平成11年度 神戸医療産業集積形成調査(要旨)について

最終更新日
2009年3月25日

1.米国の医療産業クラスター調査

(1)調査対象クラスター

I−90コリドー地帯(マサチューセッツ州)、リサーチトライアングル(ノースカロライナ州)、バイオテックベイ(カリフォルニア州)、メディカルアレイ(ミネソタ州)、ボルチモア−ワシントンコリドー地帯(メリーランド州)など、計10クラスター

(2)調査の観点

1 中核施設の役割(何がコアとなって企業を引きつけたのか。)
2 州政府の役割(主な政府のインセンティブの内容)
3 企業集積への成功要因
4 空港の役割、企業活動と空港のリンケージ

(3)代表的なクラスター事例

1 I−90コリダー(マサチューセッツ州)

2 リサーチトライアングル(ノースカロライナ州)

3 メディカルアレイ(ミネソタ州)

(4)共通の成功要因

1 大学・病院、研究機関、産業界、自治体、金融機関・ベンチャーキャピタル等、地域の関係者すべての協力体制の構築
2 地元の医療施設・研究施設の育成、積極的なマーケティング活動
3 研究活動や輸送、通信ニーズに的確に対応する高品質なインフラ整備

2.企業調査

(1)対象企業の選定

日本市場への参入や拡大の可能性がある企業として医療関連企業 100社を抽出し、それぞれの1 売上高、2 過去3年間の成長率(売上伸び率)、3 日本市場、東アジア市場での展開、4 事業分野と神戸の中核施設との関連性、5 日本市場に対する戦略の5つの項目に基づいて評価し、次の23社をヒアリング対象企業として選定した。

(23社の本社所在別:米国企業:19社、欧州企業:4社)

(2)業界カテゴリー別の神戸進出のヒアリングに対する反応

1 製薬

欧米の大手製薬業界では、新薬の研究開発費が年々膨大になっている状況に対応するため、大規模な合併・業務提携が相次いでいるが、その際、施設の統廃合が実施される例が多いため、現時点では新たな日本での事業展開は難しい。

2 医療機器

日本市場での業務拡張に関心の高い企業が多く、立地選定に当たって特に空港との近接性を評価ポイントとしている点からも、誘致候補のカテゴリーとして適当である。ただし、技術開発や製品流通ルートの確保の面で日本側パートナーとの提携を求めるケースが多い。

3 バイオテクノロジー

設立後間もない小規模な企業が多く、日本では未だ事業展開を行っていないケースが多い。しかしバイオ技術の急速な進化発展を背景に、日本での研究開発にも高い関心を示す傾向があり、今後5年間、遅くとも10年以内には日本での業務の拡張又は新規事業をスタートさせる可能性は高い。また、付加価値の高い製品を扱うため、日本進出のコストの高さを比較的カバーしやすい。当面の投資促進対象として、最も適当なカテゴリーである。

4 介護福祉機器

日本の高齢者人口の大きさから日本に関心をもっているが、日本での事業コストを吸収できるだけの製品付加価値を得られないケースが多い。従って、国外で生産し、国内代理店と提携して日本の販売ルートに乗せており、代理店との関係上、日本への直接投資を控える傾向がある。なお、ロボット技術を活用した介護福祉機器の分野では、日本メーカーが持つ最先端のロボット技術に着目し、日本マーケットに高い関心を示している大学研究所がある。

(3)ヒアリング調査結果

神戸への進出可能性に関するベクテル社の判断結果は次のとおりである。

(4)個別企業の感触(比較的、多かった意見)

1 自社の研究開発等をオペレートできる専門的人材の確保
2 日本側パートナーとの連携(技術開発、販売)
3 低廉なオフィススペースの確保
4 ベンチャーキャピタルなど様々な資金調達手段の利用可能性

3.神戸医療産業都市構想のための戦略

(1)大学コンソーシアムの提案

神戸医療産業都市構想を支えるためには、関西圏の大学・産業界・行政が相互に連携し、補完することが不可欠である。このため、地域の研究資源や教育資源の組織化を新たに進め、神戸医療産業クラスターとも呼べるテクノロジーパーク(ポートアイランド第2期を想定)の開発を支援することが有効である。コンソーシアムの主要テーマは、人材、研究、情報共有の3つである。

(活動例)

1 人材コーディネーターを設置し、参加大学が実施しているカリキュラムを基に共同コースプログラムを開発し、教職員の兼務(臨時教授など)体制のもとで学生、企業技術者を対象とした研修を実施する。
2 リサーチコーディネーターを設置し、企業・大学との共同研究を実施する。参加大学又はテクノロジーパーク内に商品化事務局を設置し、特許の取得支援やその販売による収益分配を行う。
3 情報コーディネーターを設置し、共同利用が可能なデータベースを開発し、インターネットで利用できるようにする。

(2)テクノロジーパークでのビジネス支援の提案

1 ワンストップサービスの拡充
2 新たな投資インセンティブの付与
3 マーケティング戦略 インターネット・ホームページ、医療関連専門誌への掲載、米国の成功パークとの姉妹パーク提携、国際会議への出席など

(3)医療産業と神戸空港の連携に対する評価・提案

1 米国クラスター事例からみても、医療産業集積において空港の果たす役割は極めて大きい。具体的には研究者等の移動や患者の搬送、医療機器や医薬品の輸送はもとより、細胞サンプルやバイオ関連製品など限られた時間内で迅速な輸送を求められるケースが多い。このような輸送ニーズに的確に対応するためにも空港は不可欠な交通インフラであり、今後、海・空・陸が一体となった総合物流拠点に発展することが期待される。
2 テクノロジーパークでの産業活動を支えるような空港運営が確保されるよう、関係者との調整を行う必要がある。
3 国際ビジネスジェットや国際チャーター便の受け入れが可能な条件整備として、通関、出入国管理、検疫の各施設(CIQ)の設置について政府に働きかけることが望ましい。また、FBO(ビジネスジェット支援サービス企業)の進出が望まれる。

4.経済効果の試算

米国クラスター事例をベースに、テクノロジーパークにおける進出企業数や雇用者数を想定し、産業連関分析の考え方によって経済効果を推計した。

(1)雇用者数の推計

1 進出企業数の推計(中核施設の整備が完了する年度の翌年度(2002年度)を 1年目、パークの完成を20年目と設定)

(単位:社)
  1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
進出企業数 5 30 65 90 115

2 業種毎に、1社当たりの平均雇用者数を想定

(単位:人)
(例) 1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
バイオテクノロジー 10 50 100 100 100
医療機器 25 135 225 300 450

3 テクノロジーパーク内の直接雇用者数の推計(中核施設は含まず)

(単位:人)
  1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
直接雇用者数 95 1,195 3,757 7,765 12,669

4 雇用効果乗数の設定 米国クラスター分析で使用されている乗数を適用

5 総雇用者数を推計

(単位:人)
  1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
総雇用者数 174 2,148 6,738 13,895 22,649

(2)生産誘発額の推計

1 進出企業数の推計(中核施設の整備が完了する年度の翌年度(2002年度)を1年目、パークの完成を20年目と設定) 1 雇用者所得の推計

1)職種別の平均給与・構成比・・平均給与は日本国内ベースで、構成比は米国クラスター事例ベースで推計
エンジニア30%、管理職15%、熟練技術者25%、ヘルスケア5%、製造労働者10%、医者5%、看護スタッフ10%

2)直接雇用者数に上記比率を乗じて各職種別人数を算出し、各人数に各平均給与を乗じて雇用者所得を推計する。

(単位:百万円)
  1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
総雇用者所得 912 11,472 36,067 74,544 121,622

2 直接生産誘発額の推計

生産誘発額のうち、雇用者所得の割合を40%とみなす。従って、生産誘発額=総雇用者所得×2.5となる。

(単位:百万円)
  1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
直接生産誘発額 2,280 28,680 90,168 186,360 304,056

3 生産効果乗数の設定・・米国クラスター分析で使用されている乗数を適用
研究開発1.9、医薬品1.4、医療機器1.5、ヘルスケア関連1.8、倉庫・運輸1.6

4 総生産誘発額の推計(直接生産誘発額×生産効果乗数

(単位:百万円)
  1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
総生産誘発額 4,104 50,381 159,389 326,130 531,701

(3)市内経済効果

上記の総雇用者数及び総生産誘発額から、それぞれ市内在住率(80%)、市内自給率(50〜75%)を用いて市内経済効果を予測した。

(単位:人、百万円)
  1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
市内雇用者数 139 1,718 5,391 11,116 18,119
市内生産誘発額 2,525 31,528 99,323 204,443 332,737

(4)税収効果

上記の総雇用者数及び総生産誘発額から、それぞれ市内在住率(80%)、市内自給率(50〜75%)を用いて市内経済効果を予測した。

(単位:百万円)
  1年目 5年目 10年目 15年目 20年目
国税収入 315 3,969 12,481 25,795 42,084
県税収入 103 1,286 4,046 8,362 13,642
市税収入 179 1,946 6,379 12,554 19,944
税収合計 597 7,201 22,906 46,711 75,670

 

(対象税目)
国税: 所得税、法人税
県税: 県民税(個人、法人)、事業税
市税: 市民税(個人、法人)、固定資産税・都市計画税、事業所税

(5)建設期間中の経済効果

1 進出企業数をベースに、テクノロジーパークで発生する建設需要を算定する。延床面積1,241,130平方メートル建設総投資額2,297億円

2 上記建設需要に産業連関表を適用して経済効果を算定する。

(単位:人、百万円)
  合計 直接効果 間接効果
雇用者数 15,114 6,719 8,395
生産誘発額 331,574 229,700 101,874