神戸市-KOBE-


舞子ビラ事業見直しについての経過まとめ

最終更新日
2013年10月9日

舞子ビラ1 神戸市では行財政改善の取り組みの中で、外郭団体の見直しを進めて参りましたが、その中で「舞子ビラ事業」について公募売却により平成25年4月1日をもって民間事業者に施設および事業を円滑に承継しました。それまでの事業のあり方についての議論、公募売却に至る経緯および結果等についてまとめました。

1.事業の沿革

舞子ビラ2 舞子ビラ事業の歴史は、明治27年に有栖川宮熾仁親王の別邸が建築されたことから始まり、大正6年に住友家へ払い下げて迎賓館として使用され、終戦後GHQに接収されたが、接収解除後、昭和25年にホテルトウキョウへ売却、その後、昭和34年にオリエンタルホテルが買収しオリエンタルホテル舞子ビラとしての利用を経て、昭和41年に土地・建物を神戸市が買い取り、昭和45年に市民サービスの一環として「市民いこいの家舞子ビラ」と命名して開業したことに始まります。

 開業後、昭和56年に現別館「緑風館」を増築し、平成7年には当時の本館部分についても建替え工事着工を計画していましたが、同年の阪神淡路大震災の発生により、この計画は一旦、延期されました。

 震災からの復興が進む中、復興プロジェクトの一環として、平成10年の明石海峡大橋完成に合わせて本館部分を建替えることを再び検討しました。しかしながら、震災後の厳しい財政状況の中で市債の発行により建替えを行なうことが困難であったことから、土地および建物についての所有権を神戸市が留保しつつ、民間の資金調達・事業経営ノウハウを活用しながら本館の建替えおよび舞子ビラ事業の経営を継続させる手法として、土地信託方式を導入することを決定しました。

 事業コンペの結果、当時のさくら信託銀行を代表とするグループ(その後の金融再編により、現在の三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行で構成する信託団)の提案を採用し、
(1)この信託団が神戸市から舞子ビラの土地の信託を受け(土地所有権を30年の信託期間中、信託団に移転)、融資銀行団(現在の三井住友銀行、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、日本政策投資銀行)より総額15,860百万円の借入を行なって本館の建替えおよび別館の増改築を行なう。
(2)一方、舞子ビラとしての事業運営については、神戸市の第三セクターとして当時神戸タワーサイドホテルの運営(神戸タワーサイドホテルの運営については平成14年3月に撤退。)を行なっていた神戸協同興業株式会社を神戸マリンホテルズ株式会社(以下、KMH社)に社名変更し、信託団より土地および新・増改築された建物全体を賃借して運営する。
(3)信託団はその賃料収入から融資銀行団への借入返済および信託報酬を差し引いた上で、神戸市に配当を行なう。
というスキームで信託団による舞子ビラ事業を平成8年よりスタートしました。

<神戸市による取得から土地信託事業開始までの年譜>

舞子ビラ3昭和41年  神戸市が取得。
昭和45年  「市民いこいの家舞子ビラ」として開業。
昭和56年  現別館「緑風館」を増築。
平成7年   阪神淡路大震災。
平成8年   土地信託方式による舞子ビラ事業の開始。
平成10年  舞子ビラの本館建替えおよび別館増改築の竣工。KMH社による「シーサイドホテル舞子ビラ神戸」としての営業開始。

2.事業見直しの経緯

 土地信託方式により、KMH社が土地・建物を賃借して、月額103百万円、年額1,237百万円(何れも消費税別途)の賃料を信託団に支払うことで新たにスタートした舞子ビラ事業ですが、収支実績が当初計画通りには振るわず、平成12年にKMH社と信託団との間で賃料減額の合意が成されたものの、それ以降もKMH社の業績不振・財務状況の悪化が進み、平成13年には同社への新規銀行融資が打ち切られる事態となりました。

 その後も神戸市・信託団・融資銀行団との間で協議を続け、平成15年には神戸市が信託団の信託借入金について損失補償すること、併せてKMH社に18億円の融資(その後、公募前の時点では26億円に増加)を行なうことなどを条件として、信託期間を45年間に延長し、併せてKMH社と信託団との賃貸借契約についても期間を同様に延長することにより、賃料をさらに減額する旨の契約条件変更を行ないました。

 KMH社では人員整理等による経費節減努力に加え、民間ホテル出身者を総支配人として迎え、その後代表取締役社長に据えるなどして経営改善に努めましたが、平成19年のリーマンショック、平成21年の新型インフルエンザ流行による市場環境悪化や、ハウスウェディング施設の台頭による婚礼事業における競争激化などの外的要因により業績は低迷し、平成22年にはKMH社のさらなる賃料減額についての覚書を神戸市と信託団との間で締結しました。

 そのような状況を受け、神戸市外郭団体経営検討委員会等の審議・提言、調査等を踏まえた上、KMH社を含む舞子ビラ事業のあり方を根本的に検討することを目的として、平成23年に「舞子ビラ事業あり方検討委員会」を設置し、弁護士、公認会計士を含む有識者・学識経験者によりさまざまな角度から検討いただいた結果、平成24年2月に提言を受けました。

<外郭団体経営検討委員会の提言>

 神戸市外郭団体経営検討委員会は、今後のあり方・方向性について、統廃合や市関与の見直し、事務移管等の観点から見直しを検討するべきであると提言され、舞子ビラについては、次の個別提言を受けました。
(1)市民いこいの家の機能と明石海峡大橋などの観光資源を活かしたツーリズムの西の拠点という両方の機能を果たそうとしているが、結果として十分な営業利益をあげられていない。
(2)なぜ第三セクターによるホテル経営が必要か、市民にとってわかりにくい面があり、今後どこまで行政が関与するのか明確にする必要がある。
(3)そもそも土地信託制度という事業スキームがホテル事業には適していない。
 外郭団体の再編や事業の再構築を検討するにあたっては、専門的かつ多角的な検討が必要であり、専門家による委員会を設置して具体的な解決策を導き出すよう求める。

<舞子ビラ事業あり方検討委員会の提言>

 上記提言を受けて、具体的な解決策を早期に導き出すため、法律・会計分野等の専門家からなる「舞子ビラ事業あり方検討委員会」を設置し、舞子ビラ事業の今後のあり方・方向性について、市民の将来負担・リスクを最小化させることを目的として、ゼロベースで検討していただき、土地信託事業やKMH社の経営について、事業性、採算性、政策性などの観点から多角的に検討していただいた結果、下記の提言をいただいた。
(1)神戸市民の将来負担・リスクを最小限にするために信託スキームを早急に解消することが必要不可欠と判断する。
(2)信託スキームを解消するには、信託団が抱えている借入金の処理が必要であるが、安曇野菜園判決や青野運動公苑判決により地方自治体が絡む事業の債務弁済について地方自治体の弁済義務が明らかにされていることから、将来に負担を残さず問題を先送りにしないために必要な措置として、借入金弁済のための財源支出(借入契約の内容により損失補償および費用補償に分かれる)を神戸市に求める。
(3)信託スキームを解消した上で、舞子ビラ事業そのものについては、神戸市の将来負担・リスクの最小化を図ることを大原則とする観点から、一定期間のホテル事業存続等の条件を付与して売却処分する選択肢を優先しつつ、賃貸借方式も選択肢に含めて幅広く民間からの事業提案を募ることを求める。
 少なくとも新しい事業形態に移行するまでの間は、第三セクターの神戸マリンホテルズ社が運営を継続する必然性はある。

 この「舞子ビラ事業あり方検討委員会」の提言を受けて、平成24年3月には、平成24年度予算・関連議案に対する神戸市議会の附帯決議として、「債務整理に至った原因と責任を明確に認識し、今後市民の財産保全と市民負担の極小化を図ることはもとより、整理スキームとして新たに組成される組織は、単に債務整理の受皿として運営するのではなく、積極的に事業の展開を図り、市民への利益還元と市民サービスの充実に努めることを強く求める。」との決議が成され、特に神戸市民に親しまれてきた舞子ビラ事業については、神戸市民に密着したホテルとしての営業継続と従業員の雇用継続が強く求められました。

土地信託事業スキーム図

<土地信託方式による「シーサイドホテル舞子ビラ神戸」としての営業開始から公募売却に至るまでの経緯>

平成12年 KMH社と信託団との間での賃料減額合意。

平成13年 KMH社への新規銀行融資打ち切り。

平成15年 神戸市が信託団の信託借入金について損失補償すること、併せてKMH社に18億円の融資を行なうことなどを条件として、信託期間を45年間に延長、併せてKMH社と信託団との賃貸借契約についても期間を同様に延長、賃料も再減額する旨の契約条件変更で合意。

平成23年 「外郭団体経営検討委員会」提言。

平成24年 「舞子ビラ事業あり方検討委員会」提言。
       神戸市議会附帯決議。

3.公募実施の経緯

 「舞子ビラ事業あり方検討委員会」および神戸市議会の附帯決議を受け、信託スキームを解消することを前提として、舞子ビラ事業の施設およびホテル事業の承継についての民間事業者の関心の度合い、および公募条件についての提案・意見を求めるべく、平成24年4月〜6月にかけて全国のホテル事業者、ホテル投資家など53社に対しヒアリングを行ないました。ヒアリングの結果、全般的には舞子ビラ事業について関心をもつ事業者は多数ではないものの、複数はあるという感触が得られました。また、承継のスキームとしては、土地・建物の完全取得を望む事業者が多く、土地・建物賃貸となると関心をもつ事業者が絞られるほか、賃料についても業績に応じた変動賃料を望む傾向が強くなるなど、条件面での民間事業者の意向を幅広く収集することができました。
 このヒアリング結果を慎重に分析・検討した上で、「舞子ビラ事業あり方検討委員会」より提言された神戸市の将来負担・リスクの最小化を図ること、および神戸市議会において附帯決議が成されたホテルとしての営業継続と従業員の雇用継続、という二つの条件を両立させる方策として、土地は定期借地契約により条件付き賃貸とすることで将来的にマンション等ホテル事業以外の用途へ転用されることを回避し、建物は売却することにより建物・設備の将来的な維持更新投資についての費用負担リスクを最少化すること、を基本軸として公募型プロポーザル方式により事業提案を求める方針を決定しました。
 また、KMH社が経営主体となっていた事業運営部分については、株主が神戸市およびその外郭団体に加え多数の企業からの出資で構成される第三セクターであること、神戸市からの短期貸付金が約26億円に達する債務超過会社となっていることを踏まえ、株式譲渡による会社売却ではなく、事業の実態部分のみを譲渡する事業譲渡方式により事業を承継することも併せて決定しました。
 決定された資産および事業の承継スキームは下記の図に示す通りです。

<公募による事業承継スキーム概念図>

公募による事業承継スキーム図 建物の最低売却価格、土地の賃貸条件、KMH社からの事業譲渡価格等公募条件については、不動産鑑定評価、建物・設備に対する将来の維持更新コスト評価、事業全体としての価値評価など専門家による査定結果を踏まえた上で、市の不動産評価審議会の評定を経て下記の通り決定しました。

<公募条件(主要部分)>

(1)建物譲渡条件
 ・最低売却価格12億円(消費税別途)。

(2)土地賃貸条件
 ・平成25年4月1日から30年間の土地事業用定期賃貸借契約。
 ・月額賃料11,492,000円(消費税非課税)。
 ・保証金は賃料の6ヶ月分。

(3)事業譲渡条件
 ・事業譲渡価格1千万円(消費税別途)。
 ・KMH社の全従業員(役員を除く)を雇用条件等処遇について同程度の条件で雇用すること。
 ・KMH社が契約当事者となっている対外契約について、KMH社の契約上の地位を基本的にすべて承継すること。
 ・KMH社からの事業承継後、営業を休止することなく、ホテル事業を継続すること。
 ・KMH社が受けている宿泊・レストラン・宴会・婚礼などの各種予約を同条件以上で引継ぎ、既存顧客に不利益を与えないこと。

 公募プロセスは、ホテルの事業内容・実績について応募登録者に対して詳細に情報開示を行なう体制を整えた上で、下記スケジュールで行ないました。

<公募プロセス>

募集要項配布および応募登録申込受付
  平成24年9月7日(金曜)〜24日(月曜)
  13社応募登録
資料開示および質問受付・回答
  応募登録〜平成24年10月31日(水曜)
第1回選考委員会
  平成24年9月3日(月曜)
施設見学会
  平成24年10月1日(月曜)〜3日(水曜)
事業提案書受付
  平成24年11月19日(月曜)〜22日(木曜)
  6社提案受付
第2回選考委員会
  平成24年12月7日(金曜)
第3回選考委員会(全提案者プレゼンテーション)
  平成24年12月13日(木曜)
選定事業者発表
  平成24年12月20日(木曜)

 6社から提出された提案について、提案内容およびプレゼンテーション内容について、
(1)企業体力・安定性
(2)事業推進体制
(3)事業提案の具体性・魅力度
(4)事業計画の信頼性
(5)その他
の5つの観点から有識者および専門家7名から成る選考委員会が採点を行ない、100点満点中70点以上の最上位得点者およびその90%以内の得点のうち、建物入札価格の上位者を事業者として選定することをルールとして選定を行ないました。その結果、下記の事業者を選定しました。

<舞子ビラ事業承継決定事業者>

事業者名 明治海運株式会社
本社所在地 神戸市中央区明石町32番地
代表者 代表取締役 内田 和也
審査得点 82.1点
建物入札額 24億円(消費税込み)

4.信託解消および施設売却・事業承継の経緯

 公募実施に向けての準備と並行して、信託団および銀行団との間で信託解消に向けての協議を進めました。信託解消に伴う弁済額は、最終的に総額で約101億3,400万円になり、市議会における補正予算の議決を経て、平成24年10月1日と平成25年3月29日にそれぞれ支払を行ない、平成25年3月31日をもって信託スキームを解消し、土地・建物を一旦神戸市の財産に戻す手続きを実行しました。この弁済額のうち銀行団からの借入契約の中途解約に伴う手数料については、契約条件に基づくと当初約9億6,100万円とされていましたが、信託団および銀行団との交渉の結果、この金額は47,260,315円へと大幅に減額されました。

舞子ビラ4 事業承継者として決定した明治海運株式会社とは、選定結果発表以降、事業の承継に向けてホテル運営事務の引継手続きおよび従業員の転籍承諾手続きを進め、平成25年4月1日をもって建物についての神戸市から明治海運株式会社への売却、土地についての神戸市から明治海運株式会社への定期賃貸、ホテル事業および従業員についてのKMH社から明治海運グループ/サフィールリゾート株式会社への承継を同時履行し、事業承継手続きを完了しました。

<事業承継までの経緯>

平成24年6月  神戸市、信託団、融資銀行団との間で平成24年度末までに土地信託契約を解除することについて合意。

平成24年9月  舞子ビラ事業の承継事業予定者の公募型プロポーザル募集実施。

平成24年9月  神戸市、信託団、融資銀行団との間で6月の合意に基づき、弁済内容、金額、信託契約解除までの信託財産の保全について、それぞれ覚書を締結。

平成24年10月 土地信託契約にかかる借入金等の弁済として損失補償・費用補償等の計約101億円を支払い。

平成24年12月  舞子ビラ事業の承継事業予定者決定。

平成25年1月  神戸市と明治海運株式会社が舞子ビラ建物の売買契約および土地の事業用定期借地権設定契約を締結。

平成25年3月  KMH社は明治海運株式会社が100%出資で設立したサフィールリゾート株式会社とシーサイドホテル舞子ビラ神戸の運営事業の事業譲渡契約を締結。

平成25年3月  信託団と土地信託契約の解除証書を作成し、解除に伴う費用補償を実行。

平成25年3月  土地信託契約の解除。それに伴い、KMH社と信託団は舞子ビラ建物の賃貸借契約を解除。

平成25年4月  シーサイドホテル舞子ビラ神戸のサフィールリゾート株式会社による運営開始。

新事業者の運営スキーム

5.KMH社の清算と登記簿の閉鎖

 KMH社は、舞子ビラ事業の承継でサフィールリゾート株式会社に平成25年4月1日付で、シーサイドホテル舞子ビラ神戸の運営事業を譲渡しました。これにより、KMH社の設立目的が消滅し、その役割を終えたことから、株主総会で平成25年6月14日付の解散を決議し、平成25年6月17日に会社解散の公告と合わせて、神戸地方裁判所に特別清算手続開始の申立を行い、同日裁判所より特別清算開始の命令を受けました。
 解散公告期間の2か月の間に、裁判所からの指導、監督の下、各種税金の納付、還付などを経て、残余財産を確定させ、裁判所の許可を得た上で、平成25年8月27日に本市と和解契約を締結し、同日、残余財産全額の1億4,015万4,536円を本市に返済しました。そして、平成25年8月28日に裁判所への特別清算終結の申立を行い、同日清算結了による特別清算終結の決定を受けました。
 その後、上記特別清算終結決定は、裁判所の嘱託により平成25年9月9日の官報に公告が掲載され、その翌日から2週間の即時抗告期間を経た平成25年9月25日に確定しました。
 そして、裁判所により、KMH社の特別清算終結の嘱託登記がなされ、登記簿は閉鎖されました。これにより、KMH社の清算にかかるすべての手続きが終了しました。

6.本市の債権放棄額

 (平成25年第1回定例市会の可決議案「権利の放棄及びこれに伴う和解の件」に基づく。)
【本市の債権額】
・平成23年度本市からKMH社への貸付金 26億円
・償還期日の翌日(平成24年4月1日)から和解日(平成25年8月27日)までの年14.6%の遅延利息 5億3,456万円
【KMH社からの返済額】
・本市に返済されたKMH社の残余財産 1億4,015万4,536円
【債権放棄額】(本市の債権額合計−KMH社からの返済額)
・和解に基づく債権放棄額 29億9,440万5,464円

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