもたちもいました。この他にも環境、防災、まちづくり、福祉など、多様な社会課題や子どもたちの関心に基づいたテーマで探究を進めています。企業や地域との連携が深まることで、子どもたちの学びも豊かになります。だからこそ、皆様の力が必要なのです。
『産官学民連携の取組~みんなでつくる、神戸の学び~』の紹介ページもご覧ください。
登壇者:神戸市環境局自然環境課 小名木さん

皆さんこんにちは。神戸市の小名木と申します。私は爬虫類や両生類の観察・撮影を趣味としており、生き物が大好きです。本日は、そんな私から「KOBE里山生物多様性戦略」についてご紹介します。
近年、生物多様性の劣化が進み、回復を目指す「ネイチャーポジティブ」が世界共通の目標として掲げられました。国連では2030年までに陸域と海域の30%以上を保全する「30by30目標」が採択され、日本もその実現を目指しています。その達成に向けて重要となるのが「OECM(Other Effective area-based Conservation Measures:保護地域以外での効果的な保全地域)」です。国立公園など法的に保護された地域だけでなく、企業や地域の活動によって守られるエリアを拡大することが求められています。
この候補地として注目されているのが里山です。里山は、農業や薪利用、ため池の管理など、人々の営みによって持続的に保全されてきた自然ですが、エネルギー源の変化や農業人口の減少により荒廃が進んでいます。それでも、日本の絶滅危惧種のおよそ半数が里山に生息しており、その保全は極めて重要です。
神戸市では「KOBE里山生物多様性戦略」を策定し、保全・管理・活用を推進しています。北区の里山は環境省の「自然共生サイト」第1弾に認定され、その後、日本で初めて国連の「OECMデータベース」に登録されました。180ヘクタールに及ぶ広大な里山を実証フィールドとし、ここでの取組を全国の里山にも広げていくことを目指しています。
具体的には、田畑やため池の草刈りを適切に行い、希少生物の生息環境を保全しています。また、池の水を採取してそこに含まれるDNAを分析する「環境DNA分析」を神戸大学と連携して実施し、どのような生き物が生息しているかを調査しています。さらに、木を適切に伐採して明るい環境をつくり、生物多様性を高めると同時に、伐採材は木材製品や備長炭に加工して地元経済の循環にもつなげています。加えて、市民団体や学生と協力し、耕作放棄地やため池の再生にも取り組んでいます。
都市近郊の里山は住宅や工場の開発により減少してきましたが、残された部分を守ることは生物多様性の保全に大きく貢献します。神戸市の里山は日本で初めてOECMに登録された実績を持ち、神戸大学の調査でも特に豊かな生物多様性が確認されています。また、都市部からアクセスしやすく、保全活動を継続しやすいことも特徴です。
現在、神戸市では企業版ふるさと納税などによる経済的支援を募集しています。目標金額は3,000万円。この資金により、活動資材の購入、技術導入、担い手の確保を進めていきます。資金面だけでなく、各企業の強みを生かした技術協力や人材参加による支援も歓迎します。「自然共生サイト」への支援については、国が証明書を発行する制度が今年8月から始まっており、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示やCSR活動の証明としても活用いただけます。
また、企業を対象としたフォーラムや現地見学会も開催しており、今年は11月に実施予定です。都市近郊での里山保全を肌で感じられる貴重な機会です。さらに、新しい活動拠点の整備も進んでおり、今後の展開にもぜひご注目ください。
豊かな自然を次世代へ引き継ぐために、皆さまとともに神戸の里山を守っていきたいと考えています。
『KOBE里山生物多様性戦略』の紹介ページもご覧ください。
登壇者:神戸市地域協働局SDGs推進課 山田さん、男女共同参画課 柴田さん

皆さんこんにちは。地域協働局の山田です。そして同じく地域協働局の柴田です。本日は、神戸市が進める「女性の多様な働き方やライフスタイルの実現」に向けた取り組みを、私たち二人からご紹介します。
女性活躍が言われ始めて約10年が経ちました。企業によって積極的に進められている事例もありますが、女性が昇進することや働き続けることには、「育児や家事の負担を女性が担う」という固定観念が根強く残っていることもあり、課題のある状況です。そこで神戸市では、(1)性別による思い込みや決めつけをなくすこと、(2)女性の多様な働き方を応援すること、この二つを柱に取り組んでいます。
まず1つ目、ジェンダーによる決めつけの解消です。「男性は仕事、女性は家庭」という意識が働き方に影響を与えてきました。例えば私も「この時間から帰って旦那さんのご飯は作れるの?」と言われたことがあり、まだまだ性別役割分担を前提とした意識が残っていることを感じます。
神戸市ではこうした意識を変えるため、神戸新聞社と連携して多様な働き方・生き方に関する声を集め、発信してきました。これまでに20回以上のオープンミーティングやイベント等を開催し、今年度後半も「働く女性のヘルスケア」「男性の育休」など身近な課題をテーマに取り組む予定です。今後は、企業の課題をテーマにした議論の場を、私たちや神戸新聞社が共に企画・発信することも可能です。
また、来年3月には若い女性のエンパワーメントを目的とした大規模イベントを企画しており、資金面でのご支援をお願いしています。
そのほか、企業のアイデアやご提案をもとに、オーダーメイドで連携した取り組みもできればと考えています。
次に2つ目、働き続けたい女性を支援する取り組みです。現在、女性が妊娠・出産を経ても働き続けるには大きなハードルがあります。そこで神戸市では令和3年9月に女性向けコワーキング施設「あすてっぷコワーキング」を開設しました。今年4月には首相が視察に訪れるなど注目を集めており、利用者の声として「働く力をもらえた」「資格を取得でき復帰後の不安が減った」といった成果が寄せられています。
あすてっぷコワーキングには3つの特徴として、(1)無料の一時保育、(2)充実した作業環境(寄贈によるパソコンやモニターも完備)、(3)利用者同士がつながれる交流会やセミナーが挙げられます。昨年度は2拠点を追加し計3拠点となり、延べ8,000人以上が利用しました。今後は北部に4拠点目を設け、さらに多くの女性の「働く一歩」を応援していきたいと考えています。
『私らしさプロジェクト』、『女性活躍と多様なライフスタイルの実現』の紹介ページもご覧ください。
パネリスト:
民間企業 KDDI株式会社 齋藤 匠 氏
神戸市 環境局部長 岡田 篤
神戸市 教育委員会事務局総務課長 高野尾 光代
神戸市 地域協働局企業連携推進課長 鈴木 智


久元市長:まず、神戸市における企業連携の仕組みについてお話しいただけますか。
鈴木(神戸市職員):企業連携推進課は「企業からの提案・相談の総合窓口」として機能しています。寄せられる多様な提案を受け止め、関係部局に橋渡しし、事業化を支援する体制を整えています。
鈴木:一方で課題もあります。行政は公平性を重視するため手続きに時間を要しますが、企業は即断即決を求める傾向があり、スピード感の違いが連携の壁になることがあります。
久元市長:確かに、行政の公平性と企業のスピード感の両立は大きなテーマですね。齋藤さん、民間の視点からはいかがでしょうか。
齋藤氏(KDDI株式会社):神戸市は全国の自治体の中でも比較的フットワークが軽いと感じています。ただし大規模自治体ゆえに部局間の調整に時間がかかる面もあり、ここを横断的に強化できれば、さらに連携は進むと考えています。

(神戸市地域協働局企業連携推進課 鈴木課長(右))
久元市長:次に、教育と企業との接点について伺います。
高野尾(神戸市職員):教育委員会では「体験×テクノロジー」の学びを模索しています。例えば米作り体験にセンサー技術を導入するなど、子どもたちが生き物や環境について学ぶ機会を広げています。
高野尾:企業が教育に関われない理由として「依頼がない」「どう関わればよいかわからない」という声があります。そこで窓口を一本化し、企業が参画しやすい体制を整えていきたいと考えています。また「部活動の地域移行(KOBE◆KATSU)」では、地域人材や企業に参画いただき、子どもたちに多様な活動機会を提供していきます。
久元市長:齋藤さん、企業から見て教育との連携の可能性はどうでしょうか。
齋藤氏:教育分野は社会貢献と人材育成の両面で大きな可能性があります。ただ「どう関わればよいか分からない」という課題感は確かにあります。行政が入口を整理してくれると、企業も参画しやすくなると思います。

(神戸市教育委員会事務局総務課 高野尾課長(中央))
久元市長:次に、神戸市の里山や生物多様性に関する取り組みについてお願いします。
岡田篤(神戸市職員):神戸市北区の里山は、環境省の「自然共生サイト」第1号に認定され、さらに国連のOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)に日本で初めて登録されました。大学や市民団体と協働しながら、保全と活用を両立しています。
岡田:また、国際的な潮流であるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)を踏まえ、生物多様性に関する情報開示が求められる中、企業が神戸市の里山保全に関わる意義は大きいと考えています。
久元市長:非常に重要な視点ですね。齋藤さん、環境分野の取り組みに関してはどう感じますか。
齋藤氏:TNFDは多くの企業にとって避けて通れないテーマです。神戸市の取り組みに関わることで、CSR活動や情報開示の裏付けにもなると考えています。

(神戸市環境局 岡田部長)
久元市長:続いて、民間企業の立場から神戸市との連携についてお聞かせください。
齋藤氏:KDDIでは東日本大震災をきっかけに復興支援部門が生まれ、そこから現在の地域共創室に発展しました。神戸市では農業分野でスマート技術を活用した実証を進めています。
齋藤氏:先ほどのプレゼンでも、神戸市として企業版ふるさと納税による支援を求めているとの話がありましたが、企業版ふるさと納税をしていなくても神戸市と連携できますのでご安心ください(笑)
気軽に連携を始められる土壌がある一方で、部局横断の調整がさらに強化されれば、より多様な企業が参画しやすくなると考えています。
久元市長:ありがとうございます。参画のハードルを下げつつ、横の連携を強めていくことが課題ですね。

(KDDI株式会社 齋藤氏(右))
参加者A:神戸市は“失敗を前提に挑戦してくれる姿勢”があると感じます。未来の世代に社会課題を解決する力を育むにはどう取り組んでいますか。
久元市長:【学生による耕作放棄地の再生活動や、高校生の公園管理、竹チップ舗装の実験などを紹介し、←★下線文言修正】自然体験を通じて「生き抜く力」を育むことが大切だと考えています。
参加者B:企業に求める姿勢や技術、自治体の役割の変化は?
久元市長:資金支援に限らず、教育、女性活躍、生物多様性、雑草対策、さらに5G・ローカル5Gや遠隔医療など幅広い技術提供を歓迎しています。自治体は「執行者」からコーディネーターへと役割を転換すべきだと考えています。
参加者C:TNFDに関して、神戸市の活動から環境価値を定量化・クレジット化する予定はありますか。
岡田:国際的にも指標は整備途上のため、神戸市の自然共生サイトを実証フィールドとして定量化を模索していきたいと考えています。
参加者D:マーケティング的発想を庁内で横断的に取り入れる考えは?
久元市長:各部局で個別にはあるものの、全庁的には十分でないのが現状です。庁内でしっかり議論していきたいと思います。
参加者E:神戸市の連携はスピード感があると感じます。一方、生物多様性保全と開発行為のトレードオフは?
久元市長:太陽光パネル規制条例や盛土規制、河川の自然工法などでバランスを取るよう努めており、今後も持続可能な都市づくりを進めていきたいと考えています。
久元市長:改めて、自治体は「執行者」から「コーディネーター」へと役割を変えていく必要があります。人口減少が加速する中で、市民・企業・大学と力を合わせながら、新しいモデルを築いていきたいと考えています。本日は本当にありがとうございました。この後のネットワーキングでも、ぜひ率直なご意見をいただければ幸いです。