須磨海浜水族園のゴマフアザラシ

最終更新日:2021年6月29日

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アザラシ

ゴマフアザラシ「メカブ」誕生秘話(『うみと水ぞく』2017年12月号)

妊娠発覚

父親の「コンブ」、母親の「ワカメ」は北海道の稚内付近で漁網に絡まったところを保護され、当園に運ばれて来ました。2012年、共に0歳の時です。2016年3月、4歳の春に交尾を確認、翌年1月に妊娠が発覚しました。最年少のワカメは体も一番小さく、まだ子どもだという感覚があり、正直、喜びよりも時の流れの速さに衝撃を受けました。

誕生

ゴマフアザラシの出産は2月下旬から4月上旬に行われます。これは野生でも飼育下でも同じです。ところが、ゴマフアザラシの妊娠期間は個体によって違いがあり、交尾した日から出産予定日を割り出すことができないのです。そうなると、観察するしかありません。2月に入ると、ワカメのおなかが動いているのがわかりました。胎動です。乳首の突出や生殖口からの粘液排出など、出産兆候も見られました。でも、いつ出産するのかはわかりません。3月に入るとスタッフはそわそわしながら、ただ待つのみ…。そして迎えた3月11日深夜、産室に入ったワカメは破水からわずか5分で待望の赤ちゃんを出産しました。

人生初の大仕事

赤ちゃんの人生初の大仕事、それはお乳を飲むことです。私たちはカメラ越しに見守っていましたが、1時間たっても、2時間たっても、3時間たっても授乳に至らず、赤ちゃんが衰弱し始めたようでした。「このままではもたない」と判断し、一度、赤ちゃんを取り上げて人工的に調整したミルクを与えました。しかし、赤ちゃんに必要な栄養と免疫力において、母乳に勝るものはありません。「何とかして母乳を与えたい」。そう考えた私たちは、他施設で考案された道具を使ってワカメから搾さく乳にゅうを試みました。母性本能なのか、搾乳中のワカメは意外にリラックスした様子で、チャレンジは成功。母乳を数回与えることができました。

さらに昼過ぎ、試しに母乳を手に付けて赤ちゃんの鼻先に持っていくと、その手をぐいと鼻で押してきました。そこで今度は鼻先をワカメの乳首に近づけてやると、赤ちゃんは乳首を探し、そして吸い付いたのです。「もう大丈夫」と安堵した瞬間でした。以降、ワカメも上手に赤ちゃんを誘導するようになり、立派な子育てを見せてくれたのでした。

天性の愛されアザラシ

野生では流氷上で育児をするというゴマフアザラシ。当園の環境はそれと比べれば気温、湿度ともに高く、微生物が増えやすいため、赤ちゃんの感染症が心配です。そこで、細菌が侵入しやすい臍へその緒の断端を縛ったり、毎日体を洗ったりして清潔さを保ちました。その時のされるがままの姿は、本人の意思とは関係なしに想像を超えて愛らしく、急きょその様子を紹介する写真展が開催されたほどです。

思うに、メカブは天性の愛されアザラシです。陸ではお客さまから一番よく見えるステージで寝たり、水中ではアクリルガラス越しに遊んでくれるお客さまの前から離れなかったり。これからも皆さんに愛されながら、心も体もたくましく成長してくれることを願っています。

解説文の出典

『うみと水ぞく』2017年12月号2-3ページ「特集ゴマフアザラシ「メカブ」誕生秘話」より
上記の掲載内容は2017年12月時点の情報です。

写真

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以下は、「#スマスイでかいじゅうを撮ろう」より再掲
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ゴマフアザラシ

名前の通り全身に胡麻(ごま)を振ったような胡麻斑模様が特徴的。2月頃、流氷に乗って南下し、北海道沿岸に姿を現す。ほとんどの個体が氷の消滅とともに北上するが、風蓮湖(ふうれんこ)、尾岱沼(おだいとう)、サロマ湖などにとどまる個体もいる。氷上では出産も行われ、産まれたばかりの新生児は全身白い毛(新生児毛)で覆われているが、生後3~4週間で胡麻斑模様の毛に生え替わり、授乳も終了する。体重は約80~120kgになるが、新生児の体重は約7~12kgである。餌は、スケトウダラ、カレイ、ミズダコなどの沿岸底生動物や、サンマやマイワシなどの回遊魚を捕食するが、1年目の幼獣は主にオキアミ類を食べている。(『うみと水ぞく』2011年3月号スマスイ生き物図鑑)

生息地域(北海道近海;~オホーツク海・ベーリング海・チュコート海・間宮海峡・ピョートル大帝湾,渤海~黄海北部.)

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