神戸市-KOBE-


はじめてのNPO法人〜やさしく学ぶ設立の基礎〜

NPO法人の設立を考えている方を対象に、特定非営利活動法人神戸オレンジの会の理事長・藤本圭光氏より、法人化されるまでの過程や法人の運営を事例としてお話いただきました。

概要

【日時】平成30年2月10日(土曜)
【会場】特定非営利活動法人神戸オレンジの会 事務所
【講師】坪田 卓巳氏(特定非営利活動法人しゃらく)
【ゲスト】藤本 圭光氏(特定非営利活動法人神戸オレンジの会)

お話の内容

法人設立の経緯

ひきこもりの子をもつ親の家族会として活動を始めた。法人化のきっかけは、事務所の賃貸借契約を結ぶ際に法人格が必要であったことが大きい。法人名の「オレンジ」は日本語で「みかん」⇒「未完の大器」という考えが由来だと初代理事長から聞いている。

課題を特定する

セミナーの様子活動を始めた平成11年当時は、「ひきこもり」という言葉は一般的ではなかった。部屋から出てこない我が子に親は戸惑い、どこへ相談に行っても「本人と話をしないことにはわからない」と断られていた。そのような相談が増えてきたことを受け、明石市保健所の保健師の力添えもあり、親同士が集まる場を設けることができた。親同士が、我が子の状態が何なのかわからないまま、自由に話をする場とした。そこで、「悩んでいるのは自分たちだけではない」という当事者意識が芽生え、親同士で課題を共有することができた。その後、親たちは平成10年に出版された精神科医の斎藤環氏の「社会的ひきこもり〜終わらない思春期〜」という著書を知り、全国にひきこもりが存在することに気づき、学びを深めていった。それから、ひきこもりは一般にも知られるようになった。

課題の解決とは何か

ひきこもりの解決は「その人に合った形での社会参加」という明確なものだが、実現は難しい場合が多い。就労を例に挙げると、レジ打ちのスキルがないからコンビニで働くことができないのではなく、人と繋がることが苦手だから働くことができないのである。そこでまずは、人と繋がることを第一歩とし、本人たちの居場所の活動を始めることとした。

課題解決に向けた活動を始める

〜親向け 親の会活動〜
 当法人は、ひきこもりの子をもつ親を対象とする場を2つ設けている。1つは「親の会」と名づけ、ひきこもりの子の親同士が自由に気持ちを分かち合う場とした。もう1つは「親向けの勉強会」として、課題を解決するために親子のコミュニケーション方法などを学ぶ場とした。また、内閣府の調査では30代以下のひきこもりは54万人という結果があるが、40代以上のひきこもりも多く、まだどの支援機関とも繋がっていない人もいるため、実際にはもっと多いだろうと考える。そのように顕在化していないひきこもりの子の親に向けて、講演会を行っている。今まで汲み取られてこなかったニーズを実現するために、新聞社等に協力してもらい広報を行うこともしている。

〜本人向け 居場所活動〜
 ひきこもっている本人を対象として、いつ来てもらっても、いつ帰ってもらっても良い「居場所」を設けている。ひきこもっている人には、社会に対する信頼が薄れている人が多い。例えば、私たちは挨拶をすれば相手に返してもらえることを当然と思っているが、ひきこもっている人はそうではない。返事をしてもらえなかったらどうしようという不安を抱えている。そのため居場所に来てくれた本人には、挨拶は最低限の社会的常識であるというように課してはいない。職員からは挨拶をするが、本人にはしてみようと思ったときにしてもらえれば良い。その積み重ねで、信頼が生まれていく。社会的常識を身につけてもらうのは、その後からで良い。

〜親・本人向け 相談活動〜
 上記2つの支援に加え、精神科医による医療相談や心理カウンセラーによるカウンセリング、精神保健福祉士による個別相談など、専門的アドバイスも行っている。

行政の支援を受ける

活動を始めた当初は、神戸市にはひきこもりの支援をする部署がなく、法的根拠もなかった。根気強く支援をお願いした結果、現在の市との関係があると思っている。現在は市からの委託で、ひきこもりの相談窓口である「ひきこもり地域支援センター・ラポール」の運営を行っている。

神戸オレンジの会は、ひきこもっている人とその家族の応援団

最終的には、本人が行動をしないと課題解決には至らない。どの機関がどういった支援をしているのか共に学びながら、当法人はこれからも解決のためのお手伝いをしていきたい。

参加者からの質疑応答

セミナーの様子Q.行政に支援をお願いしに行く際に、どの部署の窓口を尋ねればよいか。
A.一概には言えないが、「私たちの活動内容について、神戸市ではどこが担当しているか教えてください」と、まず市役所の窓口を尋ねることから始められたらと考える。

Q.NPO法人を設立する際には、専用の窓口をもつべきか。自宅以外に事務所を構えるべきか。
A.事業による。当法人は事業の特性上、自宅とは別に事務所を構えている。

Q.法人運営にかかる費用はどのように捻出しているか。
A.親の会の会費が最も大きな収益で、その使途は当法人が自由に決めることができる。居場所の運営には、神戸市からの補助金が入っている。補助金は出来高払いのため月毎に上下する上、必ず赤字になる。そのため、親の会の会費から居場所の運営費を補てんする形になる。法人によって考え方は様々であるため、しっかりとルールを作り、それに則った運用をすることが大切である。

Q.イベントがない日には、居場所では何をしているのか。
A.それぞれしたいことをしてもらっている。テレビゲームをしたり、マージャンをしたり、本を読んだり等。「人狼ゲーム」というテーブルトークゲームに興じるグループもある。不思議なことに、あまり人と話すことが得意でない人も、ゲーム上の役割が与えられると話せるようになることがある。

Q.1人の人が居場所に通う期間はどのくらいか。
A.2年間通っていれば、解決に向けた何かしらの行動が見られる。例えば、他の人から、病院で処方された薬を服用するとよく眠れたという話を聞くと、自分も通院してみようとする等。

Q.親が親の会に参加せずに、本人が居場所を利用することはできるのか。その場合、本人が負担する料金はあるのか。
A.できる。最初は親の会に参加している親に連れられて、本人が居場所に通い始めるが、そのうちに本人だけが通うようになる場合がある。居場所だけの利用なら、神戸市民であれば無料である。ただ、先述のように親の会の会費から居場所の運営費の補てんを行っているので、継続的な居場所の運営のためにも親の会に入会して頂ければ有り難い。