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木製弓は、梓・槻・檀(まゆみ)など(現在の名称とは必ずしも一致しない)の強靱な木質を持つ樹木を材料とするが、これらの材質は撓らず、無理に引くと折れてしまう。
弓と弦の間の距離が長いほど、弓の威力は強くなるのが道理であるが、弓が撓らない木製弓では、この距離を少ない撓りで確保するために、弓が長寸となった。
また、木は、幹側を本、梢側を末といい、木製弓は、本を下端、末を上端として使用する。そこで、弓の下端の弦を掛ける部分を本弭、上端の弦を掛ける部分を末弭(うらはず)という。
しかし、若い梢側(末)は幹側(本)よりもよく撓る。そこで、弓把を弓の真ん中に置くと、弓の撓りがいびつになるために、弓把を本側に置いて撓りが均等になるように調整した。
さらに、木製弓では、弓の腹の中程から本弭に掛けて浅い溝(樋(ひ)とよぶ)を入れた。これも本末の弾力を均等にするための処置である。
樋をのぞく以上の木製弓の特徴が、伏竹弓にも継承されたのである。
伏竹弓が竹を張り合わせるのは、弓に弾力を持たせてより撓らせるためである。したがって、同じ寸法ならば、伏竹弓のほうが威力もあり、矢の飛距離も出るはずである。
しかも、木製弓は弦を外した状態では湾曲していないが、伏竹弓は弦を外しても湾曲している。
しかし、伏竹弓の弦を外した状態での反りは裏反りといい、この湾曲のままに弦を掛けるのではなく、弓を押し撓めて逆の湾曲を作って弦を掛ける。
だからよけいに強い弓となるのである。
軍記物語では、弓に対して「何人張り」という表現を用いるが、これは弦を張るために弓を押し撓めるのに必要な人数で、伏竹弓の強度を示しているのである。
また、伏竹弓は、木と竹の分離防止と装飾を兼ねて籐を巻いた。籐の巻き方に数種類あるが、弓全体に籐を等間隔で巻いた重籐(しげとう)がもっとも愛好された。
なお、日本の弓は長寸だから、扱いにくい(特に馬上では)という意見もある。しかし、弓把から下は短寸であり、長寸なのは上である。
だから、長寸だから扱いにくいという意見は当たらないし、本当に扱いにくかったならば、日本の弓が時代を問わずに長寸であるはずがない。
そもそもこうした問題は訓練次第でどうにでもなる問題であろう。 長寸だから扱いにくいという意見は、弓の構造をよく理解していない、しかも現在感覚に基づく机上の空論に等しいといえる。 |