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更新日:2019年11月20日

山と海のあいだ「第7回 ある日の塩屋散歩」

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神戸に移住する前から、心を掴まれていた神戸の港町、塩屋。

神戸に度々訪れていた頃、どこかで手にしたフリーペーパーがある。
空気感ある表紙が印象的な「塩屋本」は、塩屋の町の営みや商店街の人々を紹介する小冊子。町の温度がそのまま詰め込まれているようで、東京の自宅に持ち帰っては度々眺めていた。

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初めて手にしたのは「塩屋本2015」

その冊子を手がけた彼女は、今は私の数少ない神戸の友人であり仕事仲間。
秋晴れのある日、彼女と待ち合わせて塩屋散策へ。
待ち合わせ場所に向かいながら、色々と思い起こしてみる。

当時、塩屋本に出会ったのと同じ頃に、ローカルを紹介するコロカルというWEBメディア に「グレアムさんの塩屋日記」というマンガが連載されていた。塩屋在住のアーティスト グレアムさんの神戸・塩屋暮らしがくすっと笑えて、ほっこりするストーリーとともにゆるやかなイラストとともに描かれていて、毎月わくわくしながら更新を楽しみにしていたものだ。

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ある時、塩屋に住みたいと思うまでに妄想が膨らみ「塩屋を探索しよう!」と意気揚々と初訪問したことがある。しかし、待っていたのは、迷路のような急な坂道と車の通れないほどの細道。平地に住んできた私には、実際に歩いてみると想像以上で驚いた。それでも、探索して感じたのは、この町を内包するノスタルジックな空気。微かな記憶にある昭和の時代、幼い頃に住んでいた町とも重なる懐かしさ。まるでタイムスリップしたみたいに。

塩屋にある洋館 旧グッゲンハイム邸では、類い稀な国内外のアーティストがライブをしていることを知り、神戸を訪れる度にスケジュールチェックをしては、足を運んだ。
やがて当時働いていた雑誌「TURNS」での連載で、管理人の森本アリさんを取材させていただく機会に恵まれた。独特な存在感を放つ洋館のストーリーと、特別な場でありながら公民館のようでありたい、と住民が身近に感じられる距離感。塩屋の町全体が開かれ、つながり、コミュニティが育まれている。「変わること」と「守ること」を軸として続けてきたアリさんと住民の人たちとの心地よい関係。そんな背景を教えていただいて、すっかりまた塩屋に惹かれ、しまいには塩屋の物件まで案内していただいた。

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そうそう、話を戻すと彼女と合流してお昼過ぎからの塩屋散歩。
腹ごしらえにワンダカレーへ。いつもどの種類にしようか迷ってしまうのだけれど、今日はチーズカレーにサラダ付き。

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細い商店街に戻って、田仲豆腐店で店主の田仲さんと彼女とおしゃべり。店前に並ぶ三角形の厚揚げや油揚げ、厚揚げスナックはどれも美味しそうで、夕食の献立が浮かんでくる。はつらつと元気で親しみやすい田仲さんにとって塩屋の人は皆家族で、田仲さんはみんなのお父さん的なんだ、ということがわかるエピソードをたくさん聞かせてもらう。ついつい長話しに花を咲かせて、いつの間にかびっくりするくらいのおまけを入れてくれている。

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旧グッゲンハイム邸は何かの撮影中で、線路を渡り門のそばで覗いてから、海沿いの2号線を歩き歩道橋を渡り海へ。どこまでも穏やかな海では海苔の養殖が始まっていた。
ふたたび町に戻り、川沿いの坂を登る。すれちがう人たちの多くが彼女と顔見知りで、老若男女問わず挨拶を交わしている。いいなあ、いい光景。

そして、老舗洋菓子店「ペリーヌ」へ。小柄でゆっくりとした足取りでご高齢の店主が「いらっしゃいませ」と静かに出て来られた。ショーケースを眺めながら彼女がこっそり「下の段がおじいさん、上の段が息子さんが作ってるんだよ」と耳打ちしてくれる。迷わず下の段からチーズケーキをテイクアウト。お会計もゆっくり。お店を出て、さらに坂を登っていく。

歩いたことのない坂。幅の狭い階段。曲がりくねった細道の真下に民家の屋根。
歩道に奇想天外なアート。自作の家づくり。
歩くたびに、「どきっ」「えっ」と思うものに遭遇する。
そして立地的にも一軒家が多い家々を通ると、ここに息づく生活と日常を感じる。

細い坂を登りに登って、振り返ると、段々に家々が連なる谷間から海が見えた。
こんな海が見える家だったら、一日中眺めてしまいそう。そんな妄想は幸福感に包まれる。

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出会う人やお話を聞く塩屋在住の人たちは、逞しく愉快でユニークな生き方・暮らし方している人がたくさんいる。店もバラエティ豊か。昔ながらのお店もあるし、蕎麦教室&パン屋さん、夜だけ開くレコード屋さん、ピザ屋さん、チョコレート屋さんなどなど。

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このめくるめく不思議な町を、ここで暮らす彼女と歩くのがいい。
彼女を通して、見える景色、聞こえてくる音が変わってくる。

それから彼女の自宅にお邪魔して、ケーキをほおばりながら、いつまでも続けられるたわいもない会話をして過ごす。お家も落ち着くし、外の生活音もなんだか安心する。すっかり居心地が良く、あわよくば夕食となってしまいそうなところを、じゃあねとお暇して、今度は細い道を下って駅へと向かった。

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この町のちょうどよいサイズ感。
塩屋に息づく、日常と、風景。
人々の行き交い。ときどき猫。連なる家々と、海。
地域の人たちによって守られてきたものに思いを馳せながら
あたたかな気持ちとともに家路に着く。

また2号線を車で通ったら、首が痛くなるくらいに助手席から右を向いて旧グッゲンハイム邸を眺めるだろう。車道からは、2階のほんのちょっとしか見えない。でも目を凝らして。「あ〜、今日はウェディングか」「今日はイベントやってそう」なんて想像するのも、また私の秘かな塩屋の楽しみ方だから。

文と写真 岩崎雅美

2年前から神戸に暮らし、ときどき横浜・東京との二拠点生活を送る主婦。 編集したり書いたり、人やコトやモノをつなぐ仕事をしています。

プロジェクトディレクター/地域コーディネーター/編集者/ライター
東京では、CSR・SDGs関連のコンサルティング・レポート制作会社の株式会社クレアンにて企画編集を担当。その後、株式会社umariにて地域や分野を横断する0→1を作るさまざまなプロジェクトデザインに携わる。雑誌「TURNS」の企画・地域コーディネーター・編集を担当後、神戸に移住。移住後はフリーランスで活動中。

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