第5回 身近な自然のフィールドを遊ぶ

神戸から大阪、京都、奈良など近畿近郊へのアクセスの良さを東京にいた頃は知らなかった。三ノ宮から大阪までは新快速で20分ちょっと、京都でも1時間。首都圏だと通勤時間1時間くらいは当たり前だったので、神戸の交通の便の良さには魅力に感じる。神戸で働き神戸に暮らす人はもちろん、大阪などで働いて神戸がホームという人も少なくない。暮らしの拠点を神戸にこだわる人もいるようだ。

 


そんなことを観察し考えを巡らせていると、「仕事人のオンとオフ」に行き着いた。神戸には、海や山の身近なフィールドで遊び、オフを充実させる、そんな遊びの選択肢の多さに気が付く。そこに、ふつふつと「自由さ」や「豊かさ」を感じるようになった。

平磯海釣り公園や須磨海釣り公園など、神戸には釣りのスポットがある。昨年の台風の影響で須磨海釣り公園は臨時休業中だけれど、神戸西側のエリアなどでも目にする、海に面して並ぶ釣り人の光景。地元の人にとっては、港町のあまりにも当たり前の光景に違いない。それでも、私からすると毎度その光景に「贅沢だなあ」となぜかうっとりしてしまう。



車や自転車で訪れて釣竿を垂らし、たゆたう海と戯れるその自由さ。東京で釣りといったら、距離的にそれなりの準備と時間をかけないと港に着けないのに、なんだろうこのお兄さんおじさんたちの気軽さは。若者からお年寄りまで、気ままに海風に吹かれている。



以前釣り場で人だかりができていたのでのぞいた時がある。若者の釣竿に大きなブリがかかり、想定外の大きさに彼らも右往左往。周りのおっちゃん達はあれこれアドバイスやひやかしをしている。わちゃわちゃした末にようやく釣れると、歓声と笑いが起こり、魚を見届けるとおっちゃんたちはまた己の釣り場に戻っていく。このシーンに関西ならではの人の近さやおもろさを感じた。



私も夫やご近所さんの釣りに同行したことがあって、見よう見まねでルアーをつけて釣竿を投げると、意外にもタチウオやガシラ、小さなアジが釣れてびっくりし、嬉々とした。さんざん楽しんだあと、釣った魚を入れたビニール袋片手に、自転車で自宅に帰る。


 


タチウオも初めてさばいて、塩焼きやフライに。これがなかなか美味しくて。スーパーや魚屋で買った魚でなく、釣った魚を料理して食べるシンプルさ。街中に住みながら、こんな原始的な食卓ができる遊びの面白さに、ぞくぞくした。



我が家では、夫が釣りにいったときには、リリースしないで持って帰ってきてとお願いしている。釣れないボウズの時でも、海風に吹かれて、刻々と変わる夕暮れ空は心が軽くなる。


 

 


また、山のほうでは、住宅街からすぐに山道に入れて、トレイルランニングや登山をしている人たちにすれ違う。夫はマウンテンバイクにハマっていて、週末となれば山のトレイルで自転車を走らせている。平日の口癖といえば「早く山に入りたい」。
そばでみていると、仕事で溜まるいろいろが、ダイレクトな自然を自転車で走ることで明らかにリフレッシュされている。年齢も職業もさまざまな人たちが休日集まって山で遊ぶ。山に海に、こんな遊びが神戸ではあちこちでできる。


 


私が東京で働きワーカホリックの頃は、休日仲間と1〜2時間かけて郊外に出向いてキャンプやアウトドアを楽しみ、帰りの車で「まだ帰りたくないー!」と何度惜しんだことか。都会の公園で遊ぶにも電車移動はマスト。それに比べて、神戸の自然との近さといったら。



エッセイ第一号で取り上げた湊山温泉などの温泉も、「東京のサラリーマンが仕事帰りにこんな温泉に浸かれたら、どんなにリフレッシュするだろう」と毎度思わずにはいられない。街のおじいさんおばあさんに混じって入ることも重要。ふと一息つけることで、きっと明日の活力になるはず。



遊びでリフレッシュできれば、仕事のパフォーマンスにもきっとよい影響をもたらしそう。常に過緊張の戦闘態勢から、遊ぶことで心身がゆるめばメリハリができるし、自律神経も整っていく。同時に、自然も保全や保護だけではなく、人がゆるやかにつながり共生することで、また活かされていく。そんなフィールドや遊びが神戸には溢れていて、思い思いに楽しむ人の姿に、豊かさを感じるのだ。



残暑の中に時おり秋の風を感じるようになってきた。秋は動きやすくなる季節。まだ登ったことのない山に挑戦したり、あたらしい遊びを見つけてみたりしようかな?



文と写真 岩崎雅美

2年前から神戸に暮らし、ときどき横浜・東京との二拠点生活を送る主婦。 編集したり書いたり、人やコトやモノをつなぐ仕事をしています。

プロジェクトディレクター/地域コーディネーター/編集者/ライター
東京では、CSR・SDGs関連のコンサルティング・レポート制作会社の株式会社クレアンにて企画編集を担当。その後、株式会社umariにて地域や分野を横断する0→1を作るさまざまなプロジェクトデザインに携わる。雑誌「TURNS」の企画・地域コーディネーター・編集を担当後、神戸に移住。移住後はフリーランスで活動中。