神戸市-KOBE-


転活用で甦る公共建築

転活用で蘇る公共建築

最終更新日
2016年3月10日

今日の日本の建築物は、建設されてから、何らかの事情により解体されてしまうまでの期間が、欧米に比べ非常に短いことが指摘されています。建築物が短寿命であることは、地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出や大量の建築廃材の発生につながり、地球環境全体に与える影響も少なくありません。

いま私たちは、地球環境の保全をはかり、持続可能な社会を実現していくことを緊急の課題として認識しています。 建築物は、たとえ良好な状態を維持し物理的寿命が残っていても、施設としての社会的寿命が早く到来する場合があります。しかし、この場合でも構造のしっかりしている建築物ならば、構造物はそのままで新しい用途に変更し引き続き活用していく道もあります。

ここで紹介する建築物は、当初の役割は終えましたが、新たな用途を与えられ甦った公共建築物の一例です。これらの建築物が、価値ある社会資産として、市民のみなさんに愛され、世代を超えて使い続けられることを願ってやみません。


1 海外移住と文化の交流センター

 「旧神戸移住センター」は、見知らぬ海外へと向かう移住者へのオリエンテーションと、渡航前の保護を目的として、1928(昭和3)年「国立移民収容所」として開設された施設であり、1971(昭和46)年(当時は「神戸移住センター」)に閉鎖されるまで、移住関連の施設として機能してきました。その後、神戸移住センター閉鎖後は看護学校、神戸海洋気象台、CAP(NPO法人 芸術と計画会議)による活動の舞台ともなってきました。
 こうした中、ブラジルの日系人団体から、国内で唯一現存する移住関連施設である「旧神戸移住センター」の整備・保存を望む声が上がり、市として同センターの保存・再整備を行うことになりました。そして、移民船「笠戸丸」が神戸港を出航して100年目にあたる2008(平成20)年に工事着手し、2009(平成21)年6月に「神戸市立海外移住と文化の交流センター」として再整備・開館しました。

2 神戸文学館

 「神戸文学館」は、1904(明治37)年に関西学院の礼拝堂(ブランチ・メモリアル・チャペル)として、英国人ウィグノールの設計にて建設されました。礼拝堂は当時の学部長S.H.ウエンライトが若き日に過ごしたミズーリ州シェルビーの町の教会堂を模したものといわれています。その後様々な用途に使われ、一時期は図書館としても利用されていました。
 1992(平成4)年には大規模な構造補強を行い、創設当事に存在していた尖塔とともに内部空間もできる限り復元し、市民ギャラリーとして再生させました。その後、2006(平成18)年に現在の「神戸文学館」へと用途を変更しました。なお、当施設は2000(平成12)年3月の都市景観条例に基づく、景観形成重要建築物に指定され、2008(平成20)年3月には国の登録有形文化財に登録されました。

3 神戸ゆかりの美術館

 「神戸ゆかりの美術館」は神戸ファッション美術館の一部を改装し、2007(平成19)年にオープンしました。神戸ファッション美術館は、ファッションをテーマにした日本初の美術館として、1997(平成9)年、六甲アイランドに開館しました。外観は、UFOをイメージさせる斬新なデザインで、内部は4層で延床面積 17,000m2という大規模な施設です。
 「神戸ゆかりの美術館」では、神戸を拠点に活躍し、神戸の芸術文化の発展を担うとともに、日本の美術界にも大きな足跡を残した、神戸ゆかりの芸術家たちの作品を紹介しています。

4 生涯学習支援センター「コミスタ・こうべ」

  「コミスタ・こうべ」は、統合に伴い閉校となった小学校に誕生した神戸市生涯学習支援センターの愛称です。1997(平成9)年に神戸市中央区内の4校(若菜小学校、二宮小学校、吾妻小学校、小野柄小学校)を統合し、中央小学校が誕生しました。「コミスタ・こうべ」は、旧吾妻小学校のかつての校舎を市民の生涯学習に係る活動の支援と、障害者の福祉の増進を図るための施設として利用しています。

5 北野工房のまち

 「北野工房のまち」は、1998(平成10)年に、統合に伴い閉校となった小学校に誕生しました。1931(昭和6)年築のレトロな旧北野小学校の東校舎を、「大勢の卒業生の思い出がいっぱい詰まっている校舎の面影を極力残す事」をコンセプトに、地場産業・観光産業振興のため整備・活用を図ったものです。
 職人(マイスター)の仕事ぶり(技)を見学し、モノづくりを体験して商品を購入してもらう「神戸ブランドに出遭える体験型工房」をコンセプトとして施設づくりをおこないました。今後、「神戸ブランド」の創造者たちが、新しい「KOBE北野工房ブランド」を創って見せ(魅せ)る場所として、また、全国に発信する拠点として定着していくことが大いに期待されています。

6 水の科学博物館

 「水の科学博物館」は、かつての急速ろ過池上屋から博物館として1989(平成元)年3月、生まれ変わりました。神戸水道発祥の地、奥平野浄水場にある急速ろ過池上屋は、建築家河合浩蔵の設計による近代洋風建築で、日本建築学会からも高い評価を受けていました。新施設の完成に伴い、役割を終えた当施設の活用法を検討した結果、博物館として再生することになりました。工事は、御影石と化粧煉瓦によるシンプルで重厚な外観をそのまま残し、内部のろ過池を全て撤去して新たに2階の床を造るという難工事になりました。なお、当施設は神戸市建築文化賞第6回建築再生賞を受賞しています。
 また、当施設は1998(平成10)年9月には国の登録有形文化財に登録され、2000(平成12)年3月には都市景観条例に基づく景観形成重要建築物に指定されています。

7 神戸市立博物館

 「神戸市立博物館」は、銀行を博物館として改造し、再生利用を図ったものです。前身である旧横浜正金銀行神戸支店(のちの東京銀行神戸支店)は、1935(昭和10)年に建設されました。1980(昭和55)年、東京銀行が移転する際、神戸市が建物を譲り受けることをきっかけに、博物館としてオープンしました。旧建物は桜井小太郎氏の設計による様式建築で、風格のあるたたずまいは、旧居留地の街並の中で重要な景観を形づくっていました。よって、歴史的文化的価値の高い建築物の保存再生という設計方針に基づき、旧建物の外観を残し内部を改造、さらに増築を行っています。
 また、1998(平成10)年9月には国の登録有形文化財に登録され、2000(平成12)年3月には都市景観条例に基づく景観形成重要建築物に指定されています。

8 神戸ハーバーランド煉瓦倉庫

 「神戸ハーバーランド煉瓦倉庫」は、1897(明治30)年頃に建築され、現存する希少な煉瓦倉庫(旧 東京倉庫)です。イギリス製の煉瓦を使用し、イギリス積みで造られた外壁は、神戸港の発展を支えた建物として当時の姿を今に伝えています。
 1990(平成2)年には、煉瓦倉庫の外壁等を現地保存し、屋根及び内部を改装し、レストランとして再生されました。建物はハーバーランドの水際にあり、周辺の水面や神戸港を借景に赤煉瓦の見せるコントラストが目に鮮やかな景観を創出しています。 
 また、2007(平成19)年11月には、都市景観条例に基づく景観形成重要建築物に指定されています。

関連リンク

 平成20年度に実施した「神戸建築データバンク」の調査結果の概要を掲載しています。