ホーム > 市政情報 > 記者発表資料 > 記者発表2023年12月 > 造血と白血病を制御する未知の機構を解明

造血と白血病を制御する未知の機構を解明

ここから本文です。

FBRI

記者資料提供(2023年12月25日)
企画調整局医療産業都市部調査課


公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(理事長:本庶佑)は、先端医療研究センター血液・腫瘍研究部(部長:井上大地)による「造血と白血病を制御する未知の機構の解明」についての研究成果が、2023年12月16日 (日本時間)付の国際学術誌『Nature Communications』に掲載されましたので、お知らせします。

picture1

本研究のポイント

近年DNAレベルで変異を認めなくとも、RNAレベルでスプライシング異常により機能が喪失する遺伝子が報告されています。血液がんを中心に、BRD9という遺伝子がRNAレベルで分解される現象をこれまでの研究で捉えてきましたが、BRD9の生物学的な役割についての理解は不十分でした。

BRD9が造血に果たす役割を初めて解明
今回の報告では、BRD9が造血において果たす役割を初めて詳細に解明しました。ヒト・マウスの造血幹細胞でBRD9を喪失させると分化運命を大きく変化させ、ノックアウトマウスではヒトと同様に長期間かけて血液がんである骨髄異形成症候群を発症しました。BRD9はクロマチン構造の制御において重要な役割を果たしており、BRD9が喪失した条件ではクロマチンのループ構造や開閉状態の変化を介して遺伝子発現に変化が生じ、正常な分化機構に異常をきたすことを発見しました。

BRD9を標的とした白血病治療法の可能性
一方で、BRD9を阻害することにより急性骨髄性白血病細胞の分化を誘導できることから、短期的なBRD9阻害は白血病治療に有用であるという知見を得ることができました。
これらの結果により、正常造血におけるBRD9遺伝子の重要性をクローズアップするだけでなく、骨髄異形成症候群など増加の一途を辿る血液がんにおいてRNAレベルで発現制御される遺伝子が主要な役割を果たしていることを初めて証明しました。また、白血病に対してBRD9を標的とした治療応用にも焦点を当て、今後の開発に直結する成果といえます。

本研究では、当機構先端医療研究センター血液・腫瘍研究部の井上大地部長、Muran Xiao研究員、野村真樹研究員、西村耕太郎主任研究員が、国立遺伝学研究所(当時)の近藤伸二博士、名古屋大学の日野原邦彦特任准教授、メモリアルスローンケタリング癌センターのオマー・アブデルワハブ医師らとの共同研究により、BRD9の発現制御とクロマチン制御をつなぐ新しいパスウェイが、造血幹細胞の維持・分化ならびに血液がんの発症・進展に重要な役割を果たしており、病態理解だけでなく治療応用につながる成果を明らかにしました。

※研究成果等の具体的な内容につきましては、添付資料(PDF:2,234KB)をご参照ください。

発表者

井上 大地
公益財団法人神戸医療産業都市推進機構
先端医療研究センタ― 血液・腫瘍研究部長

2005年3月 京都大学医学部医学科卒業
2005年4月~2010年3月 神戸市立医療センター中央市民病院免疫血液内科初期・後期研修医
2010年4月~2014年3月 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了
2014年4月~2015年9月 東京大学医科学研究所細胞療法分野特任助教
2015年10月~2019年3月 Memorial Sloan Kettering Cancer Center 博士研究員
2019年2月~ 神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター血液・腫瘍研究部上席研究員
2021年10月~ 現職

picture2
 

お問い合わせ

公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 経営企画部IBRI事業推進課
TEL: 078-306-0708 FAX: 078-306-1708

E-mail: kenkyu-fbri(末尾に @fbri.org をつけてください)