作品17.離宮道

【撮影場所】 須磨区離宮前町2 (撮影:2011/11/10)
離宮道は、天皇陛下が武庫離宮へ行幸される際の行幸道として開通しました。道の両側には、クロマツが街路樹として植えられ、独特の雰囲気があります。川西画左側に、塔のようなものが見えます。はじめ須磨海岸にある旧和田岬灯台かと思っていました。しかし、灯台は1963(昭和38)年に現在の場所へと移設されており、川西画の描かれた1961(昭和36)年以前には存在していません。また、戦前の神戸百景には、ここから近い場所の作品『松風村雨堂』がありますが、そこにも火の見やぐらのようなものが描かれていました。1956(昭和31)年頃の住宅地図で調べてみると、山陽電車の踏み切り南側に西須磨消防署があったことがわかりました。どうやら、この塔は消防署の火の見やぐらでした。
作品19.百貨店

神戸百景本編では『47.クリスマスセール』として採用された作品です。基本的な構図は同じですが、天井から吊(つる)されている飾り付けが描き加えられています。何となく、天井部分が寂しかったのでしょう。未収録作品からは、意外にもこのような修正が多いですね。
作品20.垂水

【撮影場所】 垂水区平磯1 (撮影:2011/11/12)
川西英さんが描く垂水の海には、よく平磯灯標が登場します。これは、百景のポイント探しをしているわたしにとって、場所を特定する上での道標(みちしるべ)になるものです。灯標の位置から、スケッチしたおよその場所を突き止めることもできます。まさに川西英さんが、絵の中に残したヒントなのです。
垂水港は、現在も神戸を代表する漁港のひとつで、地元にある海神社のお祭りでは海上渡御を行います。これは漁船に御輿を乗せて航行するもので、この地区ならではの伝統行事として継承されています。そんな垂水の海も、川西英さんの頃とは大きく変貌してしまいました。海岸線のほとんどが埋め立てられ、もう昔の砂浜を見ることはできません。神戸百景のひとつに『96.海神社祭』がありますが、当時は海岸線に建っていた大鳥居も、埋め立てにより、現在は内陸に建っているかのようです。
写真は、埋めて地に造られた垂水スポーツガーデンにある恋人岬からの眺めです。ここからは、平磯灯標を一番近くに見ることができます。