神戸市民病院機構における医療事故の公表に関する指針に該当する事案(医療側に過失が認められるレベルA以上の事案等)は以下のとおりです。
なお、公表に当たっては患者さん及びご家族が特定・識別されないよう、個人情報の保護に最大限の配慮を行いつつ、事案の内容について一定の範囲で公表を行っています。
神戸市民病院機構における医療事故の公表に関する指針は、神戸市民病院機構のホームページをご覧ください。
<公表に関する指針>
URL:http://www.kcho.jp/media/pdf/disclosure/anzen/300701shishin.pdf
1.事象レベル別件数(令和4年1月~3月)
レベル |
件数 |
態様 |
A |
2 |
予期しなかった、もしくは予期していたものを上回る濃厚な処置や治療の必要性が生じた場合 |
B |
0 |
予期しなかった、もしくは予期していたものを上回る永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害を伴う場合 |
C |
0 |
事故が死因となる場合(原疾患の自然経過によるものを除く) |
2.公表事案①
(1)レベル:A
(2)発生年月:令和3年11月
(3)発生場所:神戸市立医療センター中央市民病院
(4)発生状況と経緯:
- 自宅の階段から転落し、救急搬送された患者(70代女性)。右膝挫創部を縫合し、分泌液や血液等を排出するペンローズドレーン(以下:ドレーン)(注1)を2本挿入したが、本来必要な処置であるドレーンの固定を行っていなかった。
- 退院時に担当医が診察した際、ドレーン抜去の事実がカルテ等で確認できなかったため、体内にドレーンが迷入した可能性があると判断。局所麻酔により縫合部を抜糸し、挫創内を観察したが見つからず、ドレーンは体外へ抜けたものと判断し、転院となった。
- 令和4年1月、他院受診時に右膝痛も訴えたため、レントゲン撮影にて異物を確認した。右膝を切開したところ、長さ5cm程度のドレーン残留を認め摘出したとの連絡が、同院よりあった。
(5)対応・処置:
- 診療科部長及び担当医師から患者本人・家族に対し経緯を説明、謝罪を行った。
(6)今後の対策:
- 必要な処置であるドレーンの固定を確実に行うとともに、ドレーンの抜去が不明な場合は遺残の有無をレントゲン撮影にて確認することを徹底する。
- 手術後など何らかの原因で、体内にたまった体液、血液、浸出液、膿などを体外に排泄する管
3.公表事案②
(1)レベル:A
(2)発生年月:令和4年3月
(3)発生場所:神戸市立西神戸医療センター
(4)発生状況と経緯:
- 分娩後6週未満の患者より、避妊目的で子宮内に装着する避妊装置であるミレーナ(注1)を挿入したいとの希望があった。通常では、分娩後6週以上経過し子宮の回復を待ってからの使用が望ましいとされているため、上級医に確認したうえで実施し、その後、経腟超音波(注2)で挿入されていることを確認した。
- 数日後、ミレーナの位置確認で受診した際、子宮内にミレーナがないことが判明し、脱落の可能性が高いとの結論に至った。
(5)対応・処置:
- 翌日、緊急でレントゲン撮影し、腹腔内に迷入していることが確認されたため、同日に緊急手術で抜去した。経過は良好で数日後退院となった。
(6)今後の対策:
- 分娩後早期(6週未満)の患者に対するミレーナ挿入は可能な限り避ける。
- 上級医に対して、経験の浅い医師が処置する場合には同様の事案が起こり得ることを想定しこれまで以上の細やかな指導を行うように徹底する。
(注1)T字の形をしていて大きさは32mmくらいの柔らかいプラスチックでできている。黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出することで、子宮の内膜に作用し、避妊と過多月経・月経困難症といった生理に関する症状緩和の2つの効果がある。
(注2)膣からプローブと呼ばれる細い棒を入れて、超音波をあてて画像化し、子宮や卵巣を観察する。