作品29.公営住宅
未収録作品の団地は、どこを描いたものでしょうか。川西さんは、神戸百景本編では鴨子ヶ原を描き、この作品と差し替えています。1952(昭和27)年頃というと、公営住宅の草分け的な存在でないでしょうか。神戸市が発行していた『市民のグラフ こうべ』にも、古い団地の写真が登場してきます。なかでも目を引いたのが、やはり、鴨子ヶ原から渦森台あたりの景色です。鴨子ヶ原正面奥の建物は、上から見ると星形をしているスターハウスと呼ばれる建物です。スター型の建物は、神戸市内ではもう見かけなくなりました。かつては、鴨子ヶ原をはじめ、六甲、鷹取や東舞子あたりにもあったようですが、すでに建て替えられています。ほとんどが昭和30年代前半に建築されたものですので、老朽化が進んだのと、阪神淡路大震災なども影響しているのだと思います。
作品32.神戸タワー
【撮影場所】 兵庫区新開地1 (撮影:2011/8/2)
神戸のシンボルとしてそびえていたタワーは、1968(昭和43)年に撤去され、現在はカリヨン時計塔がその跡地にたっています。川西画の広告は、製薬会社のものですね。ひと昔前は、神戸の繁華街と言えば新開地であったとの話はよく聞きますが、神戸タワーとともに、その華やかさは消えてしまったのでしょうか。みなとの祭をはじめ、花火大会、出初め式など、市内の大きな催しは、みなこの湊川公園で行われていました。
川西英さんは、あえて『神戸タワー』、『東山』、『映画館』の3作品を神戸百景から外しています。まるで、新開地のその後を予見していたかのようです。このあたり、どんな理由があったのでしょうか。