作品9.市立教材園

川西英さんは、どうしてタイトルを変更しなければならなかったのでしょうか。理由は、この市立教材園を描いた1952(昭和27)年ごろから、神戸百景本編を描いた1961(昭和36)年ごろの間に、この施設は「教育植物園」と改称されていたからでした。
市立教材園は、市立小学校に理科生物の教材供給と現地観察実習の両面より、教科書に対応した生きた理科教育指導を目的とした共同教材園として、1941(昭和16)年に開園しています。その後、1958(昭和33)年4月に教育植物園と改称されました。(五十年の歩み 1990神戸市立森林植物園 発行神戸市より)
作品10.神戸駅

新旧作品、タイトルは同じですが修正された作品です。列車と手前の乗客などが、描き替えられました。特に注目したいのが列車です。未収録作品はモノクロのため、車両の特定をするのは難しいのですが、神戸百景本編の車両は80系という形式だそうです。その実物が大阪弁天町の交通科学博物館に保存されています。
川西英さんの三男祐三郎さんは大の鉄道マニアです。先日、お宅におじゃましたときにも鉄道の話題になると、少年のような顔で話をしてくださったのを覚えています。この80系電車の話がでると、湘南カラーといわれた塗装は、当時の技術では難しかったと説明してくださったことが印象に残っています。
作品12.レーダー塔

神戸百景本編では、『41.ビルの屋上』として採用された作品です。新旧作品を比べてみると、神戸港に浮かぶ船舶の描き方が異なること、それから商船三井ビルの屋上に塔が描き加えられているのがわかります。この塔、モザイクにある望楼にそっくりです。ここから船舶の運行を監視していたのでしょうか。