第10話 役の行者と布引のたき

最終更新日
2009年3月25日

今からおよそ千三百年も昔のことです。布引のたきに一人の修行者がやって来ました。里人の質問に、行者は答えて言いました。

「わしは、役の行者じゃ。これまで箕面のたきではげしい行をしておったが、それを終え、これからはこの布引のたきで、 たきに打たれたり大ごまをたいたりして『ゆか大法』という一段ときびしい行をするつもりじゃ」役の行者が行を始めて二十一日目のことでした。

たきの落ちる谷間一帯に何とも言えないいい香りがただよい、ふしぎな光がさし始め、とつ然、たきの中から馬頭観音が姿を現わされました。

たきの中から馬頭観音が姿を現わされたイラスト「行者よ、よくきびしい行にたえられた。まもなく、あなたは大きな力を得られるであろう」行者は少しの間、ボウッとしていました。 が、ふと気がつくと、行者のまわりにいろいろなまものが現われてきて、しきりに行をさまたげたり、もっと楽なほかのことをするように行者をさそいかけたりしました。

しかし、行者の意思は強く、前よりはげしく一心にたきに打たれていました。 するとやがてたきの水の中から、おそろしい顔かたちをした不動明王が現われて、行者の周囲に集まってきていたもののけを追いはらってくれました。 時にはたきに住む弁天さまが現われて、行者を守ってくれました。

ついに修行を終えて、何でも自由自在になるふしぎな力を身につけた役の行者は、修行中に現われた馬頭観音や不動明王の像をきざんで、たきの東の谷にまつりました。 これが滝勝寺の起こりだということです。