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更新日:2020年3月19日

『文化財建造物の登録』(国登録有形文化財)

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記者資料提供(令和2年3月17日)
教育委員会事務局文化財課

『文化財建造物の登録』(国登録有形文化財)~国の文化審議会の答申~

国の文化審議会【会長:佐藤 信(まこと)】は、令和2年3月19日(木曜日)開催の同審議会文化財分科会の審議・議決を経て、新たに133件の建造物を登録するよう文部科学大臣に答申を行いました。今回の答申を受けて、官報告示を経て新たに国登録有形文化財になる神戸市内の文化財建造物は下記の1件です。

1.登録される文化財建造物の概要(神戸市分)1件

旧坂家住宅主屋(きゅうさかけじゅうたくおもや)

旧坂家住宅は、宇治川沿いの山の斜面地を切り拓いて形成された高台に立地しています。(位置図参照)

今回、国登録有形文化財に指定された「旧坂家住宅主屋」は、平屋建ての洋館と2階建ての和館が並んで建てられた和洋館並置型(わようかんへいちがた)の住宅です。

和洋館並置型の造りは、明治時代から大正時代にかけて邸宅建築に多く見られ、当時、流行した和洋折衷様式(わようせっちゅうようしき)を反映しています。

なお、旧坂家住宅主屋は、「野々村家住宅(旧坂家住宅)」として、令和元年に「景観形成重要建築物等」に指定されています。

旧坂家住宅主屋・位置図

旧坂家住宅主屋・位置図(地図提供:esri)

北東側外観 旧坂家住宅主屋・北東側外観

南西側外観 旧坂家住宅主屋・南西側外観

旧坂家住宅主屋・平面図

 旧坂家住宅主屋・平面図

 旧坂家住宅主屋・詳細図

 旧坂家住宅主屋・詳細図

【概要】

所在地:神戸市中央区再度筋町1番地6

員 数:1棟

登録基準:「一 国土の歴史的景観に寄与しているもの」

所有者:個人所有(旧神戸地方裁判所長宿舎)

建設年代:1922(大正11)年/2011(平成23)年改修

 2階座敷天井裏から見つかった幣串(へいぐし)(※注1)の墨書には、「建築主 坂湛氏」、「大正拾壹年(じゅういちねん)貮月(にがつ)廿五日(にじゅうごにち)」、「請負人 秋山岩造」と書かれています。

建築主:坂 湛(さか たとう)

坂湛は、1856(安政2)生まれで、川崎造船所の技師から、のちに取締役を務めました。

 1950(昭和25)年に10月に最高裁判所の所有となり、長らく神戸地方裁判所長宿舎として利用されてきましたが、2011(平成23)年5月に個人所有となっています。

設計者:不明

 設計者については、御幣には記載がないため、不明ですが、設楽貞雄(しだらさだお)(※注2)または設楽建築工務所の設計による建築物に意匠(いしょう:デザインのこと)上の共通点が多く見られます。

施工者:秋山岩造は、現在の兵庫区大開通で店を構えていた土木建築請負業者です。

建築面積:253.41平方メートル

延床面積:362.39平方メートル(洋館:81.57平方メートル、和館:280.82平方メートル)

構造、形式

 平屋建ての洋館と2階建ての和館が並んで建てられた和洋館並置型の住宅です。

1.洋館:煉瓦造(れんがぞう)+鉄筋コンクリート造の平屋建て

屋根は、陸屋根(ろくやね)(※注3)形式で、鉄筋コンクリート造です。

玄関部分は、切妻(きりづま)形式(※注4)で、屋根は銅板葺き(どうばんぶき)です。

屋根の形状は、照り起り屋根(てりむくりやね)(※注5)といわれる形状をしています。

洋館の外壁は、腰壁(こしかべ)(窓台より下側の部分)には、鉄平石(てっぺいせき)(安山岩の一種) を貼り付けています。その上部は、白色を基調とした小口タイル貼りで仕上げています。

玄関の外壁は、腰壁には、洋館と同じく、鉄平石を貼り付けています。その上部は、ドイツ壁仕上げ(※注6)となっています。

玄関ポーチ部分の屋根を支えるテーパー(※注7)を付けた柱を二連に配置して、柱の下部を相互に貫(ぬき)(※注8)で連結しています。また、その柱の上部には、斗栱組(ときょうぐみ)(※注9)を設けています。

 ・玄関北側には、台形に張り出したベイ・ウィンドウ(※注10)が設けられています。

洋館の玄関扉や外部および内部建具の欄間(らんま)には、多くのステンドグラスがはめ込まれています。そのデザインモチーフは、多岐にわたり、その図柄は、船、魚、カモメ、波などの海に関する風景をはじめ、草花や果実などを素材にした模様、また、直線と曲線、渦巻き等を組み合わせた幾何学模様(きかがくもよう)などがあります。

製作者は、その作風から明治末期から昭和中期にかけて多くの作品を残した木内真太郎(きうちしんたろう)(※注11)、あるいは木内の師匠である宇野澤辰雄(うのさわたつお)(※注12)の流れを汲んだ高い技術を持つ職人の可能性が高いと考えられています。

 ・洋館南側の廊下に面した開口部は、両側に大きな引き違い窓を設置しており、引き違い窓の下部の地窓(じまど)(※13)には、鉄製格子が取り付けられています。

2.和館:木造の2階建て

屋根は、入母屋(いりもや)形式(※注14)の瓦葺きです。

外壁は、板張りで、漆喰塗(しっくいぬり)、吹付塗装です。

旧坂家住宅主屋・玄関内部 旧坂家住宅主屋・玄関内部

旧坂家住宅主屋・書斎 旧坂家住宅主屋・書斎

3.その他

主屋の南西側には、庭園が造られていますが、西側の和風庭園から東側の洋風庭園へと展開しています。庭園及び建物周辺には、灯篭(とうろう)や自然石を配置するなど和洋折衷の様相を示しています。

また、敷地周辺に鉄製柵を巡らされています。この鉄製柵には、渦巻き模様や直線・曲線など、幾何学模様を組み合わせた意匠が特徴となっています。

なお、この建造物は、個人所有のため、現在は非公開となっています。

4.まとめ

旧坂家住宅主屋は、緑豊かな景色を背景として、神戸の市街地を眺望できる山麓住宅地に大正時代後期に建てられた住宅建築です。

瓦葺きの入母屋形式の2階建ての和館と、白色を基調とした外観の平屋建てが繋ぎ合わされた和洋館並置型の邸宅です。

細部においても、伝統的な和風の工法と、アールヌーヴォー様式(※注15)やセセッション様式(※注16)に通じる斬新な洋風の新様式を組み合わせた意匠(デザイン)となっています。また、庭園も西側から東側にかけて、和風庭園から洋風庭園に移行していくなど、各所において、和洋折衷の様式を見られます。

さらに、建具にも、ステンドグラスや象嵌細工(ぞうがんさいく)を施すなど、贅を尽くした意匠が特徴的です。

瀟洒(しょうしゃ:すっきりとしてあかぬけしたさま)な佇まい(たたずまい)は、政財界人が風光明媚な邸宅を構え、優雅な暮らしを営んでいた当時の歴史を物語っています。

【注】

注1:幣串は、厄除けなどのお祓いに使う串で、麻布や紙などをはさんだ細長い木のことです。御幣(ごへい)または、幣束(へいそく)ともいいます。

注2:設楽貞雄【1864(元治元)~1943(昭和18)年】は、初代の通天閣(現在は二代目)をはじめ、新開地の初代聚楽館(しゅうらくかん)・神戸タワー、鷹取工場、旧西尾家住宅、(神戸市須磨区)、など、明治末期から大正時代にかけて、商業施設や鉄道施設、邸宅など幅広く、近代建築の設計を行った建築家です。

注3:陸屋根とは、水平または屋根勾配が極めて小さい屋根のことで、鉄筋コンクリート造の建築物に多く見られます。平屋根(ひらやね)ということもあります。

注4:切妻形式とは、棟(むね)の前後二方へ葺き下ろした屋根の作りのことです。書物を半ば開いた形の屋根で、真屋(まや)ということもあります。

注5:照り起り屋根とは、屋根の軒先部分では、照り(反り)屋根で、上方では、逆に、起り屋根(むくりやね)の形状をした屋根のことです。照り(反り)屋根とは、凹形に下向きに反っている屋根のことです。起り屋根とは、凸形に膨らんで(上向きに反って)いる屋根のことです。通常は、寺の建築物をはじめ、神輿(みこし)や灯篭(とうろう)の屋根に見られますが、個人の邸宅に使用されることは珍しいことです。

注6:ドイツ壁仕上げとは、モルタル掃き付け仕上げのことで、大正末期から昭和初期に流行した外壁の仕上げ方法で、モルタルを「ささら」と呼ばれる、竹を細かく割って束(たば)にした道具を使って、外壁に掃き付けるようにつけて仕上げるものです。

注7:テーパー(英語:taper)細長い構造物(柱など)が、先細りまたは、末広がりになっている状態を表すもので、このような設計にすることを「テーパーをつける」と言っています。

注8:貫とは、建物などで、柱を貫いて相互につなぐ横木のことです。

注9:斗栱組とは、柱の上部で軒を支える部材のことで、斗栱(ときょう)または、斗組(とぐみ、ますぐみ)ともいうこともあります。方形の斗(と)と肘木(ひじき)によって構成され、両者を交互に組み合わせて、前方に持ち送り、深い軒を広く支えます。

注10:ベイ・ウィンドウとは、張り出し窓、または出窓のことで、長方形または多角形の平面形で、壁面から突き出した窓のことです。

注11:木内真太郎【1880(明治13)~1968(昭和43)年】は、宇野澤辰雄の直弟子としてステンドグラスの製作に携わってきました。大阪を拠点に製作を続けたため、特に関西に多くの作品が残っています。舞子ホテル洋館をはじめ、神戸オリエンタルホテルや旧西尾家住宅などのステンドグラスを製作しました。

注12:宇野澤辰雄【1867(慶応3)~1911(明治44)年】は、1890(明治23)年に日本で、初めて、ステンドグラスの製作工場を設立し、ステンドグラス製作の祖と言われています。

注13:地窓とは、床面に接した低い位置にある窓ことです。

注14:入母屋形式とは、屋根の上部が切妻のように、二方へ葺き下ろし、下部が四注造(しちゅうづくり)のように四方へ葺き下ろす形式のことです。

注15:アールヌーヴォー様式とは、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパ各地に流行した芸術様式のことです。

注16:セセッション様式とは、1890年代のオーストリア・ウイーンではじまった、過去の建築様式からの分離を主張し、新しい時代に相応しい創造をめざした新芸術運動で、平面性を強調し、直線を多用する単純な抽象的構成に美を見出すことに特徴があります。

2.文化財登録制度の概要

近年の国土開発、土地開発の進展、生活様式の変化等により、社会的評価を受ける間もなく、消滅の危機にさらされている多種多様かつ大量の近代の建造物を中心とする文化財建造物を後世に幅広く継承していくため、届出制と指導・助言・勧告を基本とする緩やかな保護措置を講じる制度で、従来の指定制度(重要なものを厳選し、許可制等の強い規制と手厚い保護を行うもの)を補完する制度です。

登録有形文化財(建造物)は、50年を経過した歴史的建造物のうち、一定の評価を得たものを文化財として登録し、届出制という緩やかな規制を通じて保存が図られ、活用が促進されています。

3.神戸市内の国登録有形文化財(建造物)の件数

今回答申を受けた登録する1件を加えると、神戸市内にある国登録有形文化財(建造物)の件数は104件となります。

 

 

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