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更新日:2019年11月1日

ごろごろ、神戸2「第20回 須磨海岸でゴミを拾うこと」

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ゴミ収集車

夏の間にすっかり世話になった須磨海岸も海水浴シーズンが過ぎれば人の出入りは少なくなり、代わりにと言ってはなんだが捨てられたり流れてきたりしたゴミや枯れ木が目立つようになった。昔の自分なら「だからどうしたの?」という風で、こういう場所に散らばるゴミもまた景観に味を添えてよし、なんて事を言っていたかもしれない。しかし今は、子供を遊ばせる時にゴミがあると危なくて困るな…出来るだけ危険なゴミはなくなってほしい…なんて思っているのだから、我ながら身勝手なものだ。

道端に置かれた飲み残しの缶や煙草の吸い殻、以前にはたいして気にもとめなかったものが、小さな子供を歩かせるにあたってはすべてが危険な障害物になってしまう。そんな中で日曜日にこの場所でゴミ拾いイベント(須磨海岸クリーンアップ作戦)が行われる事を知ってしまっては「そうですか。皆さんがんばってくださいね」と他人事のように見過ごすわけにもいかず、海岸に行く事にした。私もついに、浜辺のゴミを拾う側の大人になってしまった……と自嘲しながらも集合場所に行くとすでにけっこうな人たちが集まっており、受け付けではゴミ袋、軍手、トングまで貸してもらえる。収集車も何台か待機しておりそこに袋ごと持っていけば良いだけというから、至れり尽くせりである。

ごみ拾いイベントの様子1

ごみ拾いイベントの様子2

それなりに日差しはあるがしょせんは9月の下旬。8月までとはまったく凶暴さが違い、やさしい暑さだ。
どこかのアイドルグループだろうか、少女たちが季節外れの色とりどりな水着姿で、踊りながら何かの撮影をしている。腰をかがめてゴミをつまむ私の世界とは決して交わりそうにない見た目華やかな彼女たちもまた、おそらくは自分たちの持ち場で泥くさくがんばっていて、私は私でこうやって、現在の自分の持ち場でがんばっている。若者が数人しゃがみこんで、しらけた様子でこちらを見ている。そのしらけた視線はかつての私が持っていたものだ。「おれは何をやってんねんやろか…」そんな事を自問しながら、地面にしゃがみこんで砂浜の漂流物を観察する。枯れ木や海藻、割れた貝殻。ゴミの種類としては煙草のフィルターや発泡スチロールのかけらが多く、私はあくまでも子供が平和に歩けるようにとそればかり考えていたので、鋭利なプラスチックやガラス片を中心に探した。

漂流物1

漂流物2

十代の頃のひねくれた自分なら、拾っている人間のうしろからゴミをわざわざ捨てていくような態度を見せたかもしれない。燠火(おきび)のような自意識がうずく。せっせとゴミを分別し袋に入れながら、めんどくささがどこか楽しさにも変化してきて、それは自分の部屋をシコシコと、きれいにしていく感覚にも似ていた。そしてそのような感覚を、いつのまにか須磨海岸に持っている自分にとまどいを覚える。

私は、気持ちを波立たせないように、フラットな状態でいようと努力していた。ゴミを拾っていると、誰がこんなものを捨てたんだろう、なんて事を考えてしまいがちだが、それは巡り巡って、かつての私が捨てたのだと思えばよい。ゴミ拾いをする事で「捨てる側」と「拾う側」、あるいは「拾う側」と「拾わない側」の隔絶(かくぜつ)を、自らの意識の中に生みたくないと思った。せっかく海岸をきれいにする活動に参加して得たものが、同じ人間に対する負の感情であっては意味がない。

ごみ拾いをする子ども

空き缶、プルタブ、煙草の吸い殻、おにぎりを包んでいたビニール、パンの袋。ここにはさまざまな物が散らばっている。私は自分の子供に対して清廉潔白な気持ちで「ゴミを捨てるな」と教えられるだろうか。その自信は今もってないのだが、どこかの誰かが捨てたものは、こうやってどこかの誰かが拾い片付けている。そんな街の有りように関しては、出来れば自分が拾う側の大人としてさりげなく伝えたいような気もしている。

じっと地面を見つめて作業を続けているせいでなんやかんやと考えたりはしたが、私はあくまでも気楽な趣味の問題として、いまゴミを拾いたいから拾っているだけのことだ。子供はトングで松ぼっくりをつまんでは、それを放り投げて遊んでいる。アイドルグループの少女たちは今もまだ同じ場所で踊り続けていて、誰かは知らんが売れたらええなと、私は見ず知らずの彼女たちをいつのまにか応援していた。

踊りの練習をする少女

文と写真 平民金子

写真を撮ったり文章を書いたりしています。1975年生。東京か大阪かメキシコにいましたが、現在は神戸在住。

神戸市広報課より

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