神戸市-KOBE-


 

臨時会見 2017年(平成29年)11月26日

最終更新日
2017年11月30日

発表項目

神戸アイセンターの開設
(31分43秒)

質疑

発表項目

神戸アイセンターの開設

司会:
 お待たせいたしました。定刻になりましたので、神戸アイセンター開設に関する記者会見を始めさせていただきます。
 まず初めに、会見出席の皆様をご紹介させていただきます。
 皆様から向かって左手より、理化学研究所多細胞システム形成研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクト、プロジェクトリーダーで、公益社団法人NEXT VISION理事の高橋政代先生でございます。
 そして、向かって右手より、神戸市立医療センター中央市民病院眼科部長で、神戸市立神戸アイセンター病院院長就任予定の栗本康夫先生でございます。
 真ん中、最後でございますが、久元喜造神戸市長です。
 それでは、久元市長、神戸アイセンターに対する期待について、ご挨拶のほうをよろしくお願いいたします。



久元市長:
 神戸アイセンター開設の記者会見を開催させていただきましたところ、ご参加いただきましてありがとうございました。座って説明させていただきます。
 今日は、12月1日に開設となりました神戸アイセンターにつきまして、栗本康夫先生、高橋政代先生と一緒に会見をさせていただきます。
 まず、私のほうからは、神戸アイセンターのコンセプト、神戸医療産業都市における位置づけにつきましてご説明申し上げます。



 このたび開設をいたします神戸アイセンターは、眼科領域におきまして、基礎研究、臨床研究、治験を含めた治療、細胞培養、ロービジョンケアまで、一気通貫に対応する、国内で初めての施設ということになります。
 詳細はこの後、両先生より説明がございますが、研究に関しましては、高橋政代先生を中心とする理化学研究所の網膜再生医療研究開発プロジェクトチームが世界最先端の基礎研究を展開されます。



 治療に関しましては、神戸市民病院機構のアイセンター病院として、眼科領域における標準医療を確実かつ高水準で行うとともに、再生医療分野を中心とする新しい治療を世界に先駆けて提供する最先端の高度医療を行います。
 細胞培養では、先端医療振興財団が、再生医療の実用化に不可欠な細胞培養技術の開発、確立を行います。
 さらに、ロービジョンケアでは、公益社団法人NEXT VISIONが、治療を受けておられる方々や、目が見えにくい方々を対象に、リハビリや日常生活訓練をはじめ、さまざまな情報提供を行い、社会復帰に向けたサポートを行います。



 これらの研究、治療、細胞培養、ロービジョンケアという4つの分野が緊密に連携することによりまして、iPS細胞を活用した網膜治療をはじめとする再生医療の迅速な実用化、市民に対する高度医療の提供、視覚障害者の生活の質の向上に向けた取り組みが行われると考えております。



 神戸医療産業都市の強みは、充実した研究開発基盤と、優秀な人材の集積を生かした基礎研究から臨床応用への橋渡し研究機能であります。神戸アイセンターは、この神戸医療産業都市の強みを生かし、世界最先端の基礎研究を、神戸医療産業都市の医療機関で臨床応用につなげるという、構想当初から目指していた形を実現する施設となります。



 神戸アイセンターを拠点に、iPS細胞を用いた再生医療など、最先端の医療が安全かつ迅速に確立され、日本、そして世界中の患者さんのもとに、いち早く届けられることを期待しております。
 今後とも、神戸医療産業都市は、世界に誇るクラスターとして、ますます成長できますように努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 ありがとうございました。



司会:
 続きまして、栗本康夫先生より、神戸アイセンターの目指すものについて説明をお願いいたします。



栗本先生:
 ただいまご紹介いただきました、神戸アイセンター病院の院長に就任を予定している栗本と申します。本日は、記者会見にたくさんの皆様がお集まりいただきましてありがとうございます。
 それでは、私のほうから、主にアイセンター病院についてですが、どのようなものであるかということを簡単に説明させていただきます。



 先ほど、式典で久元市長より話がありましたが、神戸医療産業都市というのは、阪神淡路大震災、ちょうどそのころに、私、こちらに着任しておりましたが、復興事業として開始されたものです。今ごらんのように、たくさんの施設が集積して、大変活況を呈していますが、そこに、神戸アイセンターが12月1日にオープンいたします。



 施設の概要は、地上7階、敷地面積2,000平米、建築面積1,500平米、延べ面積8,500平米、病床30床で、病院、事務、研究所ということでありまして、場所は中央市民病院と、理化学研究所、それから、先端医療センターに、ちょうど囲まれた、非常に連携のしやすい場所であります。医療センターのポートライナーから行きますと、駅から2階デッキと直結ということで、患者さんにとっても非常にアクセスのしやすい場所ということになっています。



 アイセンター構想というのは、そもそも、国家戦略特区プロジェクトですね。先ほどの式典でも話があったので、若干重複になりますが、iPS細胞を活用した世界初の臨床研究で網膜治療をはじめとする再生医療の迅速な実用化などを図るために、基礎研究から臨床応用および治療やリハビリ、生活復帰支援まで、トータルで対応することを目的として構想されました。
 ちょうどこの構想が、私どもがiPS細胞の臨床研究を準備しているときとかぶりまして、1例目の成功、手術の成功を受けてでもないのでしょうが、タイミング的には、ちょうどその月の終わりに国家戦略特区に認定されたというふうになっています。



 そのコンセプトですが、基礎研究、臨床応用から治療、ロービジョンケア、生活支援までをトータルで対応する目のワンストップセンターということで、iPS細胞等を活用した再生医療の迅速な実用化を図るということ。それと、それだけではございませんで、標準治療を確実かつ高水準で行って、眼科領域の再生医療分野を中心に、新しい治療を世界に先駆けて神戸医療圏の患者さんが享受できるような医療を行うということですね。
 それから、そういった研究だけではなくて、視覚障害者の方の社会復帰への支援もできるような、つまり研究から臨床、社会復帰まで、目の問題について、全て対応できるワンストップセンターとしての役割を担うということです。



 ところで、日本の医療システムになれている方は、何で目だけ、アイセンターなのというふうに思われる方もいるかもしれませんが、世界を見てみますと、マサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタルという非常に有名な、大きな病院があるんですが、その近くに、ボストンのマサチューセッツ、アイ・アンド・イアという目と耳鼻科だけで十数階建てのものすごく大きなビルがあります。私は最初、ボストンで留学をしたので、ここを見たときに非常にびっくりした覚えがあるんですが、実は、アメリカはこれが普通です。
 ミシガン大学はアイセンターですね。それから、ジョンズ・ホプキンズ、ボルチモアのアイセンター。アメリカにもたくさんありますが、ロンドンでは、ムーアフィールド・アイ・ホスピタルというのがあります。
 このロンドンのものを取り入れて、シンガポールでも随分前にシンガポール・ナショナル・アイセンター(SNEC)というのがありますし、中国でも、3つのビルが全部アイセンターということで、聞くところでは、ここの中国のアイセンターは、眼科医だけで1,000人ぐらいいるということです。



 そういうアジアのアイセンターも、ものすごいたくさんの人数とシステムで臨床研究とかをすごい勢いでやっておられるわけですね。ですから、日本だけが今までのようにやっていると、どんどんアジアに置いていかれるというふうな状況になりつつあります。
 ですから、「何でアイセンター?」というのは、巨大なアイセンターというのが世界標準であるということで、世界のまねをしなくてもいいというご意見もあるかと思いますが、その辺は、世界的にはこういう状況にあるということはご理解いただきたいと思います。



 アイセンターの構成ですが、CPC、細胞培養施設、‐理研は全てが移ってくるわけではなくて、そのヘッドクオーターが移ってきて、一緒に臨床研究をするような民間ラボも入れる‐それから、2階のデッキのところがロービジョンケアを行う、NEXT VISIONの場所という構成になっています。
 その機能といたしましては、先ほどからお話がありますが、基礎研究、臨床応用から治療までして、さらに、治療にもかかわらず視覚障害が残ってしまう患者さん、残念ながら決して少なくございませんので、ロービジョンケアからリハビリ、社会復帰までを支援していく。ここの、いわば上流の部分を理研が担っておりますし、治療の部分は病院で、そこから社会復帰についてはNEXT VISIONが担うというふうな役割分担を考えています。



 これを一体化するために、この3つの施設で統一性のあるロゴをつくって、色だけちょっと変えて、理研の網膜再生医療研究開発プロジェクト、病院、それからNEXT VISIONと、こういうふうなロゴで、一体感をロゴでも象徴的にあらわしているというふうにいたしました。



 あとは主に病院の話をしますが、この病院は、地方独立行政法人神戸市民病院機構ですね。中央市民病院、西市民病院、西神戸医療センターと3つの病院を持っていますが、そこの第4番目の病院として設立されることになります。



 病院の目的、コンセプトは、これは先ほどと重複しますけど、アイセンター全体のコンセプトを病院の側から書くとこうなるということですね。理研に限定しなくてももちろんいいんですが、理研と緊密に協力して、橋渡し研究を行うとともに、一般治療も行う。NEXT VISION、ロービジョンの公益財団法人と協力して、社会復帰を支援していく。もちろん、先ほど、神戸市医師会の会長さんも言われていましたが、市民に優しい、市民に開かれた、市民だけではなくて、神戸医療圏の全ての患者さんに開かれた病院を目指すということが基本計画書でうたわれました。



 病院の役割は、中央市民病院の眼科と先端医療センターの眼科というのが、これまで人は同じなんですけど、別々にやっていて、患者さんは、場合によっては移動しないといけないという不合理なことがありましたので、ここを集約して、機能を拡充するということですね。臨床開発も行うと同時に、神戸市域における標準治療から高度眼科医療までを行う地域の中核病院を目指すということです。



 治療範囲は、一般的な眼科一般診療に加えて、たくさんの専門外来、これは、中央市民病院がたくさんの専門外来を置いているんですが、それをさらに発展させます。それから、治療開発、あるいは診断法の開発などを行う先進医療。それから、眼科フィジシャン・サイエンティストですね。この眼科フィジシャン・サイエンティスト(臨床医の目を持つ研究者)というのは、日本の臨床研究、理学研究をすごく支えていたんですが、これが今、急速に減っているということがありますので、ここでそのフィジシャン・サイエンティストを養成して、国内外の眼科先進医療に携わる医師教育もしていきたいということであります。



 職員数はシンガポールでは200人、中国では1,000人のアイセンターに比べると非常に小さいものですけれども、数は少なくても、中国のアイセンターに行った私の元部下が、向こうは、トヨタ、日産の大工場のようであると。こっちは、日本の臨床研究はバックヤードビルダーみたいだと言っているんですけど、バックヤードビルダーでもフェラーリのような非常にいい研究をしていきたいなと考えています。



 基本理念ですが、神戸市立神戸アイセンター病院は、市民の、そして当科を受診する全ての患者さんの目の健康を守るため、眼科中核病院として、標準治療から高度先進医療までを提供するとともに、眼に関するワンストップセンターの核として、患者さんの思いをつなげる役割を果たします。



 基本方針は7つ。「つなげる」という言葉をキーワードにしました。安全で質の高い医療を提供し、失明の防止につなげると。これは標準医療機関としての役割を方針としてうたっています。さらに、世界最先端の高度医療を、標準医療の延長線上でいろいろな既にある高度医療を取り入れていくということです。
 そして、既にある高度医療じゃなくて、今この世の中にない医療の開発を通じることで、医学研究、それから生活の支援にまでつなげていくということですね。
 また、地域の医療機関として、患者さんに優しい医療機関ということです。
 ある意味、こういう公的病院の標準医療というのは、医療の中の一番しんどい部分になっているところがあります。看護師さんの離職率が高いとか、いろんな問題があります。ここで働く全ての職員が、やりがいがあって、ここでずっと働き続けたいというところを目指すということですね。
 さらに、昨今、公的病院でも経営がだめになると非常に大変ですから、ここのところも見ていって、すごく漠然と書いていますが、神戸市の医療産業都市、あるいは、日本の眼科医療の未来につなぐような仕事をしていきたいということですね。



 こういうふうに非常に漠然としたことをうたっていますが、これをもう少し具体的に、使命という形で落とし込みますと、5つの使命があると考えています。
 重複しますが、まずは地域の眼科施設と連携して、質の高い標準医療をきっちりと堅実に提供していくこと。それについては、例えば、非常勤医師をたくさん確保して、これは働き手として確保しているのではなくて、眼という臓器は小さい臓器ですけど、非常に専門性も奥も深くて、全ての専門性を10人ぐらいで賄うというのはちょっと無理なんですね。ここは、日本の各分野のトップの人たちをお招きして、非常勤医師とする。



 それから、受付時間は少し長くしたり、救急医療は当直医と宅直医、2人を365日、24時間配置してしっかりやっていきますし、手術は手術室が増えますので、キャパシティーは増えると。病床も従来よりも増えますので、お断りするようなことはもうなくなるだろうと思います。



 その延長線上で、高度医療を取り入れて、地域に還元すること。これは時間の関係でちょっと割愛させていただきますが、それから、治療開発ですね。治療開発について、例えば、どんなことをやるのかということですけれども、今予定されている新しい治療は、自家のiPS細胞からの色素上皮移植、それから、HLA(ヒト白血球抗原)を適合した他家のiPSの色素上皮移植、それから、次世代OCT(光干渉断層画像診断法)の臨床機器開発、人工知能を用いた網膜画像診断。それから、これはちょっと守秘義務があるので、A、Bと言っていますが、今、治療法のない網膜色素変性に対する新しい遺伝子治療の2つ。それからさらに、色素上皮の次が、iPS細胞やES細胞の移植、それから色素上皮と視細胞の複合シートの移植など、随分といっぱい挙げて、大風呂敷を広げているように思われるかもしれませんが、自家移植については、もう既に中央市民で治療しまして、発表もしています。今日いらっしゃる記者の皆さんも聞かれているかもしれませんし、臨床のトップジャーナルである「ニューイングランド・ジャーナル」にも既に報告いたしています。他家については、先日記者会見いたしましたように、既に着手しております。これについては、1年後に詳細をご発表できると思います。
 ということで、下の2つは今度学会に出す準備をしているところですが、もう既にここまでは実施ないし着手しているということで、ここから先も、単なる大風呂敷ではなくて、しっかりやっていけるものと考えています。



 それから、人材の育成ですね。実績だけ申し上げておきますと、中央市民病院の時代から、今、日本の眼科の主任教授9人を輩出しておりますし、京大の教授も2人連続輩出しているということで、既に人材の育成にも実績があるわけですが、それをさらに、臨床研究をしっかり進めていくことで、引き続き強化していきたいということです。



 簡単にまとめますと、質の高い標準医療を堅実に行って、神戸医療圏の中核病院としての責務を果たして、その延長線上で高度先進医療も積極的に行っていきます。
 それから、こうした基礎の上に、iPS細胞をはじめとする新しい治療や診断法の開発を行う。これだけで忙しいのに、標準医療もするなんて大変じゃないかというふうな声をいただくんですけども、iPS細胞治療であれ、何であれ、やっぱり患者さんにとっては治療ですから、そこはやっぱり、標準治療がしっかりできるような基礎は必要なんですね。新しい建物だけつくって、医者を何人か放り込んだらできるというものではなくて、しっかりとした臨床研究を行うためには、眼科の看護に特化した看護師のチームであるとか、いろいろなチームが必要です。そういうものがあった上で、初めてしっかりとした臨床研究が行えると考えています。
 それから、視覚障害者の社会復帰を、病院の立場から支援していくということでございます。
 簡単でございますが、ご紹介させていただきました。



司会:
 続きまして、高橋政代先生より、研究とロービジョンケアにつきましてご説明をお願いいたします。



高橋先生:
 本日はほんとうにたくさんお集まりいただきましてありがとうございます。
 今お聞きいただきましたように、アイセンターは、やはり病院が中心です。しっかりした医療ができているというところに、我々の研究と福祉、ロービジョンケアというものをつけることによって価値を生み出したいと思っています。



 まず、研究のほうですけれども、再生医療の研究は、いろいろ報道もしてくださいました。どんどんステップアップしてきています。まず、自家移植をやりました。そして、他家移植。今5例目まで、計画どおりに手術が終わったというところです。
 ここは安全性を見るという臨床研究でしたけれども、今後他施設でいよいよ、どういう患者さんに治療すれば効果が出るのかとか、そういうことを見ていく臨床研究が始まると思います。
 そしてまた、視細胞の移植、これは網膜色素上皮と違って、神経ですので、非常に難しいところがありますが、私にとっても夢の視細胞移植ですね。これも計画をどんどん進めているところです。



 もう1つは、いろいろ臨床をやっていますと、再生医療という新しい治療ですので、医療の開発の仕組みづくりも今までとは違うルールが必要です。そういうことを、国、厚労省、あるいは規制当局と一緒につくっていけるという、これも非常にうれしいことであります。
 こういう仕組みをつくるためにも、アイセンターという再生医療にとって、そういう特別な治療もできる、一般診療がしっかりしていて、その上に、臨床研究ができる病院というのが非常にありがたいわけです。



 日本の場合、非常に複雑な治療開発になっておりますが、臨床に持っていくために、2つの道筋がある。臨床研究と治験があるというのが、世界の中でも非常に恵まれております。我々が世界で初めてできたというのも、この臨床研究という仕組みがあったからです。
 もちろん、治験を通って、保険収載というのが治療開発の王道ではありますが、こういうふうに新しく、そしてどんどん進歩していく治療に関しましては、臨床研究で先進医療、そして治験、あるいは、場合によったら自由診療という、いろんな選択肢があるということが非常に適しております。



 また、臨床研究をやったからこそわかる、リバース・トランスレーショナル・リサーチという概念が出てきておりまして、臨床研究のほうからもう一度基礎研究に課題が送られてくる。そして、基礎研究でまた解決して臨床に戻すという循環ですね。これが非常に重要になりますので、アイセンターで臨床と研究が身近に、同じところで行われている。これは非常に有利なことであると思っております。



 また、国の規制も再生医療学会と歩調を合わせていただいておりまして、薬事承認、薬機法という新しい法律ができまして、期間が短くなったということが注目されるんですが、私自身は、この新しい法律によって、医療者、医療現場の医者がこの治療開発にかかわるところですね。これが今まで、従来の仕組みですと、企業がずっと10年以上かけて開発してきたものを、最後に医者が使うというようなことで、少しフラストレーションもあったわけですが、新しい法律になりますと、臨床研究を医療者がデザインして、それを企業とともにやる。そして、素早く、条件つき承認を得て、その後の市販後調査にも学会がかかわるという仕組みがつくられておりますので、非常に医療の現場に寄り添った開発ですから、よりよい治療ができるという仕組みができていくのかなというふうに思っております。ここでもアイセンターの仕組みというのは、非常に有利になってくると思います。



 これも、最近よく言うことですが、こういう治療をつくりたいという将来からさかのぼってずっと考えてきましたので、いろんなルールが突然できたり、そういうところを回避して、到達することができました。
 アイセンターはいろんな道筋をつくるということなんですね。患者さんの生活をよりよくするという課題に、さまざまなソリューションを与えるという施設になると思います。これを、点字図書館の館長の後藤さんが「行き当たりばっちり」という名前をつくっていただきまして、これが結構受けたりもするんですけども、「行き当たりばっちり」。計画がないように見えるけれども、最終的にはばっちりのところに着地するというのを目指しております。



 先ほどの再生医療の進歩と同じように、社会はものすごく今、変革のときでありまして、第4次産業革命が起こっております。今まで蒸気、電気、ロボットと来ましたけれども、AI(人工知能)が入って、社会がほんとうに変わる。尊敬する富山さんが「モノからコトへの時代である」と言われておりまして、これは医療でも全くそうだと思います。再生医療も細胞を売るだけではなくて、医療として完成させる必要がある。そのためには病院が必要になってきます。



 AIが医療に入ってきておりますのはもう明らかで、グーグルは、先ほど紹介にありましたムーアフィールドというロンドンの大きな眼科のセンターと提携しておりまして、眼科領域に入ってきています。我々もそういう検査法の開発は、AIを使ったものをしておりますが、今、もう人工知能は診断率が非常に高まっているということであります。
 こういう時代には、医者はだんだん、診断とか、あるいは治療までも、AIやロボットがするようになってくる時代。医療はどうなるかというと、どんどん病院から外に出ていく。そしてまた、医者は何をすべきかというと、全人的に人間が問われると。人間性が問われる。全人的な医療をしなければならない。逆に言いますと、全人的医療がついにできる。今は、忙し過ぎて病気しか見られない、目しか見られないというところが、全人的な医療ができる時代になっていくのではないかと思っています。そのためにつくったのがアイセンターです。



 視覚障害というのが、日本ではほんとうに認知度が低く、アイセンターが海外に比べて全然ないということからも、国として、視覚障害、感覚器にあまりに手薄いということがわかると思います。視覚障害といいますと、失明して白い杖をついておられる方のイメージだと思うんですが、そのイメージというのが非常に邪魔をしているということにだんだん気づいてまいりました。



 再生医療の効果も当初はもとどおりというわけにはいきませんので、ロービジョンケアとかリハビリとセットになります。今でも患者さんに、治療がもう及ばない方には、ロービジョンケアをお勧めするんです。けれども、なかなか行ってくださらない。なぜかとずっと考えていてわかったのは、失明という向こうの世界に行きたくない。福祉に行きたくない。私はこちらの世界にとどまるんだという抵抗感があると思います。
 それはおかしなことでありまして、視覚障害というのは、ここからが障害というのはなくて、実はすごくグラデーションなんですね。近視と老眼の方というのは、眼鏡を取れば、もう視覚障害と一緒です。そういうふうに、実は身近なんですが、全然そこら辺の方が世に見えていないために、病院に通っておられる方がすごい恐怖をもち、視覚障害になる、(視覚障害に)陥る恐怖と戦っているというところがあります。これを解消するためにも、アイセンターが役に立つのではないかと思っています。



 これは、バイエルがされた調査でありまして、ウエブに載っておりますのでお借りしましたが、20代から40代の方に親の体でどこが心配ですかと聞くと、脳の病気、がん、循環器と出てくるんですが、ご自身はどこが心配ですかと、50代から70代の方に聞いたところ、目の病気が圧倒的に多いんですね。ですから、高齢の方が、いかに目を心配しておられるか。実際、目というのは、人間が情報を得る80%の窓口ですので、それがなくなってしまうということは、社会から隔絶されるわけですね。
 最近は、「DALYs」という概念がありまして、今までは若くして命をなくすということが社会損失と考えられてきました。しかし、これだけ長寿になった場合、90歳の方を100歳まで生かす、その命の延長よりも、おそらく20年間ちゃんと見ているということのほうが価値が高くなっている時代です。それにもかかわらず、日本では、アイセンターが今まで全然なかったということであります。



 実際、生きている方の中で、社会損失を計算しますと、精神・神経疾患が一番、これは断トツに多いですけれども、その次は感覚器疾患が社会損失であります。ですので、ここにフォーカスして、治療ももちろんですが、治療しなくても、まだまだ福祉から、支えられる側から支える側になれる方がいっぱいいらっしゃるのを外来で知っております。ですので、そういう方を社会に復帰させるというのをやりたいと思っております。
 研究からリハビリまでの3つの部門プラス、もう1つ、ソーシャルベンチャーというのをつくっております。これはやはり、いろんなルールでやりにくいことがあります場合は、株式会社も使って、企業とも非常に連携していくセンターになりますが、2階の入り口のところのフロアに配置して、ここでいろんなことをやります。



 どういうことをやるか。この記者会見では項目だけ並べさせていただきます。デジタルロービジョンケア、遠隔ロービジョン相談、サンキューカード、OTON GLASS NINNIN、暗視野眼鏡、多分、あんまり何のことかわからないと思いますが、シンポジウムで説明させていただきます。遠隔映像翻訳サービス、錯視の世界展、NO LOOK TOUR、相談コーナー、ミニセミナー、指圧の楽譜、ドライビングシミュレーター、自動運転。このように、医療だけではなくて、社会のシステムまで切り込んで広げていきたい。そういうソリューションを幾つも用意するセンターとしてアイセンターをつくっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。

質疑応答

神戸アイセンターの開設(テキスト版)

記者:
 本日は神戸アイセンター、おめでとうございます。私も何度かいろいろお話を聞いていまして、ちょっと高橋先生に質問という形にはなるんですけども、私、実際に視覚障害の当事者で、目が悪くなってここに来ているんですけども、やはり病院に行って、目が悪いということで申告されて、なかなか復帰できないというのが現状です。今回、神戸アイセンターで診察して、すぐ2階のフロアに行ってということなんですけども、実際に、私が思っているのは、特に日本中から目がよくなるんだということでここに来て、実際に手術を受けたけども、若干よくなったというか、変な話、全く光がないところに光が見えたという形で、以前から高橋先生から聞いているんですけども、その中で、やっぱり見えへんねんやというか、そういうところで、どういったメンタルケアをしていくところにポイントを置かれているのかなというのを質問させていただけたらなと思っております。



高橋先生:
 ありがとうございます。メンタルケアというのが、我々、NEXT VISIONで最も大事にしようと思っているところです。といいますのは、視覚障害というのは、最近はいろんなデバイスもありまして、わりと気持ちの問題で生活が全然変わってきます。もうだめだと思ってしまうと、引きこもっておられる方もいっぱいいらっしゃいますが、逆に、見えなくても世界中を飛び回っている方もいっぱいいらっしゃる。それはメンタルのケアでごろっと変わることを知っております。



 そして、そのためには、最もいいのは、実際に当事者の方で、そうやって元気に飛び回っておられる方、こんなにできるんだというのを見せるというのが一番いいと思っておりまして、そういう意味で、当事者の方、あるいは福祉のケア団体が神戸にいっぱい、プロの方がいらっしゃいますので、その方が2階で窓口になって、相談コーナーとかいうのをつくっていこうというふうに思っております。



記者:
 久元市長にお伺いしたいんですが、これまで市長が医療産業都市には、関連機関ですとか企業の集積が進む一方で、進出団体同士の連携ですとかシナジーが課題だというふうにおっしゃっていましたが、そういう意味で、アイセンターは病院、理研、先端医療財団、そしてNEXT VISIONの4組織が入りますけれども、医療産業都市にとってのアイセンターの位置づけを改めてお願いします。



久元市長:
 ものすごく集積が進みましたけれども、この集積のメリットを生かすためにはシナジー効果を発揮させなければいけない。まず、医療産業都市全体のシナジー効果を発揮させるという意味では、来年の4月に、まだ正式の名称は決まっておりませんが、医療産業都市全体のシナジー効果を生むような機構を、先端医療振興財団を発展的に改組する形でつくりたいと思っております。
 これは、この機構が、いわば司令塔になりまして、さまざまなコーディネート機能を行うということ。それから、ある意味で、これは1つの小さな都市のような感を呈していますから、まちづくりという意味でも、どういうふうに全体的なまちづくりを行っていけばいいのか。あるいは、実際に、さらにこの企業と理研などの連携、あるいは、病院と企業との連携ということが進んでいく、あるいは、複数の連携が進んでいくためには、どういうことが必要なのかということを考える。それから、全体としての医療産業都市を海外に向けて発信していくためのトータルな発信機能。こういうものをこの機構が担うような構想を従来から用意しておりまして、これをいよいよ設立し、スタートさせたいと思っております。



 アイセンターは、両先生からお話がありましたように、目の分野での一貫した対応が行われる全く新しい施設ですので、このアイセンターの中でのシナジー効果というものは、非常に期待できるところですし、それから、アイセンターと、当然ながら理研との連携も行われるとか、ほかの機関との連携ということが個別に進むことによって、全体的なシナジー効果を生んでいくとことにもつながっていくのではないかというふうに考えております。



記者:
 高橋先生に伺いたいんですけども、先ほど、私の夢の治療というふうに考えている視細胞の移植というお話があったんですが、これの現時点の開発状況と、実際この拠点を使って、いつごろ実施したいかという考えを伺いたいのと、あと、それとも関係するんですけど、最近の薬価とか診療報酬をめぐる議論で、自動的に高い薬の値段を一気に落とそうという議論が進んで、診療報酬全体を下げるために、薬価をとにかく下げるという方向で議論が進んでいるんですが、こういった議論は、先生方が取り組んでいらっしゃるような先端的な開発の阻害要因になるとお考えでしょうか。どうやったらこの問題が解決できるというふうに考えていらっしゃるか、もしあったら、その辺を教えてください。



高橋先生:
 ありがとうございます。視細胞の移植は、今年論文を発表しましたけど、動物でのProof of Conceptといいますけども、視細胞移植がきくだろうという結果が、データは得られているところで、今はその細胞の安全性を見て、2年後を目指して治療、臨床研究に入りたいというふうには考えております。
 そして、薬価の話ですけども、それはほんとうに問題で、ただ、やっぱり医療者が開発していることで、いろんなものが見えてきました。もっともっとコストを省けるところもあるんじゃないかと。それは、一番はルールなんですね。やはりルールが厳しくなればなるほど、開発コストが高くなる。ですから、我々、基礎研究から臨床、そして企業と一緒にやっているということで、その仕組みも変えていったり、コスト意識を持ったり、それで薬価を下げるということにもトライしようというふうに思っているわけです。



記者:
 神戸アイセンターの診療機能の部分については、診療、研究については、これまで国内にないもので、1つ、海外であるものが、これまでアイセンターとしてなかったということに加えて、福祉部門といいますか、社会復帰のことも一貫してできるということですけれども、最先端の治療の部分は、これまでも中央市民病院を中心に、理研の高橋先生も含め、進めてこられたわけです。社会復帰も含めて、一貫してできるのは国内、世界の中でも初めてではないかというお話もありましたが、改めてこれまでなかったもの、福祉機能も含めて、アイセンターが担うべきもの、どういう社会を生んでいくのか。現段階の治療でも、先ほどもありましたが、光を感じることができるようになるというところまでは来ていますけれど、治療の部分では最先端、目指すべきものはどういうもので、社会福祉の部分も含めて、どういう社会を生んでいくとういのがこのセンターの役割であるかという。大きな話になりますが、そちらのほうを、高橋さん、栗本さん、久元市長も、お三方、お話、一言いただけないかと思うんですが、よろしくお願いいたします。



栗本先生:
 社会というかなり大きなお話ですけども、病院が担うものとしては、先ほどのお話とかぶりますけども、適切な標準医療をしっかり地域の患者さんに速やかにお届けできるということは一番基礎ですね。その上で、いろいろな高度先進医療というのは、実は、公的な病院は、なかなかそういったものに手を出さないという日本の状況があって、それは患者さんの選択肢をかなり狭めているというところがありますので、そういったところもどんどん積極的に取り入れていく。
 それから、その上に来る、今ない治療開発ですね。iPS細胞を含めて、そういったものも従来ですと、一般の患者さんに行くまで大変時間がかかっていたわけですけど、先ほど高橋先生が言われたように、ルールを変えるとか、そういったようなことで、いろいろ劇的に短縮できると思うんですね。ですから、それを、当病院で真っ先に、世界に先駆けてそういう治療を多くの患者さんに届けられるという、病院の果たす役割としては、そういったことを考えています。



久元市長:
 この病院の新しさというのは、やはり標準医療と最先端の高度医療を眼科の領域の中で、1つの病院が担う。これは相互作用があるというふうに思います。やはり基礎的な地域医療、標準医療の積み重ねの中から、それだけではありませんが、全く新しい発想の高橋先生の研究、これは地域医療との積み重ねとは全く違う切り口ですけれども、両方の要素によって、高度先端医療というものが進化していく。そして、高度医療が市民にも還元される。それが、病院として新しいのではないかなというふうに思います。



 さらに、これはもう、繰り返し説明があったところですが、病院の機能を越えている部分があるわけですね。臨床研究を進めていく上でも、細胞培養というのが必要で、細胞培養につきましては、先端医療振興財団がこれまでのノウハウを活用しながら、これをしっかりと、責任を持って行う。さらには、ロービジョンケアまでつなげていく。一貫した対応が、目の領域について行われるという、これは繰り返し説明があるわけですが、これは新しい領域を開拓することになると思います。



 それから、自治体がかかわっているわけですから、病院という閉じられた世界の中でこれを終わらせるのではなくて、やはり実際に社会復帰をしていくためには、病院から出て、さまざまな取り組みが必要で、神戸の中にも、先ほど高橋先生からもお話がありましたように、福祉を担うさまざまな人材、団体があります。そういうような方々との連携の上に、メンタルな面も含めて治療を続けながら、あるいは治療を終えられた方が、できるだけ社会に復帰していくための取り組みということを、自治体も関与した形で、またさまざまな方々の参画を得て実行していく。これが新しい分野ではないかと考えています。



高橋先生:
 今までのお話のとおりなんですけども、ここから10年というのを、私は医療がものすごく変る時期だと思っております。ただ、中心となる、変わってはいけない医療というのを、アイセンター病院ではしっかりと守っていただいて、そのほかの部分で変わっていく医療をどんどん取り込んでいくというふうな位置づけを考えております。それで、社会実験のようなこともNEXT VISIONが担いますので、医療と社会の接点、あるいは福祉との接点というのをつくる。企業も入って、そういう新しい医療のあり方というのをつくっていきたい。そしてそれは、先に目でやりますけども、何かのひな形になって、全国に広がっていけばいいなと思っています。