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最終更新日:2024年2月1日

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大都市行財政制度に関する特別委員会行政調査報告(平成30年・2018年)

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行政調査

行政調査

日程

平成30年(2018年)1月25日(木曜)~1月26日(金曜)

調査項目

  • (1)大都市における税制のあり方に関する分科会について(東京都)
  • (2)宿泊税について(東京都)
  • (3)ふるさと回帰支援センターについて(NPO法人ふるさと回帰支援センター)
  • (4)三遠南信地域連携ビジョン推進会議について(浜松市)
  • (5)区地域協議会について(浜松市)

委員長所見

大都市における税制のあり方に関する分科会について(東京都)

東京都行政調査の様子「大都市における税制のあり方に関する分科会」は、大都市における資産課税のあり方、主として固定資産税制の調査研究を通じて、東京における税負担のあり方や都市づくりとの関係等について検討するため、都知事の諮問機関である東京都税制調査会に設置された小委員会の分科会として、都税調本会に委員として所属する学識経験者の一部により構成される。
当分科会の平成29年(2017年)8月の報告書では、東京都特別区に居住する納税者(持家世帯)の担税力等の実態を明らかにするとともに、特別区と多摩地域(八王子市、府中市、町田市、日野市、多摩市)、横浜市、大阪市の持家世帯を対象にアンケートを実施し、今後の固定資産税及び固定資産税と課税標準を同じくし、固定資産税と同様、東京都特別区内において都が課税・徴収している都市計画税(以下、固定資産税及び都市計画税の両税を総称する場合において「固定資産税等」という。)の負担のあり方を分析、検証している。
固定資産税等については、東京都特別区のいずれの地域においても65歳以上の世代の負担率が最も高くなる一方、年収が高くなるほど負担率が低下する傾向がある。また、「土地・家屋とも所有する世帯」のサンプル数は、年齢が上がるほど増加していることから、若年層にとっては東京都特別区に土地・家屋を所有することは容易でないことが推察できる。
東京都特別区と他の調査対象都市を比較すると、東京都特別区の固定資産税等の額は、当該区域の土地の価格を反映し、大阪市の30歳代以下を除き4地域のなかで最も高くなっている。
税額及び負担率の傾向を年収階級別で見た場合について、全調査対象地域において、年収が高くなるほど税額は上昇するが、負担率が下がっており、収入に対する逆進性がある。
ライフステージにおける固定資産税等の負担傾向を見ると、30歳代以下および40歳代の多くの子育て世代は、住宅ローンを抱えながら、税・社会保険料等の経費や子どもの教育費等の負担もあり、厳しい家計状況にあるといえる。高齢者層は、資産を保有するものの、無職世帯が4分の3もあるという状況の中、一般的にこの層の世帯収入が年齢と共に減少傾向である一方で、その他の公的負担額が高額であることを考えると、税負担が大きいと感じる住民の割合も高まる可能性がある。
以上のように、固定資産税等の負担のあり方については、税制全体や社会保険料、その他の各ライフステージにおける負担も踏まえつつ、住宅政策や低所得者対策をはじめとした社会保障の問題も含め、多角的に分析することが必要だと考察している。
続いて、東京オリンピック・パラリンピック開催を控えて、先のオリンピック開催地であるロンドンとの比較がなされている。報告書では、ロンドン大会後、渡英旅行客数が増加し、世界都市ランキングでもロンドンの順位は上昇しており、都市力が向上したと評価している。東京においても、大会を契機に将来を見据えた都市づくりや都市力向上のための施策に積極的に取り組むことが、安定した都財政運営のために重要であるとしている。
次に、固定資産税等の諸課題について、報告書では、原則として全国一律に適用される特例措置は見直されるべきであり、地域特性に応じた選択を可能とするべきとの見解が出されている。
固定資産税は、地方の財政基盤を強化し、地方自治の充実・発展に資するため、市町村の独立財源として創設されたものであり、都市計画税は、都市計画事業等に要する費用に充てるための目的税である。今回の調査を通じて、神戸市としても、東京の当分科会の報告の中で提言されているように、それぞれの自治体ごとの課題解決に向けて、課税自主権を活用しやすくするような地方税および地方交付税制度の構築と、その弾力的な運用について検討していく意義があると感じた。全国一律の税制がもたらす影響は地域によって差をうむため、慎重な議論を重ねていかなければならないと考える。東京都特別区は、他の大都市と比べて税収も財政状況も異なるものの、今後の神戸市の税制度を考えるにあたり、大変参考となった。

宿泊税について(東京都)

東京都行政調査の様子宿泊税は、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用にあてることを目的として、平成12年(2000年)の地方分権一括法施行(地方税法改正)を受けて導入された法定外目的税である。同年発足した都税制調査会の答申で、ホテル税が提案されたことから具体的な検討が始まった。
この時期に東京都では、観光をレクリエーションから「産業」として位置付け、観光産業の育成と、東京が観光客を誘致できる魅力的な観光都市となるために「東京都観光産業振興プラン」を定め、その推進のために安定的財源が必要と考えるようになった。当税は、目的を観光振興と限って課税する税である。
納税義務者は、都内のホテルまたは旅館の宿泊者であるが、宿泊料金が一人一泊10,000円未満の宿泊は課税免除としており、平成29年(2017年)3月現在619施設が対象となっている。税率は、宿泊料金が1人一泊10,000円~15,000円未満は100円、15,000円以上は200円であり、ホテルまたは旅館が徴収し、東京都に納税する仕組みである。税収規模は平成29年度当初予算額約24億円であり、年々増加してきているが、観光施策に必要な歳出額は当初の予想をはるかに上回り、現在では200億円以上にのぼっているため、不足分を一般財源から補填している状況である。
税収の具体的な使途としては、外国人旅行者に向けたSNSなどの情報発信、受入環境整備、観光資源開発などが主となっている。当税の導入にあたっては、観光のために宿泊客にのみ課税するのはおかしい、趣旨は理解するが課税は迷惑、などという反対意見もあったが、協議を重ねて理解を求め、都民や納税者にはインターネットやリーフレットにより周知し、実施に至った。
当税は、施行後5年ごとに、条例の施行状況、社会経済情勢の推移等を勘案して、課税対象や税率の課税方式のあり方等について検討を加えているが、都税として十分に浸透し、都の財源として確立されているので、現在の方式は適当であると判断されている。
国では一人1,000円の出国税を検討している。神戸市では入湯税を設けているが、入湯税は市町村税であり、東京都では課税していない。このような状況の中、東京都、大阪府に続いて京都市でも導入が決定された宿泊税については、あくまで観光振興を目的として徴収していく目的税であることも含め、神戸市として導入の可能性についてどう考えるのか、今後慎重に検討していく必要があると感じた。

ふるさと回帰支援センターについて(NPO法人ふるさと回帰支援センター)

NPO法人ふるさと回帰支援センター視察の様子団塊世代のセカンドライフとしての田舎暮らしだけではなく、若者にもふるさと暮らしの希望が増えてきているという時代の要請を受け、2002年11月、全国の消費者団体、労働組合、農林漁業団体、経営団体、民間団体、有志が一同に集い、当センターが設立された。現在、東京、大阪にオフィスがあり、その運営以外にも、和歌山県から「和歌山ふるさと定住センター運営業務」を、沖縄県から「沖縄県移住定住促進事業(JV方式)」を受託している。
東京の有楽町駅前の東京交通会館8階に設置された「ふるさと暮らし情報センター」には、昨年愛知県が参画したことで、東京都と大阪府を除く45道府県等がブース設置またはパネル展示を行っている。ブースの設置には年間約389万円(月額約32万円)、パネル展示は年間約130万円(月額約11万円)の経費が必要で、更にブースの相談員の人件費が必要となる。専属相談員と相談窓口を設置している自治体が33県1市、専属相談員のみを配置している自治体が6府県あり、専属相談員や窓口を置かず展示パネル・資料展示コーナーのみの設置としている自治体は6県24市町村1団体である。
リーマンショック以降、センターへの問い合わせ件数も増加してきており、昨年の実績では各自治体が主催する「ふるさと暮らしセミナー」が485件開催され、セミナーへの参加や電話問い合わせ等を含めると、当センターを3万人以上が利用している計算となる。2005年から毎年開催している「ふるさと回帰フェア」は、昨年の2017年に第13回を実施した。この年のフェアでは全国47都道府県が350ブースを出展し、移住定住を希望する約2万人が参加した。この数字は、IターンやJターンも含めた「ふるさと」への回帰の傾向が年々強まっていることを表していると考えられる。
神戸市でも、「LIVE LOVE KOBE」など新しい移住推進施策をスタートしているが、ターゲットを絞り、広く神戸の魅力を発信することで、一人でも多くの人に情報が届くように工夫していくことが大切である。兵庫県・神戸市とも、当センターには展示パネルと資料展示をしているだけであり、専門相談員を配していないため、関西圏担当の相談員が対応してくれている。これは、兵庫県独自で別の場所に「カムバック兵庫東京センター」を設けているためだと考えられるが、首都圏からの移住希望者に神戸市の魅力を知ってもらうためには、全国の自治体が集まっている当センターでのアピールも大変重要であると考える。悠々自適の生活を求める人が減り、就労を伴った移住を希望する人が増えている傾向を考えると、自然に恵まれ、会社勤めも可能な地方都市である神戸は大変強みを持っていると言える。首都・東京に位置し、全国の自治体が集まる当センターに、兵庫県・神戸市も是非専門相談員を配し、大いにアピールし、多くの人材を呼び込んでいくべきだと考える。

三遠南信地域連携ビジョン推進会議(SENA)について(浜松市)

浜松市視察の様子三遠南信地域とは、愛知県東部・東三川地域の「三」、静岡県西部・遠州地域の「遠」、長野県南部・南信州地域の「南信」をいい、3県の県境にまたがる地域であり、人口約247万人、総面積約7,588平方メートルというほぼ一つの県に相当するほどの規模を有する。各地域は歴史的に大変繋がりが強く、文化・経済・信仰など様々な分野において、行政の境界を越えて独自の生活文化圏を形成してきた。この圏域を一体と捉え、自立性の高い地域づくりを目指して、地域住民、大学、経済界、行政などが参加して、2008年度に「三遠南信地域連携ビジョン」を策定した。
このビジョンでは、政策の基本方針に1.中部圏の中核となる地域基盤の形成、2.持続発展的な産業集積の形成、3.塩の道エコミュージアムの形成、4.中山間地域を活かす流域モデルの形成、5.広域連携による安全・安心な地域の形成、を掲げ、おおむね10年を目標期間と定めている。様々な取り組みをしてきたが、現在は三遠南信自動車道の建設促進と、リニア中央新幹線の早期開業を軸に、圏域の結束を強めることを目指しているように感じられた。
目標期間の10年が過ぎ、第2次ビジョン策定が進められているが、歴史的にも文化的にも繋がりの強い地域が広域連携をしながら、独自の地域の強みを作り上げ、さらに強化していくことは、今後の地方創生に大変重要な取り組みであると感じた。今後の交通網整備と併せて、どのようにこの地域が新しい発展をしていくのか、注視していきたい。

区地域協議会について(浜松市)

浜松市視察の様子浜松市は、2005年に浜松市、浜北市、天竜市、舞阪町、雄踏町、細江町、引佐町、三ケ日町、春野町、佐久間町、水窪町、龍山村の12市町村が合併して誕生し、2007年の政令指定都市移行に伴い設置された7行政区に、地方自治法に基づきそれぞれ「区協議会」を設置した。
区協議会は、地域からの意見を集約・調整・発信しながら地域課題についてその解決策を検討する。また、市が提案する課題に対し、市民としての立場から意見を述べる役割を担っている。委員は、区協議会が選定した公共的団体等が推薦する構成員、公募委員、区協議会が推薦する学識経験者などから構成され、任期は2年であり、再任が1回限り認められる。
地域を支える人々や団体の参画により、地域住民の意見を行政運営に反映させ、地域における市民協働を推進することで、住民自治の充実を発揮することを目的とし、月に1回程度開催される会議では、公共施設の方針や、区の予算、市の制度改正などについて議論がなされている。
政令指定都市の中では、浜松市と新潟市のみが「区協議会」を設置している。合併を経てきた歴史的経緯を踏まえて、地域によって異なる住民の意向をどのように市政に反映させていくかを考えた場合に、浜松市は当協議会を地域における市民協働の要の役割を担うものとして位置付けている。しかし、現在、同市では、行政区再編も含めた区制度の検討を進めているということを考えると、合区等によって1行政区の所管地域が広くなると、地域による課題をうまく吸い上げ続けていけるのか、懸念を感じるところもある。地方自治法では、地方公共団体の機関のうち、議会は議決機関とされており、首長から、条例、予算、決算等の提案を受けて、議決、認定、同意、政策提言などをするという位置づけであるが、浜松市は「区協議会」で行政と住民が情報を共有し協働を進めたうえで、行政が議会への提案を行っているということであり、「区協議会」と「議会」との関係について、私としては少し理解しにくい部分があった。
神戸市には「区民まちづくり会議」があるが、浜松市の「区協議会」と随分違っているように思う。市民と協働して市政を推進していくために、どのような形で市民の意見を広く聞いていくのか、この点についてはどの自治体も重要な課題と認識しているところと思うが、当該自治体における歴史的経緯等を踏まえたうえで、市政に市民の意見を反映していくためにはどのような形をとるのが良いのか、神戸市としても、これまでの経緯とともにまちの将来像等を見据えながら、新しい発想等も取り入れて、柔軟に考えていかなければならないと感じた。

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