供託

最終更新日:2023年6月12日

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この解説は、2019年9月、兵庫県弁護士会の監修を受け作成したものです。

兵庫県弁護士会(外部リンク)

相談が多いテーマの一般的な質問とそれへの回答の一例を示したものです。具体的な事情等によっては、この限りではありません。

書式

供託の解説

 供託の書式はどうなっているのか。

(解説)

供託に必要な書類は、供託をすることができる供託所で入手する必要があります。これらを自ら作成し使用することはできません。

なお、法務局のホームページに「供託の書式」が掲載されておりますので、こちらもご参照ください。

 「供託」とはどういうものか。

(解説)

「供託」とは、金銭、有価証券、その他の財産を、国家機関である供託所に寄託し、供託所を通じてその財産をある他人に受け取らせることによって、一定の目的を達する制度です。供託の手続は、民法などの規定により進められます。

 どんな場合に供託をするのか。

(解説)

例えば、家賃を値上げされたが、値上げに納得しなかった賃借人が、値上げ前の家賃しか家主に持って行かなかったため、家主が家賃を受け取らなかったとします。そのまま放っておきますと、賃料の不払いにより賃貸借契約を解除されることがあり得ます。このような事態を避けるために、賃借人は、賃貸人に支払う代わりに、供託所に値上げ前の家賃を供託しておきます。そうすれば、賃料の不払いということにはならないので、それを理由に賃貸借契約を解除されることもなくなります。

また、このような受領拒否以外にも、債権者が行方不明であったり、債権者が誰であるか弁済者が過失なく確知できなかったときなどにも供託をします。

このような供託のことを「弁済供託」と言います。市民相談で用いられる「供託」とは、通常「弁済供託」のことを指します。

 弁済供託とはどういうものか。

解説)

(1)弁済供託の要件

[1]民法第494条の規定に基づく受領拒否、受領不能、または債権者不確知のいずれかがある場合に、供託することができます(供託原因があること)。

[2]供託できるものは、金銭・有価証券のほか、その他の物として動産、不動産も含まれます(債務の目的物が供託可能であること)。

[3]債務が既に発生したものであるか、そうでなくとも先払いの特約があれば供託できます。従って、将来発生する債務(例えば地代や家賃の支払い)で、賃料先払いの特約がない場合は、あらかじめ供託することはできません(債務が現存し確定していること)。

(2)供託原因

[1]受領拒否による弁済供託
受領拒否による弁済供託は、弁済者が「債務の本旨」に従った弁済の提供をしたにもかかわらず(民法第493条)、債権者からその受領を拒否されたときに行うことができます(民法第494条第1項第1号)。

「債務の本旨に従って」弁済の提供をしたかどうかは、取引上の慣習や信義誠実の原則から判断されます。例えば、一部の弁済の提供をしたときとか、履行期限を過ぎて弁済する場合に元本に期限後の遅延損害金をあわせて提供しないとき等は債務の本旨に沿った弁済の提供とはなりません。

債権者があらかじめ受領を拒否した場合及び債務の履行につき債権者の行為(債権者の協力)を要する場合には、現実の提供をしなくても、債務者が弁済の準備をしたことを債権者に通知して受領を催告(口頭の提供)すれば弁済の提供になります。

[2]受領不能による弁済供託
受領不能による弁済供託は、債権者が受領できないとき、例えば地震のため交通途絶により債権者が約束の場所に来られないときとか、債権者の住所に持参する債務(持参債務)について債権者が行方不明である場合等(事実上の受領不能)に供託できます。また、債権者が制限能力者(未成年・被後見人)である場合とか、保佐人・補助人がいない場合(法律上の受領不能)にも供託できます(民法第494条第1項第2号)。

[3]債権者不確知による弁済供託
債権者不確知による弁済供託は、債権者が誰かわからないときに行うことができます(民法第494条第2項本文)。債権者が死亡した場合に相続人がわからないとき、誰が債権者であるのか係争中であるとき等です。弁済者に過失があるときはこの限りではありませんが、「弁済者に過失があった」ことの立証責任は、債権者側が負います(同条同項ただし書)。

(3)弁済供託の効果

弁済供託をすると債権者の債権が消滅します(民法第494条第1項)。つまり、債務者は債務を免れることができ、担保も消滅します。

なお、原則として、債権者が供託所または債務者に対して供託した物を受け取ることを承諾しない間、または供託が有効だとの判決が確定しない間であれば、供託した物を取り戻すことができます(民法第496条第1項)。この場合は、供託しなかったものとみなされて、債務消滅の効果は遡及して消滅(つまり、債務が復活するということ)し、消滅した担保は当然に復活し、また供託によりストップしていた遅延損害金を支払わなければならないことになります。ただし、弁済供託によって消滅した担保が質権又は抵当権であった場合は、供託した物を取り戻すことはできません(同条第2項)。

 供託はどこの供託所でもできるのか。

(解説)

弁済供託は、債務の履行地(弁済する場所)にある供託所(法務局内)にしなければなりません(民法第495条第1項)。

例えば、地代や家賃の供託は、賃料の支払場所にある供託所(支払場所に供託所がない場合は、同都道府県内にある支払場所の最寄りの供託所)となります。

債務の履行地が神戸市内の場合は、神戸地方法務局となります。また、出張所では供託することはできません。

神戸地方法務局神戸市中央区波止場町1-1神戸第2地方合同庁舎078-392-1821

 供託所では何が必要か。

(解説)

供託所では、基本的には、以下のものが必要です。

  • 1:印鑑(認印でも結構です。)
  • 2:供託金
  • 3:封筒(債権者(地主や家主など)が複数の場合には、その数だけ必要です。それぞれ、表に債権者の郵便番号、住所及び氏名を記載し、84円切手を貼付してください。また、裏面には、自分の郵便番号、住所及び氏名を記載してください。)

また、例えば、賃料の弁済供託の場合には、供託書に賃貸借の目的となる土地、建物の所在、地番、種類、構造、賃料、支払日等を記載しなければなりませんので、賃貸借契約書を持参すると便利です。

なお、債権者が法人の場合には、「資格証明書」など別途必要な書類が生じます。法務局のホームページに「資格証明書」について掲載されておりますので、こちらをご参照ください。

 供託所での手続きの流れを教えてほしい。

(解説)

  • (1)供託所では、供託所に備え付けられている申請書の用紙(供託書、供託通知書)を供託の種類・目的に応じて選択し、必要事項を記載します。供託者の住所氏名欄に押印(認め印でも可)したものを2通作成し、これらを供託所に提出します。うち1通は供託番号が記載され、申請者(供託者)に交付されます。
  • (2)供託官によって金銭等の供託物の受入れ手続に入ります。
  • (3)供託通知書は前述の封筒で債権者(被供託者)に通知されます。

 本人以外が代理人として供託をすることはできるのか。

(解説)

委任状があれば代理の方でも可能です。法務局のホームページに「委任状」について掲載されておりますので、こちらをご参照ください。

 郵送により供託ができると聞いたが、できるのか。

(解説)

郵送による供託の申請も可能です。ただし、供託所で、専用の供託書や供託通知書などの用紙をあらかじめ準備する必要があります。

また、封筒を3通準備する必要があります。

  • 受理決定通知書及び振込依頼書送付用(表に申請者(供託者)の郵便番号、住所及び氏名を記載し、84円切手を貼付してください。)
  • 供託書正本送付用(表に申請者(供託者)の郵便番号、住所及び氏名を記載し、84円切手を貼付してください。)
  • 供託通知書送付用(表に債権者(被供託者)の郵便番号、住所及び氏名を記載し、84円切手を貼付してください。また、裏面には、申請者(供託者)の郵便番号、住所及び氏名を記載してください。)

郵送による手続きは、以下のとおりです。

  • 1:供託書・供託通知書(債権者が法人の場合は、資格証明書も必要)や封筒3通を供託所に送付します。
  • 2:供託所で受理されますと、受理決定通知書と振込依頼書が送付されます。
  • 3:申請者(供託者)は送付されてきた振込依頼書に供託金振込手数料を添えて、金融機関に振込依頼します。金融機関では、受取書が交付されます。
  • 4:供託官は振込まれたことを確認した後、供託書正本を申請者(供託者)に送付し、供託通知書を債権者(被供託者)に送付します。