第11話 たきつぼの底のふしぎなごてん

最終更新日
2009年3月25日

平清盛の子・重盛が布引のたきを見るためにやって来た時のことです。 ごうごうと流れ落ちるたきを見ながら、重盛はお供の武士たちに言いました。

「本当にりっぱなたきじゃ。たきつぼも底無しのように深げじゃが、だれかこの底がどうなっているのか確かめてくるという勇ましい者はおらぬか」

お供の武士たちが顔を見合わせてしりごみしている中で、一人名のりでたのは難波経俊といううでじまんの武士でした。 経俊はたきつぼの岸から、身をひるがえして、一気に水に飛びこみました。それからどのくらいたったことでしょう。 「勢いこんでもぐって行ったが、だいじょうぶだろうか。・・・

おおっ、水の中からアワがたくさん上ってくるぞ。 今に帰ってくるぞ」やがてぬき手を切って浮かび上がってきた経俊は、おそろしそうにふるえながら語りました。

「十五メートルももぐると水の底は大きな空どうになっていて、その下にふしぎなごてんがあったぞ。 水の中からごてんの屋根におりると、こしから上は水の中、足は空中にあるのじゃ。

水の中のイラスト屋根から庭に飛び降りて見ると、庭には金銀サンゴの木や花が、それは美しかった。 ごてんの中から機織りのおとが聞こえるので入って行ったのじゃ。と、ある部屋の中に身のたけ二メートル半もの大女がおって 『よくも来たな。お前なんぞの来る所ではないわ』とさけびおった。おそろしくて屋根に登り、上空の水に飛びこんで、にげて来たのじゃ」

こう言っているうちに、たきの方からわき上がった黒雲が経俊の体を包みこみ、ドドーンと大きな物音がしました。 雲が晴れると、くだけ散った経俊の体のわきに血のついた刀と、気味の悪いネコの足のような物が落ちていました。