神戸市-KOBE-


阪神・淡路大震災 消防職員手記(「雪」編集部)

地震発生!そのとき市民は・・・<阪神・淡路大震災における市民行動調査の結果>(1995年5月号掲載・倉岡 和彦)

はじめに

 平成7年1月17日午前5時46分、私たちの愛する街神戸を襲った兵庫県南部地震は、一瞬のうちにこの街で共に生きた3千8百余名の生命を、家を、仕事を多くの市民から奪い去るなど、市民の心と暮らしを破壊した。
 今、神戸はこの苦難を乗り越え、市民・事業者・市が「協動のまちづくり」によって、21世紀に向けての豊かで快適な新しい神戸の復興を目指そうとしている。
 この調査は、得られたデータから市民防災意識の啓発活動、防災訓練の充実、コミュニティの防災活動の活性化など、神戸が取り組もうとする「災害に強い都市」づくりに生かそうとするものである。
 一方調査は、余震の恐怖に怯えながらも懸命に生きる市民や、親族や友人等、かけがえのない人たちを失った悲しみに耐え生きる市民に震災時の辛く、悲しい体験を思い起こしていただくことでもあった。ご協力いただいた皆さんに心から感謝申しあげたい。

調査結果の概要

(1)調査期間
 平成7年2月20日〜2月28日
(2)調査区域
 神戸市内全域にわたり調査
(3)調査対象者
 神戸市内に居住する男女840人
(4)調査項目
 1.地震発生の予想
 2.地震を想定した訓練への参加の有無
 3.地震発生時の感想
 4.日常の地震への備えの有無
 5.地震への備えの内容
 6.実際に役立った備えの内容
 7.避難場所を知っていたか
 8.地震発生時どうしていたか
 9.地震発生時の初期行動
 10.けがをした家族の有無
 11.けがをした原因
 12.近所での生き埋め者の有無
 13.生き埋め者の救出活動の有無
 14.だれが救出にあたったか
 15.近所での火災発生の有無
 16.消火活動の有無
 17.だれが消火にあたったか
 18.地域の防災訓練への参加意向
 19.地域の防災活動のリーダーには?
 20.震災後必要だった情報
 21.用意しておけばよかったと思うもの(こと)
(5)調査員
 京都産業大学『新社会ボランティアサークル』のボランティア(延べ49人)
(6)調査方法
 調査員が避難所等を訪問し、面接聴取


調査対象者の構成【単位:人,%】
 合計/平均居住区
東灘中央兵庫長田須磨垂水西
母数8401416112777332171274116
性別男性33.930.532.830.742.912.135.932.353.731.3
女性66.169.567.269.357.187.964.167.746.368.7
年代10代10.65.021.317.310.40.07.411.012.212.5
20代7.49.26.66.311.70.05.15.519.512.5
30代9.69.98.29.47.83.010.69.414.612.5
40代13.819.18.211.010.424.211.516.57.331.3
50代20.417.014.821.326.045.520.321.39.86.2
60〜64歳12.014.98.211.811.712.114.37.912.26.3
65〜69歳8.79.91.66.37.815.210.18.79.812.4
70代14.412.127.911.814.20.016.118.19.86.3
80歳以上3.12.93.24.80.00.04.61.64.80.0
世帯構成単身17.314.223.018.915.66.122.111.817.118.8
夫婦 22.618.414.818.926.027.326.329.99.818.8
子と同居・親と同居57.461.062.261.455.863.649.355.970.756.3
その他2.76.40.00.82.63.02.32.42.46.1
身体障害肢体障害(上肢)2.63.51.61.61.30.04.13.10.00.0
肢体障害(下肢)3.62.13.32.41.33.06.52.47.30.0
視覚障害0.50.00.00.82.60.00.00.80.00.0
聴覚障害0.50.00.00.80.00.01.40.00.00.0
言語障害0.10.00.00.00.00.00.00.02.40.0 
内部障害0.60.00.00.81.30.01.40.00.00.0
重複の障害0.30.00.00.81.3 0.00.50.00.00.0
障害なし91.894.495.192.892.297.086.193.790.30.0
家屋被災家屋倒壊等45.475.959.031.524.70.065.428.32.40.0
家屋焼失5.81.41.60.813.00.015.79.40.00.0
瓦、壁に相当の損傷22.114.221.326.844.221.213.424.439.012.5
さほど損害を受けず26.783.518.140.918.178.85.537.958.687.5

問1 神戸で地震が起こると思っていたか(単一回答)
 ほとんど(94.3%)の人が神戸で地震が起こると思っていなかったと応えており、地震が起こるかも知れないと考えていた人はわずか5.7%であった。年代別に見ても、すべての年代にわたって地震が起こると思っていた人は10%に達していない。(表−1)

(表−1)地震発生の予想【単位:人、%】
 合計/平均年代
 10代20代30代40代50代60〜64歳65〜69歳70代80歳以上
母数8408962811161711017312126 
地震予想思っていた5.74.54.83.77.87.09.92.73.33.8
思わなかった94.395.595.296.392.293.090.197.396.796.2

問2 地震を想定した訓練への参加経験は(単一回答)
訓練への参加経験のある人は7.9%にすぎなかった。男女別では、男性の10.5%に対して女性の6.5%とかなり男女差があった。参加経験者の比率が最も高かったのは、30歳代の男性(22.2%)で、逆に最も低かったのは65〜69歳の女性で調査対象者43人中、参加経験者は1人もいなかった。(表−2)


(表−2)地震を想定した訓練への参加経験【単位:人、%】
 合計/平均性別・年代
10代20代30代40代50代60〜64歳65〜69歳70代80歳以上合計
母数8403158194318633779521194061304346751214285555
訓練参加経験ある7.919.413.85.39.322.27.95.48.99.64.212.51.610.00.06.56.78.37.110.56.5
ない89.680.686.294.788.477.887.391.988.690.493.382.593.490.095.393.589.383.392.988.190.5
無回答2.50.00.00.02.30.04.82.72.50.02.55.05.00.04.70.04.08.40.01.43.0

問3 地震発生時どう感じたか(単一回答)
 「生命の危機を感じた」人が全愛の約3割(29.4%)にのぼっており、「かなり不安で恐ろしかった」を加えると56.5%と、過半数の人が相当の恐怖に陥れられたことが分かる。(図−1)

  • (図−1)地震発生時どう感じたか

問4 地震への備えをしていたか(単一回答)
 備えをしていた人は約2割(19.8%)と少なく、20歳代では9.7%と1割にも満たなかった。


問5 万一のために準備していたもの(こと)(複数回答)
 地震への備えをしていた人の74.7%が「懐中電灯」を用意しており、以下「ラジオ」42.8%、「非常食」15.7%、「医薬品」10.8%、「飲料水」10.2%などとなっている。
 なお、この震災で多くの市民が転倒した家具でけがをしたり、死亡したりしているが、「家具など倒れないよう固定」していた人は、わずか9人で全体の1.1%であった。


問6 準備していたもの(こと)のうち役立ったもの(こと)(複数回答)
 「ラジオ」を準備していた人の67.6%が役に立ったと考え、比率では最も高くなっており、以下「飲料水」58.8%、「懐中電灯」58.1%、「医薬品」及び「棚等の上に重い物を置かない」がいずれも50.0%で続いている。(図−2)

  • (図−2)実際に役立った備え

問7 近くの避難所を知っていたか(単一回答)
 全体の63.0%の人が近くの避難場所を知っていたと答えている。しかし、年代別に見ると、60〜64歳で71.3%であったものが、65〜69歳では57.5%、70歳代では55.3%、80歳以上では53.8%と、高齢になるにしたがい知っていた人の割合が低くなっている。(表−3)


(表−3)近くの避難所を知っていたか【単位:人、%】
 合計/平均年代
10代20代30代40代50代60〜64歳65〜69歳70代80歳以上
母数8408962811161711017312126
はい63.068.564.565.461.263.771.357.555.353.8
いいえ37.031.535.534.638.836.328.742.544.646.2

問8 地震発生まで眠っていたか(単一回答)
 約7割(71.0%)の人が、地震発生まで眠っていたと答えている。


問9 地震発生時どのような行動をとったか(単一回答)
 「何もできなかった」32.1%にものぼっており、以下「衣類や布団をかぶった」26.4%、「あわてて外へ逃げた」15.0%、そして「ガスの元栓をしめた」11.0%と続いている。(図−3)

  • (図−3)地震発生時の初期行動

問10 けがをした家族はいるか(単一回答)
 全体の約2割(20.4%)の171人がけがをしている。


問11 けがをした原因は(単一回答)
 家具等の転倒が原因でけがをした人が最も多く、けがの原因の約半数(48.5%)を占めており、以下「棚等からの落下物が当たった」(15.8%)、「落下したガラスが当たった」(10.5%)、「逃げようとしたとき転倒した」(8.8%)の順になっている。


問12 近所で倒壊家屋の下敷きになった者はいるか(単一回答)
 全体の45.6%もの人が、近所で生き埋めになった人がいたと答えている。


問13 救出活動に当たった者はいるか(単一回答)
 設問12で「はい」と答えた人の76.5%が救出活動を確認している。


問14 救出活動に当たったのは誰か(複数回答)
 設問13で救出活動に当たった者を確認できたとした人の60.5%が「近所の者」の活躍を見ている。次いで「家族」(18.9%)が続いている。


問15 近所で火災が発生したか(単一回答)
 全体の27.6%が、近所で火災が発生したと答えている。


問16 消火活動に当たった者はいるか(単一回答)
 設問15で「はい」と答えた人の30.6%が消火活動を確認している。


問17 消火活動に当たったのは誰か(複数回答)
 設問16で消火活動に当たった者を確認できたとした人の53.5%が「近所の者」が消火活動を行っているのを確認しており、次に、「消防隊」18.3%、「家族」(5.6%)が続いている。


問18 地域の防災訓練に積極的に参加するか(単一回答)
 積極的に参加すると答えた人が全体の約7割(68.1%)に達している。特に、20歳代から50歳代にかけては参加意識が高く、30歳代で84.0%となっている。男女の意識差を見ると、女性の参加意識が少し高く、男性64.6%に対し女性は69.9%であった。(表−4)


(表−4)地域の防災訓練への参加意志【単位:人、%】
 合計/平均性別・年代
10代20代30代40代50代60〜64歳65〜69歳70代80歳以上合計
母数8403158194318633779521194061304346751214285555
ある68.145.265.557.981.472.287.381.177.269.279.870.055.760.058.163.050.741.750.064.669.9
ない24.545.232.836.818.616.77.913.519.015.410.922.536.123.334.934.837.350.042.926.323.6
無回答7.49.61.75.30.011.14.85.43.815.49.37.58.216.77.02.212.08.37.19.16.5

問19 誰に地域の防災リーダーになってほしいか(複数回答)
 「自治会役員」が最も多く、全体の34.8%の人がリーダーとして期待している。以下「消防団員」が26.4%、神戸市職員が2.5%などとなっている。(図−4)

  • (図−4)地域防災リーダーとして期待する

問20 地震発生後どのような情報が必要だったか(複数回答)
 「余震情報」39.5%、「ライフライン」34.3%、「安否情報」28.6%、「交通情報」24.6%、「火災情報」23.8%と続いている。(図−5)

  • (図−5)地震発生後に必要な情報

問21 こうしておけばよかった、これを用意しておけばよかったと思うもの(こと)(複数回答)
 「飲料水」を確保しておけばよかったとする人が全体の16.7%と最も多く、以下「懐中電灯」14.4%、「非常食」12.7%、「ラジオ」8.0%などが続いている。(表−5)


(表−5)用意しておけばよかったと思うもの(こと)
ラジオ8.0
懐中電灯14.4
非常食12.7
飲料水16.7
医薬品1.0
家具など倒れないよう固定4.2
棚等の上に重たい物を置かない2.5
ヘルメット0.5
貴重品などをひとまとめにしておく6.3
その他21.4
用意などしても約立たない規模の地震5.0
無回答38.0

おわりに

 この調査結果は多くのことを教えてくれている。これらは市民だけでなく、市民への防災の働きかけを行う行政にとっても貴重な教訓でもある。また、今後地域の防災訓練に積極的に参加すると答えた人が約7割(68.1%)にものぼっている。より多くの市民が参加できる防災訓練の実施、市民と事業者が主体となった災害に強いコミュニティづくりの支援など、市民の熱意に応えていかなければならない。

 最後になりましたが、公共交通機関が途絶するなど、厳しい条件の中、調査に回ってくれたボランティア諸君にお礼申し上げる。