最終更新日:2025年6月1日
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神戸市北区にある神戸弘陵学園高等学校。
そこには全国屈指の強さを誇る「女子硬式野球部」があります。
2025年4月8日、東京ドーム。第26回全国高校女子硬式野球選抜大会で、女子硬式野球部が史上初の「3連覇」という快挙を達成しました。そんな彼女たちの強さと結束力がどこから生まれているのか、そして次なる目標や「想い」を北区役所が取材しました。
区役所:
山本さん、まずはご自身のことから教えてください。
山本:
はい。現在3年生で、当女子硬式野球部のキャプテンです。守備はキャッチャーです。
小学校や中学校では男子に混ざって軟式野球をしていました。
中学2年生のとき、神戸弘陵学園高等学校の女子硬式野球部の存在を知りました。
というのも、甲子園球場で初めて女子硬式野球の大会が行われたときに出場していたのが本校でした。
そして本校へ入学をして硬式野球をはじめました。
区役所:
軟式から硬式へ。硬式ボールは非常に重たいですが、この変化にどんな印象を持ちましたか。
山本:
もちろんボールの硬さや重さも異なりますが、塁間(たとえば1塁から2塁までの距離のこと)が硬式のほうが遠いんです。
スローイングやダッシュの間隔もまったく異なるので慣れるまで大変でした。もちろんルールも異なる部分はあります。
区役所:
(取材している日は)あいにくの雨模様ですが、練習がオフにはならない…?
山本:
雨でもノックくらいは全然やりますよ!
ちなみに火曜~金曜は放課後に専用グラウンドで練習し、土曜・日曜は練習試合に出ることが多いです。
月曜だけオフですね。練習はとても厳しいので、じつは月曜のオフが楽しみなんです(笑)
区役所:
正直なお話しが聞けてうれしいです。オフは練習へのモチベーション維持にすごく大事だと思います。
厳しい練習の「しんどさ」や「やりがい」はどこにありますか。
山本:常にポジション争いをするライバル同士がプレーで競い合うため、そういう意味ではどの練習も精神的にしんどいですね。
でも、試合に勝ったとき、試合が終わった時の達成感、やっていてよかったという気持ちを知っているから。だから、頑張れるんです。
区役所:
「試合に勝つ」ために意識していること、大事にしていることを教えてください。
山本:
キャッチャーとしては、1球ごとにいろんなことを考えながら試合に臨むようにしています。
キャプテンとしては、立場上、チームメイトに対して怒ったり注意したりすることもある。
その際に「お前に言われたくない」とならないよう、自分がいちばん良い声を出したり、
良いプレーをしたり、一所懸命に練習に取り組んだりする姿勢を見せます。
それから、副キャプテンの矢島さんとも、チームがよりよくなるようにたくさん話し合っています。
また、これまでの先輩の「姿勢」を目標にしています。プレーの実力だけではない、試合に向き合う姿勢のことです。
試合中でもひとつのブレーに対してその場で思ったことやアドバイスなどを言い合う姿を大事に受け継いでいます。
区役所:
最後に、チームの目標や掲げる想いを教えてください。
山本:
チームとしては、3年連続の全国高等学校女子硬式野球選抜大会の春夏連覇が目標です。
それをきっかけに、少しでも多くの人に女子硬式野球のことを知ってほしいです。
区役所:
矢島さん、まずはご自身のことから教えてください。
矢島:
わたしも現在3年生で、副キャプテンです。守備はセンター(外野)です。
小学生時代は軟式野球、中学生から硬式野球をはじめました。
その後、女子硬式野球部があると知って本校へ入学を決意しました。
区役所:
矢島さんは中学生から硬式野球を経験されていたのですね。硬式野球のプレースタイルやスピード感、球への恐怖心はありましたか。
矢島:
まったくなかったです。球を受けるのは怖くない。むしろ楽しかったですね。
区役所:
ふだんの厳しい練習の成果ですね。
矢島:
そうかもしれません。でも練習でいちばんしんどいのは、ボールを使わない冬トレ(冬の練習時の締めとして行うランメニュー)で、忍耐も瞬発力も鍛えられました。どの練習も厳しいですが、自分の成長を実感できるきっかけも多く、モチベーションにつながっています。
区役所:
そんな矢島さんは、2年生のころから多くの試合で活躍してこられたと聞いています。
矢島:
ありがとうございます。2年生のときから試合に出ている経験を活かして、もっとチームに貢献したいです。
いまは副キャプテンとして、チームメイトに指摘する立場なので、自分の活躍だけを考えるわけには当然いかない。
みんなの前に立つからこそ、チームを盛り上げるような全力で練習に取り組む意識を持ち続けています。
区役所:
じつはわたしも野球をやってきたのですが、全力でバックホームを送球するのが怖かった。とにかくミスが怖かったんです。
矢島:
それはちょっと分かります。でも、ミスをすると監督や先輩、周りのメンバーが怒ってくれる。ありがたいと思える。
ミスをすると次が怖くなることもあるけれど、「練習では思い切って全力で楽しんでやれ」と言われてきたので、いつも恐怖心を乗り越えることができています。それはきっとチームメイトも同じだと思っています。
区役所:
阿部さん、まずはご自身のことから教えてください。
阿部:
現在3年生で、ピッチャーです。小学校2年生から軟式野球をはじめ、中学生から硬式野球をはじめました。
本校に女子硬式野球部があるのを知って入学を決めました。ちなみに、北区(北神中学校)出身です。
区役所:
北区から全国に誇るサウスポーのエースが…うれしいです。ちなみにそんな阿部さんも、月曜日のオフはゆっくり休んでいますよね?
阿部:
強くなりたいという一心で、ふだんの練習日より多くのトレーニングを積んでいます。
頑張ったら頑張った分だけ成長できることを知っているので、調子の悪い時こそ練習することを心がけている。
そうした意識で続けてきたことが自分の力になっている。精神力が養われたと思います。
区役所:
感心します。先ほどノックを見ていましたが、チームメイトの掛け声が素晴らしいですね。
試合のマウンドの上で、チームメイトの声はどのように届くのでしょうか。
阿部:
もちろんみんなの声は聴こえますが、試合のマウンドでは集中して自分の世界に入っていますね。
チームメイトに対しては、ライバルというよりは切磋琢磨している仲間だという意識がある。
だから安心してマウンドで集中できていると思います。
区役所:
チームとしての目標、個人としての目標を教えてください。
阿部:
チームとしての目標は3年連続の全国高等学校女子硬式野球選抜大会の春夏連覇。
個人的な目標は夏の大会での無失点無失策。(女子硬式野球のフルイニングである)7イニングを投げ切りたいです。
区役所:
将来の夢も教えていただけますか。
阿部:
将来の夢は日本代表。野球一筋で頑張っていきたいです。
区役所:
応援しています!
区役所:
神戸弘陵学園高等学校女子硬式野球部、ほんとうにたくさんの部員がいますね。
石原:
平成26年4月、12年前にこのチームが発足しました。そこからじわじわと部員数が増えて、現在は約100名。
北は北海道から、南は沖縄まで、全国から入部希望者が集まっています。
コーチとともに全国へスカウトに行くこともあります。
ほかにも「女子硬式野球部体験デー」として、中学生向けに体験日を毎月設けており、間口を広げて受け入れています。
そんな多くの部員が、部活動引退後も7〜8割は野球を続けているのはうれしい限り。
大学野球、社会人野球、そして阪神タイガースWomenなどのクラブチームなどに所属している元部員たちもいます。
区役所:
多くの部員が引退後に野球を続けている、というのはすごいですね。
100人の部員を見るのは、コーチやサポートする先生方が多くても大変ですね。
石原:
めちゃくちゃ大変です。もちろん我々大人がしっかり面倒を見ますが、約100人の部員を見るために、
ペア制(先輩1ー後輩1または、先輩1ー後輩2)をとっています。
上級生が下級生を指導したり、下級生が上級生へ相談したりすることで、上級生の自覚を芽生えさせ、
また、コミュニケーションの取り方も相互に覚えていく。
コミュニケーションは、野球だけでなく社会で必要な力。それを養ってほしいと思っている。
ほかにも、女子特有の悩みがあればお互いに相談できる環境を整えておくことは大事です。異性の監督に話しづらいことも当然あるでしょうから。
また、毎日、すべての部員と交換日記をしている。食事中も授業の合間も読んで、大量に積み上がった日記にコメントをする。
部員が日記に書く内容は、それなりの覚悟や想いを持って伝えてくれようとしているもの。
交換日記でさまざまな状況を察知することで、早めにケアできたり気付けたりすることがあります。
区役所:
素晴らしいご指導ですね。ところで、100人の部員が一斉に専用グラウンドでいつも練習するのでしょうか。
石原:
100人の部員を一気に練習させると、ノックやバッティングもそうですが、部員たちの待機時間が増えますよね。
せっかく練習していても目を配れないこともあります。
効率よく練習できるよう、3グループに分けたり、実力にかかわらずできるだけ練習試合に出させてあげたりしている。
ふだんの練習だけでなく、土日は遠征に連れていくなど、日本全国から部員が来てくれていることを思えば、できることは一生懸命やってあげたい。成長してほしい、その一言です。
区役所:
ノックを見ていましたが、掛け声が「生きている」と感じました。それぞれ個性があって、いろんな想いがあるように思えました。
石原:
それはみんな強く意識していると思います。強いチームは、元気よく声を出すチームが多い。
そのことを指導していたら、後輩たちは先輩の背中を見て自然に育っていき、しっかり自分で考えて元気に声を出すことがチームの伝統になりました。
区役所:
このノック、非常に厳しい練習ですね…見ていて胸が痛くなりました。
しかし、先ほど取材した選手のみなさんからの「自分たちのために厳しくしてくれている」という言葉も印象的でした。
石原:
練習については厳しく指導している自覚はあります。そのうえで、こうした言葉が選手から出るのはうれしい。
3年生に近づけば近づくほど分かってくれる。ある部員が「怒られるうちが花よ」と言っていたことがある。
それをみんなしっかり理解してくれている。その姿勢に応え続けたいと思う。
目標は優勝、目的は人格形成なんです。
区役所:
女子硬式野球は、男子硬式野球とのルールの違いがたくさんあって、驚きました。
こうしたことを知るのは女子硬式野球に関心を持つきっかけになりますね。
石原:
そうですね、ルールはいろいろ異なります。まず大きいのは7イニング制。ベンチに25人入るのも、男子硬式野球と全然違いますよね。
また、監督が「タイム」を取って選手に声を掛けに行くことができる。
ほかにもDH制の採用や、選手の好きな背番号を自由につけられるなどの違いもあります。
どんなことからでもいいので、まずは女子野球について知ってほしいと思っています。
区役所:
最後に神戸市北区に住むみなさんへ、一言いただけますでしょうか。
石原:女子でも硬式野球をやっていること、女子硬式野球が甲子園でプレーしていることをなかなか知っている人がいない。
このことについて「えっ…?」という感覚の人もいる。ですが、時代は変わってきています。
まずは、ぜひ一度見に来て応援していただきたい。部員たちのプレーや一挙手一投足を見てもらいたい。
それをきっかけにして、女子野球をもっと応援してほしい。
神戸市北区の代表として頑張っているので、ぜひ皆さんにファンになってほしいと思います。
区役所:
読んだみなさんにしっかり伝わっていると思います。ありがとうございました。
毎日の厳しい練習で忙しいところ、インタビューを受けていただき、ありがとうございました。
北区役所では、これからも神戸弘陵学園高等学校女子硬式野球部の活躍を応援しています。
神戸弘陵学園高等学校女子硬式野球部の活動はHP、またはInstagramから。
神戸弘陵学園高等学校女子硬式野球部HP