第21回 高菜炒めつくろう

妹から姉に「雪だるまをつくろうよ」と呼びかけるのは、映画『アナと雪の女王』においては「(姉さんの)魔法をつかって遊びましょ」というサインだ。姉のエルサはどんな時だってそう言われれば仕方ないなあと、指先から氷を飛ばしたりお城の中に雪を降らせたり地面を凍らせたりして相手をしてくれる。でもある時からとつぜん、大好きな姉が自分を避けるようになってしまった。アナにはその理由がわからない。
理由がわからないまま愛する人から関係を絶たれるほど、残酷なことはないだろう。

姉のエルサは、過去に氷の魔法を誤って妹にぶつけてしまい、そのせいでアナは傷つき意識を失ってしまう。エルサはうろたえ、両親からは力や感情を制御して生きることを要求される。自分のせいで重体となった妹は、妖精トロールの力によって無事に意識を取り戻す事は出来たが、代償として姉の魔法に関する記憶はすべて消去されてしまった。エルサは妹にその事を伝えることが出来ず(本当のことを言えず)、日ごとに強くなっていく自らの魔力もコントロール出来ない。いつしかエルサは部屋に閉じこもるようになる。

そんな中で、かつては「いっしょに遊ぼうよ」という幸せな符牒であった「雪だるまをつくらない?」という言葉は、今では妹アナの孤独なつぶやきとして、劇中でかなしく歌われるのであった。
私はだいたい三ヶ月に一回アナ雪を見るように自らにノルマを課しているため、先日かれこれ二十数回目の鑑賞をしながら、ふと、もし自分が姉のエルサだったならば、と考えた。
雪だるまを作ろうと言われても動かへんと思うけど「高菜炒めをつくろうよ」と呼びかけられたら私(エルサ)は動かずにいられる自信がないなあと思ったのだ。

扉の向こうからこんな風に、アナの歌声がきこえてくるのである。


(イントロ)
高菜炒め作ろう♪
古高菜買って~♪


 

ざく切り♪ ごま油♪
砂糖と酒を投下~~♪


 
 

みりん 味の素♪
醤油をまわしてかけて~♪


 
 
 
 

仕上げにゴマあぶら~~♪


 

アナ「ほら、簡単でしょ」


もし、こんな歌声がきこえてきたら、間違いなく私は我慢できず、
「せやな。ひとつだけ言わせて。醤油はケチらずエエもん使いや」
などと言って扉を開けてしまうだろう。

(アナの声)
「料理の手順をおさらいするね。古高菜を細かく細かくザク切りにするの。油は多めで作ったほうがおいしいから、最初に炒めるのはサラダ油を使っていいわ。ごま油は高いからね。砂糖は小さじ1半くらいでいいから必ず入れて。私は料理にあまり砂糖を使わないんだけど高菜炒めだけは別。コクっつうか深みが出るのよ。それをちゃっと炒めて、酒はお玉に七分目くらい。みりんは大さじ1くらい。あとは味の素。適当なタイミングで粒ごま。唐辛子を大量に入れて、最後に醤油で味を付ける。醤油の分量は、料理に慣れない人が作るとたぶん味の薄いものができるんじゃないかな。だから「ちょっと入れすぎちゃうかなあ」くらいに思いきって入れてみてね。仕上げにごま油をフライパン1周2周、回しかけて風味をつけて。出来た高菜炒めは冷蔵庫に入れておけば10日くらいは余裕で持つから経済的よ」

 

ちなみにエルサ(私)は、高菜炒めを使ったお茶漬けがめっちゃ好きやねん。
エルサが小学生の時に大好きだった料理は、砂肝にポン酢をかけたものと、温泉卵と、高菜茶漬け。
今でもその三種の神器は変わらず大好きで、特に高菜炒めは冷蔵庫に常備しています。
アナはそのへん、わかっとるわな、と。

ご飯に高菜炒めをのせて上から冷たい茶を、どばっとかける。
そいつをシャカシャカシャカッとすすっているだけで「これでええやん」という気分である。

アナ「姉さん、高菜炒めも作ったし、仲直りのしるしに今日はノースマウンテンに行かない?」
エルサ「そうね。雪の溶けたノースマウンテンに登ってアレンデールの町を見ながら高菜茶漬けを食べましょう。長田か板宿あたりからぶらぶら時間かけて歩くか市バス11系統の鷹取団地前で降りるといいわ」

 
 
 

(イントロ) 高菜茶漬けつくろう~♪ ごはん詰めて~♪


 

高菜はたっぷり♪
好みで海苔をのせて~♪


 
 

(セリフ)
エルサ「ほら、氷の城へ続く階段よ」
アナ「スヴェン(トナカイ)がずっこけた所ね!」


 

(歌のつづき)
自販機で買った~お茶を~♪


 

そのま~まぶっかける~♪ (オラフ「やあアナ、エルサ。ぼくも来たよ」 オラフ=にんじんしりしり)


 

アナ雪茶漬けの~♪
できあがり~♪


 

アナ「この季節のノースマウンテンは最高やね~」
エルサ「アウトドア高菜茶漬け。やっぱりこれが最高やん?」
アナ「春の日差しで、屋根がきらきらしとーね」
エルサ「ええやん。これでええやん」


 

fin


文と写真 平民金子

写真を撮ったり文章を書いたりしています。1975年生。東京か大阪かメキシコにいましたが、現在は神戸在住。


神戸市広報課より

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(掲載内容は2019年3月6日現在の情報です)