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神戸医療産業都市推進機構理事長 本庶佑×神戸市長 久元喜造 特別対談

 医療に関わる最先端の研究機関や企業をポートアイランドに集めるプロジェクト「神戸医療産業都市」。神戸医療産業都市推進機構の理事長である本庶氏が、2018年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。今月は受賞を祝し、久元市長との特別対談を掲載。神戸への思いや市民の皆さんへのメッセージなど、ここでしか聞けない生の声を届けます。

本庶佑(ほんじょたすく)氏 プロフィール

昭和17年1月生まれ
公益財団法人神戸医療産業都市推進機構理事長
京都大学高等研究院副院長・特別教授

中学生の時に野口英世の伝記を読み、人命を救いたいと医学の道に進む。「自分の知りたいことを研究する」がモットー。パワーの源はゴルフとおいしい食事。

世界が注目する受賞理由 『免疫の負の制御機構を阻害するがん治療法の発見』

 身体に悪影響を及ぼす細胞などを攻撃する免疫細胞に、ブレーキをかける物質「PD-1」を発見。PD-1の働きを抑えブレーキを解除し、がん治療に役立てることはできないかという研究を進め、高く評価された。

医療産業都市の役割

久元:このたびは本当におめでとうございます。まず、ノーベル生理学・医学賞受賞の連絡が来た時の気持ちを聞かせていただけますか。

本庶:連絡があったのは、学生たちと一緒に論文の推敲(すいこう)をしていた時でした。前触れもなく突然のことで驚きましたが、大変うれしかったしみんなも喜んでくれました。

久元:現在、本庶先生に理事長を務めていただいている医療産業都市推進機構ですが、どのような研究テーマを持っていますか。

本庶:進めているのは企業との共同研究です。私が見つけたPD-1をこれまでがんに応用してきましたが、自己免疫疾患※にも展開したいですね。また、老化の問題に関しても長い間、研究をしています。神戸市からは20年間支援を受けてきましたが、ようやく1つや2つ、人々のためになるような成果が生まれています。

※本来、外部から体内に侵入した異物を排除する免疫系が、自身の体内に存在する物質を攻撃することで生じる病気の総称。関節リウマチ、1型糖尿病など

久元:医療産業都市は今後、国内外でどのような役割を果たしていくべきでしょうか。

本庶:これからの100年は人々の健康、長寿、福祉が世界全体の課題になるでしょう。その中で日本は、医療に関わる産業を育てることにおいて非常に遅れています。医療産業都市をしっかりと育て、大きな課題に取り組んでいかなければなりません。

久元:世界全体という話がありましたが、医療産業都市がグローバル社会の中で健康や長寿に貢献するためには、どのようなことが必要でしょうか。

本庶:現在、既にヨーロッパや中国、アメリカとの共同研究などのプロジェクトが進んでいます。理想としては、神戸での研究が世界的に有名になって、世界中から研究者に来てもらうのが大きな目標ですが、今はまだ至っていません。しかし、国内では神戸がナンバーワンであり、おそらくアジアでも1、2を争う位置まで来ています。あともう少しで世界の仲間入りを果たせると思っています。

未来を担う子どもたちへ

久元:本庶先生の記者会見での「教科書を信じてはいけない」という言葉は印象的でした。私も子どもの頃は、教科書に書いてあることって正しいのかなと思っていました。いろんなことを勉強しなければならないと思いますが、やはり自分自身の感性や好奇心を大切にしないといけないでしょうね。

本庶:私はいわゆる受験勉強の弊害というか、効率良く記憶することが優等生と呼ばれることに大きな問題を感じています。研究だけでなく、例えば野球でも、コーチの言ったことが全ての選手に合う訳がないのです。自分の体は自分が一番知っているので、コーチが言ったことの中から自分に合うものを受け入れる、そして自分なりの工夫をする、これがやはり必要です。ぜひ自分の頭で考えるという習慣を、小さい頃から身に付けて欲しいですね。

神戸とのつながり

久元:神戸の印象はどうでしょうか。

本庶:なんといっても温暖な気候が良いですね。瀬戸内の素晴らしい晴れた空はもちろん、神戸ビーフが大好きなのは言うまでもないし、日本のゴルフ発祥地でもあるので、神戸に対する思い入れは強いですよ。

久元:神戸市民も今回の受賞を喜んでいます。私も街へ行くと「受賞すごいですね」と話し掛けられることがあり、大変うれしく思っています。市民の皆さんへメッセージをお願いできますか。

本庶:受賞が決まった後、記者会見の直前まで京都大学本部で待機していました。当日、久元市長からお祝いの電話がありましたが、正直あの時は電話が途切れなくて、たまたまというのは失礼な話ですが、ちょうど出られました。直接お祝いの言葉をいただけたのは、神戸との縁があるのだと思っています。私が神戸に何ができるのかを一生懸命考えて、ぜひ恩返しをしたいです。

今年で20周年 医療産業都市の歩み

         阪神・淡路大震災で被害を受けた神戸経済を立て直し、市民に高い水準の医療を提供するためにスタートして、今年で20周年。現在では350社もの企業・団体が集積し、研究が行われています(平成30年10月末現在)。また、臨床の場である中央市民病院は、全国284カ所の救命救急センターを対象とした「全国救命救急センター評価」において、4年連続第1位に選ばれています。

神戸から未来を変える

  国内最大級の医療集積地となった医療産業都市。今回のノーベル賞を受賞した研究のように、私たちの未来を大きく変えるような成果がここから生まれるかもしれません。発展し続ける医療産業都市をこれからも発信していきます。

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