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第3回 感性を磨きながら、どんなときにも「焦らず弛まず」進んでほしい
理化学研究所 多細胞システム形成研究センター センター長 濱田博司先生

最終更新日
2015年7月1日

サイエンスコミュニケーター(SC)インタビュー企画第3弾は、理化学研究所多細胞システム形成研究センター(CDB)※の濱田博司センター長です。
濱田センター長は、哺乳類の体に非対称性が生じるメカニズムを探求し続け、発生の初期段階で、どのように体の左右軸が決定されるのかという発生生物学の難問を解かれました。大阪大学大学院では、生命機能研究科長として若手研究者の育成や組織運営にも携わってこられ、今年4月から、多細胞システム形成研究センターの初代センター長に就任されました。
いつでも若手研究者の意見を受け入れたいと、センター長室の扉を常にオープンにされている濱田センター長。インタビューでは、新生CDBの運営の舵をとるセンター長としての決意と情熱をうかがうとともに、指導者としてのとても温かいお人柄に触れることができました。
 
※2014年11月に、発生・再生科学総合研究センター(CDB)から改組されて発足

左:濱田博司センター長(左)と牟田祐子サイエンスコミュニケーター(右)左:濱田博司先生 (理化学研究所 多細胞システム形成研究センター センター長)
右:インタビュアー 牟田祐子 (神戸市医療産業都市・企業誘致推進本部サイエンスコミュニケーター)

濱田センター長プロフィール

濱田 博司 (はまだ ひろし) 先生
1950年7月15日生まれ、香川県出身

濱田博司センター長のお写真【略歴】
1979年3月 岡山大学大学院・医学研究科博士課程修了(医学博士)
1979年10月 米国 国立衛生研究所・癌研究所Visiting Associate/Visiting Scientist
1985年1月 カナダ ニューファンドランドメモリアル大学医学部Assistant Professor
1988年2月 東京大学医学部生化学教室 助教授
1995年4月 大阪大学細胞生体工学センター 教授
2002年4月 大阪大学大学院生命機能研究科 教授
2014年4月 大阪大学 特別教授
(2012年4月〜2014年3月 大阪大学大学院 生命機能研究科長)
2015年4月 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター センター長
 
【受賞歴】
2000年 第18回大阪科学賞「体の左右非対称が生じる機構の解明」
2003年 第10回日産科学賞(2002年度)「体の非対称性が生じる分子機構」
2012年 第43回内藤記念科学振興賞(2011年度)「体の非対称性が生じる機構」
2014年 紫綬褒章
2014年 第19回慶應医学賞「左右軸を中心とした哺乳動物胚発生の分子制御機構」

CDBセンター長就任の抱負

科学コミュニティーの中でリーダー的役割を果たす研究センターを目指して

牟田:まずは、多細胞システム形成研究センターの初代センター長に就任された抱負をお聞かせください。
 
濱田:この研究センターは、発生生物学の分野で出口を見据えた基礎的な研究をする、という趣旨でつくられた研究所です。しかも、再生医学という言葉がまだなかった十数年前の2000年から、すでにそういうことを目指してつくられた画期的なセンターだと思います。
研究の面でも非常にレベルの高い研究成果が生み出されていて、科学のコミュニティーの中で、中心的なリーダーとしての役割を果たしてきた研究センターです。ですから、今後も引き続きその役割を担っていくとともに、出口につながるような成果を上げていきたいと思っています。

インタビューに答える濱田先生

若手にチャンスを与えるのはCDBの開所当初からの基本理念

牟田:濱田先生が様々なインタビューの中で、「若手研究者が本質に迫る挑戦的な研究を自由にできる環境を整えていきたい」とおっしゃっていたのがすごく印象的でした。
 
濱田:このセンター自身がそういう理念でつくられていますし、僕自身も本当にそう思います。若い人にチャンスを差し上げるという基本理念は、引き続き守っていかないといけないですね。
ただし、誰にチャンスを与えるのかというのは、選考の過程の透明性を保ったうえで、複数の人間できちんとした手続きを踏んで評価・選考することが重要だと思います。

理化学研究所CDBの外観写真 [理化学研究所提供][写真:理化学研究所提供]

今後の研究の方向性は?

出口を見据えた基礎研究に取組むのがCDBの使命

牟田:CDBは、昨年11月の組織改編を経て、新たに多細胞システム形成研究センターとしてスタートされましたが、一般の方にとりますと、多細胞システム形成研究という言葉はちょっと難しく感じられます。具体的には、どういう意味なのでしょうか。
 
濱田:そうですね。ちょっと噛んでしまいそうで、言葉が分かりにくいですけど。僕らの体は、たくさんの細胞から構成されていますが、最初は1個の受精卵からスタートしています。そういう1個の受精卵から、どうやって体が形成されていくのか、その仕組みを探るというのが基礎的な部分ですね。その仕組みを理解した上で、それを応用につなげることを目指しています。多細胞システム形成というのは、そういうところからついた名前です。
 
牟田:多細胞システム形成研究センターとして、今後、特に注力していきたい研究分野はどんな分野ですか。
 
濱田:一番には、出口を見据えた基礎研究に取り組むということなのですが、基礎研究から出口までどうつながるか。すぐにはつながらないとしても、中長期的、将来的にはしっかりつなげたい。必ずしも一人の人間が基礎から全部つなげる必要はないと思います。ある人が基礎をやって、別の人がその研究を見て利用して、次の段階に進む、というように、どんどんバトンをつないでいくことでいいんじゃないかと思っています。そのための基礎研究部分をCDBがしっかり担うことで、研究成果を社会に還元していきたいと思っています。
基礎研究はすでにしっかりした人たちがいて、応用の研究では、高橋政代さんをはじめ、皆さんよくご存じの研究をされている方がいるんですけど、基礎と臨床応用の橋渡しをするような研究が少し不足してきていますので、短期的にはそういう研究をもう少し強化したいと思っています。基礎から出口、応用までいろんな段階の研究を、それぞれいろんな分野の研究者が研究することで、相乗的な効果が生まれると思っています。

インタビューに答える濱田先生

研究分野の垣根をなくして初めてブレイクスルーが生まれる

牟田:CDBでは、数学とか本当にいろんな分野の研究者が、発生生物学や再生医療をテーマに研究に取り組まれていると思うのですが。
 
濱田:そうですね。どの分野の学問もおそらく同じだと思うのですが、やはり、一つの学問で閉ざされていると発展できません。ですから、例えばCDBでは発生生物学を研究しているといっても、古典的な発生生物学だけではおそらくブレイクスルーは難しいのではないかと思います。数学の専門家はもちろん、本当は物理とか、あるいは工学とか、そういう違った分野の研究者たちが入ってくることで、初めて大きなブレイクスルーが生まれると僕は思います。
それは言葉で言うのは簡単ですけど、実現するのはなかなか難しく、時間がかかると思います。幸いにも、数学を専門としていて、発生生物学に興味がある研究者がたまたま日本の中にいましたから、ここにも来ていただいています。研究所にいろんな分野の研究者を入れることは、とても重要なことだと思います。

ポスターの前で研究成果についてディスカッションする研究者たちの写真 [理化学研究所提供][写真:理化学研究所提供]

神戸医療産業都市との関わりについて

基礎研究と医療面での出口である病院があってこその医療産業都市

牟田:ご存じのとおりCDBは、神戸医療産業都市の開始当初から、プロジェクトの発展に不可欠な存在であり、今、神戸市全体が新生CDBの動向に期待し、注目しています。
CDBセンター長に就任される以前、外から見た神戸医療産業都市の印象はどのようなものだったのでしょうか。
 
濱田:この前、この辺り(ポートアイランド南地区)の10年前の地図と今の地図を見せていただいて、如何に変わったかを知りとても驚きました。それから、今はだいぶん病院が集積していますが、今後さらに幾つか新しい病院がこの辺りに来ることになっていますよね。それは、すごくいいことだと思いますね。
CDBの研究の中にも、臨床、すなわち人の病気とつながりのある研究がたくさんありますが、すぐ近くに病院がないので、知り合いがいないとか、なかなか臨床現場と連携がとれない状況があったと思います。病院が近くにあるということは、CDBにとって(応用研究をしている人だけでなく基礎研究をしている人にとっても)、大変有難いことですね。
 
牟田:今、病院との連携が重要だとうかがいましたが、ここには病院以外にも、研究所、大学等もございますし、企業も集積しております。改めて、神戸医療産業都市にある他施設や、神戸市との連携をどのように考えていらっしゃいますか。
 
濱田:やはりこのプロジェクトの中で、神戸市とはしっかり連携を図りたいと思っています。神戸市が、病院や企業の方々をここに誘致しているおかげで、臨床応用や産業化を見据えて研究しやすい環境になっていると思います。これは、大変大きなことであると考えています。
 
牟田:もちろん病院や産業界など出口の取組みは重要ですが、やはり、基礎研究をしっかりしてくださる理化学研究所の存在は、神戸医療産業都市の最大の強み・魅力の一つかなと思っています。
 
濱田:そう言っていただけると嬉しいですが、一方で医療産業都市ですから、医療面で出口がないといけないですからね。それはやはり、互いの連携があってこその医療産業都市、お互いさまだと、本当にそう思いますね。

神戸医療産業都市の写真 (2014年11月撮影)

濱田センター長のご研究や研究者としてのお人柄は?

体の左右非対称性の研究は医学的にも重要な研究

牟田:濱田先生ご自身の「体の左右非対称性」の研究について、市民の皆さんに向けて、少しわかりやすくお話をいただけたらと思います。
 
濱田:先ほど、僕らの体は1個の受精卵からスタートすると言いましたが、受精が起こった後、発生の初期の段階で必要なことが幾つかあります。1つ目は、細胞の数を増ふやさないといけないということですね。どんどん細胞が分裂して、数を増やす。2つ目は、数を増やすだけじゃなくて、種類を増やさないといけないですね。僕らの体には、たくさんの種類の細胞があります。最後に3つ目は、実は体が形成される途中というのは細胞の集団なのですが、その集団の中で将来の体の方向を決める必要がありますね。僕らの体には3つ方向があって、それは頭と足、背中と腹、右と左。この3つの方向が決まると、体全体の座標が決まるわけです。そのような方向性は、体がつくられていくかなり初めのころに決定されるのですが、3つの方向性の中で、僕たちが研究しているのは右と左の方向性がどのように決定されるかということです。
その研究って大事なの?もともと左右対称じゃないの?一見外からだと、左右で違いはないと思われるかもしれませんが、特におなかの中の臓器は大きさや位置が全て左右非対称です。それぞれの臓器が機能を司ることができるためには、臓器や血管がどこに位置するかが大変重要なことで、それを決めているのが左右の非対称性、左右の方向性です。
[図:濱田センター長ご提供]

左右非対称な形を作り出すための3つのステップ [濱田センター長ご提供]

図の説明文

濱田:これは医学的にも大変重要なことで、左右の方向性に支障が起きると、まず問題が起こるのは心臓ですね。心臓は4つの部屋、すなわち2つの心房と2つの心室に分かれていますが、それぞれ大きな血管がつながっています。末梢からやってきた酸素濃度が低い血液が右心室に入って、そこから肺動脈を使って肺に行きます。そこで酸素濃度を上げて、肺静脈を使って左心室に戻って、左心室から大動脈を使って末梢の方に行きます。大静脈から入って、肺動脈から外に行って、肺静脈から入って、また大動脈から出るというふうに、心臓につながっている4つの重要な血管があるのですが、左右の位置情報、方向性がおかしくなると、そういう連結もおかしくなります。例えば、右心室から肺に行くべき動脈が大動脈の方につながったりすると、酸素濃度の低い血液が肺には行かずに、そのまま末梢に行ってしまいます。そうすると、だいたい出生後すぐ、何もしなければ死んでしまうことになります。
このように、どうやって内臓の位置の左右非対称性が決まっているのか、という医学的にも重要な課題について研究をしています。主にマウスをモデル動物として使って、どういう仕組みで、例えばどういう遺伝子がどういう働きをすることで正しい左右非対称ができるのかというような研究です。
 
牟田:では、その遺伝子の働きを知ることで、出生時の臓器の機能不全の原因や治療法へのヒントが得られたりするのでしょうか。
 
濱田:はい。ある遺伝子の機能をなくすとどうなるか?とか、そのような研究をしています。

伝記を読んで医学の研究者に!でも今は基礎の生物研究に魅了されて

小学5年のとき、同級生とともに撮影された写真(向かって右端が濱田センター長)牟田:濱田先生が、今ご研究されている左右非対称性の研究を始められたきっかけ、もしくは、生物に興味をもったきっかけはあったのでしょうか。
 
濱田:僕は、基礎医学の研究をしようということを、かなり小さいころから決めていました。
 
牟田:小さいころとは。
 
濱田:小学生ぐらい。
 
牟田:基礎医学の研究といいますと。
 
濱田:そうですね。小学生のころは医学の研究、病気の仕組みとかに興味がありました。どうして病気が起こるのか、例えばあの頃だとがんが一番大きな未知の病気だったので、どうしてがんになるのかとか、そんなことに興味がありました。
 
牟田:興味を持たれたきっかけは何でしょうか。
 
濱田:そうですね。僕はいろんな人の伝記を読むのが好きだったので、その中でこういう仕事はいいなと思ったのが最初だったと思います。
 
牟田:左右非対称性の研究に進まれたのは、やはりそれが臓器の奇形など色んな病気の根幹にあったからでしょうか。
 
濱田:実はそうではないんです。最初は医学の研究をしたいという動機で研究を始めたのですが、やってみると基礎の研究というのは面白くて、僕はしばらくすると医学研究じゃなくて、理学の研究、生物学の研究をするようになってしまいましたね。
 
牟田:では、研究していくうちに左右非対称性の研究の面白さにのめり込んでいかれたと?

受精後8日目のマウス胚の、左だけでONになる遺伝子Leftyの写真 [濱田センター長ご提供]濱田:どうして今の左右非対称性の研究をしたかというと、狙ったわけではなくて全く偶然で始まった研究です。
 
牟田:ある遺伝子を見つけられて、それが左右非対称にかかわっていたということでしょうか。
 
濱田:はい、そうなんです。それもそういう遺伝子を見つけようと思ったわけではなく、発生で重要な役割を持っていそうな遺伝子を、ある培養細胞を使って網羅的に探索して役割を調べていたら、たまたまある遺伝子が左側だけで発現していて、そこが尾になっていた、という全くの偶然で見つかりました。

出口の研究は基礎研究の積み重ねがあってこそ!

牟田:濱田先生は、研究をやっていくうちに基礎研究の面白さを知り、そちらに移られたということなのですが、私もサイエンスコミュニケーターとして市民の皆さんに基礎研究をご紹介する際、出口が見えにくいということもあって、基礎研究の重要性を理解していただくのを難しく感じることがあります。濱田先生にとって、基礎研究の重要性はどういうところでしょうか。
 
濱田:そうですね。出口というのは、ある日突然出口が出てくるわけじゃないですから、当然ですが積み重ねが必要です。基礎の方から、色んな知識を積み重ねた上で少しずつ出口の方に近い研究に移っていき、最後にやっと出口の成果が出てくるわけですから、それはやはり長い目で見ないといけません。成果がすぐ人の健康に役立っているように思える研究も、実は基礎研究からスタートしています。しかも、同じ人が基礎から応用まで全て研究するのは難しい。やはり、色んな人がやってきた研究の積み重ねです。
例えば、内耳ができる仕組み、その正常な仕組みを知ることで、どうして難聴になるかがわかり、そこから難聴の人をどうやって治療、改善すればいいのか考えることができるわけです。
 
牟田:きっと今出口にある研究の多くは、たくさんの先人の方々が研究されたことの上に成り立っているのですね。
 
濱田:そうです。昔の先人たちの研究というのも、とても重要なポイントなると思います。

インタビューに答える濱田先生

必ず出口につながるという信念が研究のやりがいに

牟田:研究者の皆さんは、ずっと集中して研究されるイメージがありますが、研究をしていて一番やりがいを感じる瞬間はどういうときですか。
 
濱田:牟田さんはどうでしたか。楽しくて、ああやっていて良かったとか、やったぁ!と思えるようなときはなかったですか。
(以前、牟田SCがCDBに在籍していたことからお尋ねくださいました)
 
牟田:私はなかなか思えることが少なく、悩んでいる時期もありました。
 
濱田:少なかったですか。そうですか。でもね、本当少ないんですよ。それが普通だと思います。僕も今までやってきて、やったと思うようなことってそんなにないと思います。ほとんどは上手くいかないことばっかりです。でも、やはり研究者というのはそういうものだとわかっていても続けることができるのは、1回やったぁ!という大きな喜びを経験すると、例えばそれが1年のうち1回、あるいはもっと少なくてもその喜びを覚えているので、上手くいかないときでも継続できる気がします。おそらく皆さんそうだと思います。
 
牟田:やはり、いくら基礎研究が重要だと分かっていても、社会に本当に役に立つことをできているのか、という思いになることもありました。
 
濱田:そうですね。例えば臨床をやっていると、毎日患者さんを診ますので、やりがいというのは毎日感じる。僕自身は臨床の経験はないのですが、おそらく感じることができると思うんです。上手くいかないことも、思うように治療できないこともあるから落ち込むこともあるだろうけど、やはり毎日やりがいが見つけやすいですよね。その点、基礎研究というのは、「ぼーっ」としているとやりがいが分からなくなってしまいます。
 
牟田:以前、CDBの森本先生※にお話をうかがったときに、ご自身の研究が直接すぐに出口には至らなくても、将来必ず出口につながっていく、というすごく信念というか、そういう気持ちを強く持たれているから、とどまることなく真っすぐ進まれるのだなと感銘を受けたことがありました。
 
濱田:僕もそうですし、皆さん基礎研究をやっている方はそう思っていると思います。自分が出口まで持って行けなくても、多くの場合はほかの人が持っていってくれます。いい研究であればあるほど人の目に触れる機会が多くなるので、「これは使える」というふうに、いろんな方から活用しようと思ってもらえるんじゃないかなと思いますね。

灘中高生の取材に応じるCDB森本充先生の写真

※呼吸器形成研究チーム 森本充チームリーダー
神戸の中高生が神戸医療産業都市で活躍する人々を取材して、市民の皆さんにレポートする企画「探検!神戸医療産業都市!」にご協力いただいたときに、お話をうかがいました。
森本先生の取材レポートは7月3日(金曜)掲載予定!

濱田センター長の好きなものは?

牟田:研究をしていてやったぁ!と思えるのは年に1回あったらいいほうだということですが、濱田先生は、ご研究に疲れた際などはどのようにリフレッシュされているのですか。ご趣味や、リフレッシュ法があれば教えてください。
 
濱田:僕は、リフレッシュという目的をもってやっていることはほとんどないですね。4月以降CDBに来てからは、研究以外のことを考えないといけないので、あまり研究のことを考えられてないのですが、大学にいる頃はやはり、考えていることといったらほとんど研究のことでした。
 
牟田:リフレッシュはほとんどされないのですか。
 
濱田:もちろん、研究以外のこともやっていますし、興味もありますが、リフレッシュというふうには考えていなかったです。でも、皆さんに聞かれたときに僕がいつも言うのは、「甲子園に行くのが好きです」ということです。
 
牟田:阪神ファンですか。
 
濱田:阪神が好きなわけではないかもしれません。甲子園という球場が好きです。あれはやはり日本が誇る球場で、本当に僕は甲子園がすごく好きで、きれいな球場だと思います。
 
牟田:独特の雰囲気があるのですか。
 
濱田:僕はプロ野球にしか行ったことがないのですが、だいたい甲子園に行くと3塁側のアルプスの上の方に行くんです。そうすると、夕方6時半ごろになると本当に眺めがきれいなんです。
夕焼けがこう見えて(手をかざしながら)、球場があって、ちょっとほの暗くなってきて、芝生の緑が「ぼこっ」と膨らんでいて、もう何とも言えないです。きれいですよ。そこでプロの選手が野球をやっているのですから。本当きれいな球場だと思います。
 
牟田:ぜひ機会があったら行ってみたいです!

インタビューに答える濱田先生

濱田センター長からのメッセージ

自分のゴールを設定したら、あとは「焦らず弛まずやってください」

牟田:最後に、濱田先生から市民の皆さんにメッセージをいただきたいと思います。
 
濱田:神戸に来たばかりの私が、神戸市民の方へのメッセージなんてとてもおこがましいです。
 
牟田:神戸市としても、若い人たちにもっとサイエンスに興味を持ってもらおうと、小中学生向けの医療産業都市見学会を開催しているのですが、そういう子どもたちや若い世代に向けたメッセージを、ぜひお願いいたします。
 
濱田:そうですね。科学者って、本当に恵まれていて楽しい職業だと思います。僕は、好きなことを研究しているという意識がありますから、自分の好きなことと仕事が一緒になって区別がない状況なんです。それだけにやはり、常に努力はしておかないといけないと思います。僕には、座右の銘というほどのものはないのですが、僕の研究室を出られた人たちには、いつもメールのやりとりなどで最後書いていることがあります。「焦らず弛まずやってください」ということです。それをいつも書くようにしています。
 
牟田:いつも上手くいくわけではないという研究の性質から、そういうことを書かれるのですか。
 
濱田:そうですね。先ほどお話ししたように、研究は上手くいかないことがほとんどですから、上手くいってもいかなくても、それでも弛まずに継続しなくてはいけないということもあります。一方で、目先の成果ばかりを考えていると、結構つまらない研究をやり始めます。だからやはり、最初に「自分は何が知りたいのか?」という設定が大変重要で、そこの設定が揺らいでしまったらもう駄目ですよね。
その設定がしっかりしていると、つまらない質問や疑問を追い始めても引き返すことができるので、最初の設定はあまり短期的に考えず、焦らずしっかり考えてほしいですね。しかし、初めて研究室を持った研究者などは、どうしても早く成果を出さないといけないと焦ってしまうんです。そうすると、だいたいは良い方向には行かずに、つまらない方向に行ってしまう。
 
牟田:すぐに結果が出るような?
 
濱田:そうですね。
 
牟田:では、寄り道をしたとしても、目標を決めて少しずつでも近づいていかなくてはいけない?
 
濱田:目標は変わっても構わないんです。ただやはり、自分で大事だ!重要だ!と思うことをしっかり考えて、それをゴールに設定しておくことが重要かと思います。

濱田先生インタビューの様子 
牟田:先生は、左右非対称性の研究は偶然とおっしゃいましたが、発生の仕組みについては知りたい!というのが最初の設定にあったのでしょうか。
 
濱田:僕は偉そうなこと言っていますが、本当に偶然なんです。研究のほとんどは思いどおりには行かないので、実はこんなことを知りたい!と思ってやっていても、出てきたことは全然関係ないことで、これが次の大きな命題になることはしょっちゅうあります。そのときに、それが重要だ!と思うかどうかがやはり大事ですね。気付けなかったらそれでおしまいです。
やはり、見る目を磨いておく必要があるかと思います。色んな経験とか、自分の感性を磨いて、ちゃんとそういうことに気付ける目を養っておくことが重要ですね。
 
牟田:アンテナが伸びていないといけないのですね。
 
濱田:そうそう、アンテナを出しておかないといけないですね。アンテナが出ていなかったらチャンスも目の前を通り過ぎてしまいます。
 
牟田:いろいろお話をうかがえて嬉しかったです。本当にありがとうございました。

最後に

扉を開いたままのセンター長室の写真 [理化学研究所提供]インタビューを終え、センター長室から退出するとき扉を閉めようとした私たちに、濱田先生から言葉をかけられました。「開けておいてくださいね」
 
[写真:理化学研究所提供]